第一章第三話|気づきの残響
記録 No.003
提出者|日報室 ミラ
本日、ユラ三度目の来訪。
入店時の気配は、ごく自然なものだった。棚の囁きも落ち着いており、前回よりも明らかに受け入れていたように思う。
無色の本の前に立つ彼女の視線には、前回までとわずかな違いがあった。手は出さず、ただじっと表紙を見つめていた。そして、わたしには聞こえた。彼女が、本に向かって問いかけた声が。
「この本は、どうしてわたしを知っているの?」
問いに応じるように、ページが微かに開き、一文がにじむように現れた。
「思い出せないことの中に、
いちばん大切なものがある」
彼女は少しだけ息を止め、すぐに本を閉じた。
その動作に、ためらいはなかった。
本の光は、昨日よりも確かに濃かった。
棚の奥から二筋の光が走るのを確認。記録。
本の反応は、彼女の状態と連動している可能性がある。
読解とは、知識の有無ではなく、内側の何かによって進むのかもしれない。
該当記録、分類コード未付番。暫定保管とする。
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