Kindle出版の「何を書くか」問題。ITエンジニアが「選んではいけない」テーマ3選
こんにちは、Hibikiです。
本記事は、「ITエンジニア×Kindle出版の体系化」シリーズです。
その名も「Chi. (チ。)」プロジェクト。
なぜ「Chi.」なんて名前を付けているのかは、前回の記事をご覧ください。
Kindle出版をしようと決めた後、一番最初に直面する問題は
何を書くか
ではないでしょうか。
前回の記事では、「体験したこと、考えたこと、感じたこと」を書くことで、AI時代にも価値のある知を残すことが出来ると書きました。
が、それらの実践知は経験を積み重ねたエンジニアであれば山ほどあるはずです。
炎上案件に参画して、徹夜でリカバリしたこと。
より良いシステムを作るために、お客様と議論したこと。
部下との1on1で、今後のキャリアを語り合ったこと。
それらの経験を書籍という形で残すことが出来れば、価値になるでしょう。
しかし、単なる自己満足であってはいけません。
「残すべき知」は、それを「求める誰か」に届いて初めて価値を持ちます。
著者の「届けたい」という情熱と、読者の「知りたい」という需要。
この2つを満たすテーマを探し当てなくてはいけません。
前回の記事で、「ITエンジニア×Kindle出版」の体系は大きく分けて、以下の4つがあると説明しました。
1️⃣技術トレンドからテーマを決める
2️⃣テーマ内で比較検討する
3️⃣比較結果を基に深堀りする
4️⃣比較・深堀りを発信する
今回は、この体系の礎となる最初のステップ
「1️⃣技術トレンドからテーマを決める」
について掘り下げます。
しかし、なぜ「技術トレンド」なのでしょうか?
流行りのテーマに乗っかり、手っ取り早く「売れる」本を書くということなのでしょうか?
そうではありません。
技術は、市場の要求に応じて進化するものです。つまり、旬の技術とはそれだけ市場が抱える問題に応えているものと言えます。
今多くのユーザーがどういう問題を抱えているか、そこを理解せずに出版する書籍では自己満足で終わってしまいます。
私たちの持つ実践知と、市場が求める需要が、最も強く交差する一点はどこか。
それを見極めるために、まずは「選んではいけない」非効率な領域について、考えていきたいと思います。
📚️選んではいけないテーマ
まず「Chi.」プロジェクトの体系は、次の2点を前提としています。
①個人出版であること
②IT技術、ITプロジェクトに関する出版をすること
出版社から書籍を出版する際には当てはまらないことも多いと思いますので、ご了承ください。
上記の前提を基に、私が考える、私たち個人出版の著者が避けるべきテーマは以下の3つです。
1️⃣大手出版社が出しているテーマ
2️⃣競争が激しい人気のテーマ
3️⃣自身にとって完全に未知のテーマ
1つずつ説明していきます。
1️⃣大手出版社が出しているテーマ
私たち個人出版の著者は、出版業界では蟻ん子のような存在です。
蟻ん子が象に真っ向勝負しては勝てません。
たとえば、AIを背景にPythonプログラミングは需要が高いですが、Pythonの入門書はすでに複数の出版社から本が出版されています。
よほど優れた独自のPythonプログラム習得カリキュラムを持っていれば別でしょうが、通常のケースでは稀でしょう。
弱者には弱者の戦略があります。
今考えているテーマが、大手出版社のものと競合している場合は見直しが必要でしょう。
「大手出版社が本を出す前に、自分が本を出せば良いのでは?」と考えるかもしれません。
上手くいくかもしれませんが、そもそも需要がないのかもしれません。
弱者の戦略としては、大手出版社が参入し、需要があることを確認できている領域で、オリジナルのテーマを出す方が正しいでしょう。
個人のちっぽけな力で、新しい領域を開拓することには限度があります。
2️⃣競争が激しい人気のテーマ
大手出版社が参入してこない領域であっても、競争が激しいテーマは避けるべきです。
最近、私はRAGについて調べていたので、Amazonに出てくるオススメもRAG関連が多いのですが、特にDifyに関する本が多いよう感じます。
Difyは、プログラミング不要でAIアプリを開発できる、オープンソースのノーコードプラットフォームです。
ノーコードも流行っているせいかDifyは人気のようで、多数の書籍があります。
正直、表紙やタイトルを見ても違いが分からず、無意識のうちにDifyというタイトルが付いた本を避けるようになっていました。
Difyに関する本をピンポイントで探している人であれば別でしょうが、似たような本がずらっと並んでいては、読者は選択を避けるようになってしまいます。
これは「ジャムの法則」と呼ばれ、選択肢が多すぎると、人は比較に疲れて「選ばない」という決断をしてしまう心理現象です。
私たちが頑張って書いた本が、「選ばない」と決断されてしまうテーマでは、本末転倒です。
調査する段階ですでに何冊も同じテーマの本が出ていれば、避けるべきテーマと言えるでしょう。
3️⃣自身にとって完全に未知のテーマ
今は生成AIが質の良い文章を書いてくれますので、自身にとって全く未知のテーマでも本を書くことができてしまいます。
ITエンジニアであれば周知のことですが、
コードに1文字間違いがあるだけでもプログラムは動きません、
断片的に正しい内容でも、組み合わせると動かないことがあります。
個人出版とはいえ、内容には責任を持って出版すべきです。
「Chi.」プロジェクトで目指すのは、自ら「体験したこと、考えたこと、感じたこと」という実践知の共有。
未知を未知のまま出版するのではなく、そこに自分の体験・考え・感じたことを積み重ねて、自らの言葉で語る点は貫き通していきたいです。
📚️事例:いかにして「避けるべきテーマ」を回避したか
抽象的な説明ばかりでしたので、私の著書を例にどのように考え、行動し、避けるべきテーマに当てはまらないことを検証したのかを説明していきます。
私のIT技術に関する著書は2冊あります。
1冊目はこちら。
仮想環境を使ったプログラミング環境の構築と、PythonのWebフレームワークであるDjangoの基本設定を学ぶ内容です。
実は最初、この本を執筆する予定はありませんでした。
新しいPythonプログラミング学習のカリキュラムを作ろうと準備を進めていたのですが、そのためにはどうしても読者に環境準備をしてもらわなくてはならず、実際の学習に入るまでに時間がかかるという問題がありました。
そこで、
「環境構築だけ独立した本を出してはどうか」
と考えたのがキッカケです。
IT初心者が環境構築でつまづくのは、この業界のあるあるです。
環境構築だけ独立しても、ニーズはあると考えました。
この実践知を起点にしたことで、私は自動的に「避けるべき3つのテーマ」を回避していました。
1️⃣大手出版社が出しているテーマ
同じような環境構築をテーマにした書籍は他に2冊、出版されていました。
しかし、それらの書籍はどれも汎用的なプログラミング環境構築を説明したもので、私のようにDjangoに絞ったものはありませんでした。
しかも、私の著書は、仮想環境による少ないステップでの環境構築をメリットとしつつ、手を動かしながらその先の基本設定を学ぶことにフォーカスしていますので、他の本との競合を避けることが出来ました。
2️⃣競争が激しい人気のテーマ
Pythonは当然ですが、Djangoもそこそこ人気のテーマです。
事前に5冊ほどDjango関連の本をチェックしましたが、仮想環境を使って簡単に環境構築できるものはありませんでした。
すぐに動かして学習できるという点を前面に出したことで、競争を避けられていると考えています。
3️⃣自身にとって完全に未知のテーマ
私はWeb技術を強みとしており、Djangoに関するテーマにすることで「未知の技術」を避けています。
当然、Djangoのすべてが頭に入っている訳ではないので、調査して試して裏付けを取った内容もあります。
しかし、多少知らないことがあっても、Web技術の中で出来ること・出来ないことは理解していますので、おかしなことがあれば気付くことが出来ます。
…
2冊目はこちらです。
1冊目の続きで、Djangoでのユーザー認証の実装方法を解説した本です。
1冊目で説明した環境構築を2冊目でも踏襲していますので、1冊目から読んでいただいた人はスムーズに取り組めるようになっています。
こちらの本でも3点の確認を行っています。
1️⃣大手出版社が出しているテーマ
ユーザー認証という汎用的なテーマを扱った書籍は出版されていますが、Djangoでのユーザー認証実装に特化した本はありませんでした。
他書との競合は避けられています。
ここで
「需要がニッチすぎるのでは?」
という懸念が生まれます。
Djangoプロジェクトで"基盤開発を担当する"人数は、たしかに少数です。
それでもユーザー認証のテーマで執筆したのは2つの理由があります。
1つ目の理由は、2025年に入り、証券会社で口座乗っ取り被害が増加し、多要素認証やパスキーを導入する動きが活発化した背景があることです。
Djangoを使ったシステムがどれだけあるかは不明ですが、社会的なニーズが高まってくると予想しました。
2つ目の理由は、私自身が整理された情報を必要としていたことです。
私が個人的に構築したいサービスがあり、ユーザー認証機能を実装するにあたり、その実装方法から機能的な限界を理解したかった。
つまり、私に「読者として」ニーズがあったということです。
私にニーズがあるということは、個人開発を行っている他のエンジニアにもニーズがあるだろうと確信しました。
2️⃣競争が激しい人気のテーマ
Djangoのユーザー認証に特化した本は他にありませんでした。
Djangoの基礎を解説する本の中でユーザー認証機能に触れているだけです。
ユーザー認証と一口に行っても、多要素認証やGoogleなどのソーシャルログイン、パスキーなど色々な技術があります。
しかも、一貫した対応を行わなければセキュリティホールになり得る重要な要素であるはずです。
それなのに、技術ブログで断片的な説明しかないことが不思議なほどでした。
3️⃣自身にとって完全に未知のテーマ
ユーザー認証は、Web技術の中でも重要な技術ですので、ある程度の知識はありました。
プロトコルレベルの仕組みについては不明点も多かったので、今回いくつかの書籍で学び、実際に試した上で、書籍に掲載しています。
📚️まとめ
今回は、避けるべきテーマとして次の3点について説明しました。
1️⃣大手出版社が出しているテーマ
2️⃣競争が激しい人気のテーマ
3️⃣自身にとって完全に未知のテーマ
拙著の例で見ていただいた通り、私たちが持つ実践知に基づいてテーマを深く検討していくと、自然と「避けるべきテーマ」を避ける結果になっています。
つまり、『実践知』を起点にすることこそが、非効率な戦いを避け、AIの誘惑を断ち切る、最も合理的かつ戦略的な『回避術』である、と言えます。
本記事は「1️⃣技術トレンドからテーマを決める」に関するものですが、テーマを検討する手段はまだまだあります。
今後、さらに具体的に解説していきます。
「Chi.」プロジェクトを応援していただける方、一緒に挑戦していきたい方はぜひフォロー、スキ、コメントをお願いします。
皆さんの反応が私のモチベーションになります。
今後とも応援よろしくお願いします!
「ITエンジニア×Kindle出版」のシリーズをマガジンにまとめていきます。
マガジンもフォローいただけると、漏れなく更新を確認できます!
