琥珀の矜持 第一章〜京の飴・いしざき御所乃石本舗物語〜
第一章:消えた雑踏……
二〇二〇年、春。京都から音が消えた。
観光客の喧騒は止み、祇園の石畳を叩く下駄の音も途絶えた。上京区の御所の袂にある「京の飴 いしざき御所乃石本舗」の四代目・石崎秀生は、工房で一人、唸りを上げる直火地釜の前に呆然と立っていた。
「……誰も、歩いてへん」
店先に並ぶ豆平糖の袋は、一向に減る気配がない。追い打ちをかけるように、祇園の有名店が休業を決めたというニュースが飛び込んできた。
「あそこまで閉めはるんか……」
豆平糖のライバルとも言える老舗がシャッターを下ろした。それは、京都から「豆平糖」という文化そのものが消えかねない危機の象徴だった。
それはまるで暗雲に囲まれた月の様な感覚だった

