Kindle出版のための実践知モダナイゼーション。古いノウハウは捨てずに活かす。
こんにちは、Hibikiです。
本記事は、「ITエンジニア×Kindle出版の体系化」シリーズです。
その名も「Chi. (チ。)」プロジェクト。
なぜ「Chi.」なんて名前を付けているのかは、第1回の記事をご覧ください。
「Chi.」プロジェクトは、私たちITエンジニアが「体験したこと、考えたこと、感じたこと」という実践知を1冊の書籍にまとめ、本当に価値あるものを次世代につなぐ活動です。
初回の記事で、「ITエンジニア×Kindle出版」の体系は大きく分けて、以下の4つがあると説明しました。
1️⃣技術トレンドからテーマを決める
2️⃣テーマ内で比較検討する
3️⃣比較結果を基に深堀りする
4️⃣比較・深堀りを発信する
ここまでの記事は、4つのステップの大枠を確認するような内容でした。
本記事以降は、各ステップをさらに具体的な内容に落とし込み、この「Chi.」プロジェクトを実践的なノウハウとして完成させていきます。
今回は、「1️⃣技術トレンドからテーマを決める」の具体化です。
繰り返しになりますが、「Chi.」プロジェクトで目指すものは、
『手っ取り早く「売れる」本を書く』
というものではなく、
『私たちの実践知を、本当に価値ある形にまとめて次世代につなぐ』
ことです。
では、なぜ技術トレンドを気にする必要があるのでしょうか?
若手と一緒に最新の技術トレンドを学びましょう、という話ではありません。
私たちが積み上げてきた実践知が、これからの市場のどこで一番価値を生み出せるかを見極めるために必要なのです。
生成AIの登場により、IT業界は目まぐるしく変化しています。
過去のノウハウそのままでは、すぐに通用しなくなるでしょう。
しかし、私たちが体験を通して学んできた実践知は、時間の経過と共に消えてしまって良いものではありません。
本質的な問題へのアプローチは技術が進化しても通用するはずです。
過去のシステムを、クラウド全盛の現代に合わせてモダナイゼーション(近代化)するように、私たちの実践知をテーラリングして、現在、そしてこれからのIT業界に合う形にするのです。
コアとなるビジネスロジックはそのまま残してインタフェースを変えることでモダナイゼーションするように、実践知の本質は残して伝え方・見せ方を変えるのです。
これこそが、私たちの実践知をレガシー資産として次世代に残すためのテーラリングです。
そのために、技術トレンドの理解が必要なのです。
では、どのように技術トレンドを把握すれば良いでしょうか?
技術トレンドを探す上で参考になるのが、ガートナー社が毎年発表しているハイプ・サイクルです。
この記事では、ハイプ・サイクルを中心に次の3つの章で説明していきます。
1️⃣技術トレンドの「S字カーブ」を解読する
2️⃣なぜベテランは「啓発期」を狙うのか
3️⃣現場こそがトレンドの最前線
では、価値あるテーマ選びの世界に、ダイブしていきましょう。
1️⃣技術トレンドの「S字カーブ」を解読する
ハイプ・サイクルは、新しいテクノロジーやイノベーションが登場してから社会に浸透するまでの成熟度、採用度、社会への適用度を視覚化したもので、企業が新しい技術への投資や導入のタイミングを判断するのに役立つものです。
Gartner、2025年の日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクルを発表

新しい技術への投資や導入のタイミングを判断する、とは私たちがまさに必要としている情報ではありませんか!
ハイプ・サイクルは、「黎明期」「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「生産性の安定期」という5つのフェーズから構成されています。
図を見ると分かる通り、この5つのフェーズでS字型のカーブを描いています。
ポイントは黎明期~ピーク期~幻滅期と急激な上り、下りがあり、啓発期以降は緩やかな上り坂となっていることです。この2つの上昇カーブが特徴的です。
もう20年以上前の話になりますが、このハイプ・サイクルにぴったり当てはまる動きを目の当たりにしたことがあります。
それは「Linux」です。
私が「Linux」を最初に目にしたのはどこかの技術系サイトだったと思いますが、その後すぐに新聞やTVのニュースでも取り上げていましたので、すでに「ピーク期」近くだったはずです。
最初は「リナックス」だったり、「ライナックス」だったり、日本語での読み方も定まらないような状況だったことを覚えています。
当時も優秀なオープンソースはありましたが、Linuxのように成功したオープンソースはほぼ無かったのではないかと思います。
Linuxが一時ブームとなり、Linuxを担いだ新興企業が立ち上がり、名前を覚えられないほどの多数のLinuxディストリビューションが生まれました。
しかし、Linuxも例外ではなかったのです。ハイプ・サイクルの通り、そのブームも幻滅期に入り、あれだけあったLinuxディストリビューション企業はどんどん消えていきました。
Linuxはこのまま消えてしまうのかと思うほど誰も口にしなくなりましたが、結果は皆さんご存知の通り、今ではIBM社がレッドハット社を買収し、WindowsにはWSLという形でLinuxが搭載されるまで普及しています。
きっと私たちが日常的に使っているサービスの裏側でもLinuxが活躍しているのでしょう。
波の大小はあるにせよ、技術の推移は決して「右肩上がりの一直線」では無いのです。
この2つの上昇カーブを理解することで、より正確に市場のニーズを捉え、実践知の最適な伝え方を考えることができるようになります。
2️⃣なぜベテランは「啓発期」を狙うのか
ハイプ・サイクルに2つある上昇カーブの内、「Chi.」プロジェクトで本当に捉えるべき波は「啓発期」です。
黎明期の方が角度があり、ニュースなどで目にする機会も多いですが、Linuxの例で見た通り、幻滅期に入った技術はその多くが消えてしまいます。
黎明期の技術を無視して良いと言っている訳ではありません。
技術の進化は、市場の要望に基づいて進むことを考えると、今市場が何を求めているかを知る手がかりとして黎明期の技術は活用できます。
しかし、ネットニュースに煽られて、黎明期の技術に慌てて飛びつく必要はないのです。
私たちに必要なのは冷静に技術を分析する目です。
一時的なブームに乗ってお祭り騒ぎしているだけなのか、それとも本当に市場が抱える問題を解決する策としての技術なのか。
長年IT業界で、様々な技術の栄枯盛衰を見てきた私たちには、その分析ができるはずです。
そして、幻滅期の底を打ち、実用化に向けて這い上がろうとしている技術こそ、私たちが手を出すべきものです。
啓発期に入った技術は、これから現場に展開していくにあたって、泥臭いスキルが必要になります。
導入時にハマりやすい落とし穴はどこか?
既存の古いシステムとどう連携させるか?
どのように習得すれば効率的か?
この泥臭い部分こそ、私たちの実践知が光る場所でしょう。
啓発期に入った瞬間を捉え、私たちの実践知をその技術にテーラリングしていくことこそ、時代の波を乗り切る生存戦略なのです。
3️⃣現場こそがトレンドの最前線
ここまで見ていただいた通り、ハイプ・サイクルはトレンドを探る上でとても有用な情報です。
しかし、大企業の研究開発で参考とするような粒が大きいキーワードばかりで、私たちの実践知につながるようなものではないかもしれません。もう少し身近で読み手の関心を引きつつ、実践知に展開できるようなトレンド情報はないでしょうか。
プログラミング言語の利用者数などの調査結果は見かけることがありますが、プログラミング言語しか情報が無いのでは、応用にも限界があります。
残念ながら私はちょうど良いレベルのトレンド分析を見たことはありません。しかも、啓発期にある技術を示しているトレンドではなおさらです。私たちの身の丈に合ったトレンド情報は諦めるしかないのでしょうか。
しかし、トレンド情報として整理されたものはなくても、私たちベテランエンジニアであれば肌感覚で分かることもあるのではないでしょうか。
「隣の案件では、生成AI技術を使ったシステムの開発を行うらしい」
「先日、大規模なサイバー攻撃を受けた、あの企業では新たなセキュリティ対策を行うらしい」
「お客様先で、今度ロボット開発を行うと聞いた」
現場で周りの動きにアンテナを立てていれば、こうした情報を耳にすることもあるはずです。
今まで現場では聞こえてこなかった技術の話し、これこそがまさに「啓発期」に入った技術です。
もちろん、普段からIT技術系のサイトなどで情報を仕入れておかないと、いざその話を耳にした時にも反応できませんので、日頃からの情報収集は前提です。
しかも、現場で耳にした技術ということは、私たちの実践知といずれ混じり合う可能性が高いでしょう。そういう情報をキャッチしていけば、トレンドが持つPullの力を活かすことができます。
大事なのは、
①技術には「黎明期」「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「生産性の安定期」というフェーズがあること、
②今耳にした技術がどのフェーズにあるかを考えること
です。
たとえ、誰も理路整然と整理したトレンド情報を提供してくれていなくても、その流れを掴むことは出来るはずです。
結局のところ、現場にいる私たち自身の嗅覚こそが最強のセンサーです。
今までよりも少しだけ現場で聞こえる話に耳を傾け、啓発期の足音を捉えましょう。
そこから編み出される書籍こそ、AIにもマネできないものになるでしょう。
📚️まとめ
本記事は、技術トレンドの情報を用いて、実践知の本質は残して伝え方・見せ方を変える方法について考察してきました。
1️⃣ 技術トレンドの「S字カーブ」を解読する
技術の進化は一直線ではなく、熱狂と幻滅を乗り越え、また蘇るように「S字カーブ」を描くことを、Linuxの歴史を例に確認しました。
2️⃣ なぜベテランは「啓発期」を狙うのか
私たちベテランが狙うべきは、ブームが去り実務での活用が始まる「啓発期」であり、そこにこそ「泥臭い実践知」の需要があります。
3️⃣ 現場こそがトレンドの最前線
明文化されたレポートよりも、現場で日々戦う私たち自身の「嗅覚」こそが、啓発期の兆しを捉える最強のセンサーです。
流行りのバズワードを使って注目を集めるというような薄っぺらい内容でないことは理解いただけたかと思います。
「Chi.」プロジェクトで実現したいことは、私たちの実践知を広く、深く浸透させることです。そのためにも、啓発期から安定期に続く、地道だけど力強い波の力を活用する方法を見てきました。
さあ、私たちの実践知を形にする時です。私も一緒に、挑戦を続けます。
「Chi.」プロジェクトを応援していただける方、一緒に挑戦していきたい方はぜひフォロー、スキ、コメントをお願いします。
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