日曜日のホットケーキ
学生の頃、日曜日の朝によくホットケーキを焼いていた。
中学生くらいだったと思う。
使っていたのは、もちろん小麦粉から配合するようなものではなくて、混ぜて焼けば簡単にできる市販のホットケーキミックス。卵と牛乳を入れて、ぐるぐる混ぜて、フライパンに流す。
それだけなのに、私はすっかりハマってしまって、毎週のようにホットケーキの朝を迎えていた。
父は仕事の疲れから、日曜日は昼過ぎまで眠っていることが多かった。
だから朝の食卓にいるのは、母と私。
もともと私は朝が得意なほうではなかったけれど、ホットケーキの日だけは少し早起きを頑張った。
焼き上がったホットケーキを母と食べる。
今思えば、あれは単純に「ホットケーキが食べたい」という気持ちだけではなかったのかもしれない。
我が家は共働きだった。
平日は私も部活があって、帰ってくるのは夜の八時頃。土曜日も夕方くらいまで部活をしていた。
家族みんながそれぞれの生活をしていて、顔を合わせてゆっくり過ごす時間は、思っていたより少なかった。
一人っ子だった私にとって、日曜日の朝は、母と一緒にいられる時間だったのだと思う。
ホットケーキを焼くことが、親子の時間をつくるための小さな口実になっていたのかもしれない。
私は昔から、料理をつくることが好きだった。
もちろん、うまくいかないときは「コノヤロー」と思うくらいにしょげる。
焼き色が思ったようにならなかったり、形がいびつになったりすると、もう二度と作りたくないような気持ちになる。
けれど、一度うまくでき始めると、今度は何度でも作りたくなる。
そんな性格だった。
たしか一度、とても綺麗なホットケーキが焼けたことがある。
絵本の中に出てくるような、ふっくらとしたホットケーキだった。
私はそれが嬉しくて、それを母に食べてもらいたくなった。
たっぷりのバターを乗せて、たっぷりのメープルシロップをかける。
今思えば、ちょっとかけすぎだったかもしれない。
それでも私は、それを母の前に置いた。
「きれいにできたね」
母が褒めてくれた。
その言葉が嬉しかった。
もしかすると、そこから毎週日曜日のホットケーキが始まったのだったと思う。
ホットケーキそのものが好きだったのかもしれない。
上手に焼けるようになることが嬉しかったのかもしれない。
褒めてもらえることが嬉しかったのかもしれない。
それとも、朝の静かな台所で母と過ごす時間が好きだったのかもしれない。
きっと、全部だった。
大人になってから、たまに日曜日のホットケーキを思い出す。
あの頃のフライパンや、焼けていく甘い匂い。
バターが少しずつ溶けていくところ。
メープルシロップをかけるときの、ちょっとした贅沢な気持ち。
そして、母に食べてもらいたくて、一番きれいに焼けたものを差し出したこと。
そういうものは、ずっと覚えている。
たまに、また作ってみようかなあと思う。
今なら、あの頃より上手に焼けるだろうか。
それとも、少しくらいいびつなほうが、あの日曜日の味に近いのだろうか。
そんなことを考えながら、いつかまたホットケーキを焼いてみたい。
日曜日の朝に。

とりあえず描いてみました。
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