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歳だから

母も祖母も、歳を重ねるにつれて同じ言葉を口にするようになった。
その言葉は決して前向きな意味ではない。
「歳だからできない」
「歳だから迷惑をかける」
そう言って、好きなことを諦めたり、自分の存在を小さくしてしまっているように見えることがある。

私はその言葉を聞くたび、少し切なく心がギュッとなる。
なぜなら、人が歳を重ねることは悪いことではないからだ。むしろ、生きてきた証そのものだと思うから。

人は誰でも老いていく。
昨日まで簡単にできていたことが難しくなったり、身体が思うように動かなくなったり、自分自身でも戸惑う瞬間が増えていく。けれど、それは特別なことではなく、人間として自然な流れなのだと思う。

だから私は母や祖母に、「迷惑なんて思わなくていい」と伝えたくなる。
幼い頃、右も左も分からず、泣いてばかりだった私を育ててくれたのは母であり祖母でもある。体調が悪い時に背中をさすってくれたこと。転んだ時に手を握ってくれたこと。生きていくうえで大切なことを、経験や言葉で教えてくれたこと。今の私をつくっているものの多くは、きっと2人から受け取った優しさでできている。

だからこそ、今度は私が受け止める番なのだと思う。
老いによる変化も、不自由さも、決して負担ではない。むしろ、その時間を共に生きられることがありがたい。皺が増えることも、歩く速度がゆっくりになることも、「今日まで生きてきた」という時間の積み重ねなのだと思う。

だから私は、母にも祖母にも、遠慮せず好きなことをしてほしい。
「歳だから」と諦めるのではなく、「歳を重ねた今だからこそ」見える景色を楽しんでほしい。美味しいものを食べたり、綺麗な花を見たり、笑ったり、時にはわがままを言ってほしい。

いつか「歳だから」という言葉が、寂しさではなく穏やかな響きに変わっていけばいい。
老いることを恐れるのではなく、「ここまで生きてこられた」と感謝できるような日々になればいいなと思っている。

そして母と祖母が、たくさんの楽しいことに包まれながら笑っていてくれることが、今の私にとって何よりの幸せなのだ。

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