映画を観た記録27 2026年3月1日 エリア・カザン『暗黒の恐怖』
Amazon Prime Videoでエリア・カザン『暗黒の恐怖』を観る。
本作の主題は、パンデミックである。
それも病原菌は、ペストである。
そのペストは殺された被害者から発見された。そしてペストのポパンデミックを食い止めるために犯人にも感染しているから、犯人捜索のために警察ととともに行動するリチャード・ウイドマーク演じる公衆衛生局の医師リードの献身的な活躍を描く。
確かに、アメリカ政府は「頑張ってるんだよ」というPR映画と見えなくもないというか、そうなのである。しかし、そんなことはうでもよい。その程度の読みは、誰でもわかる。本作が知的で洗練されているのは、パンデミックを主題にしながらも、安直な恐怖映画にしていないことなのだ。本作はスプラッターではない。
刑事ドラマとパンデミックをつなげてしまうところが、知的なのである。本作がアメリカの公務員が頑張っているというPR映画だとしても、ペストを知った記者と刑事の激突が、そのように見せないのだ。刑事とウイドマーク演じる医師は、ペストを新聞でしらせたら、犯人が逃げていってしまうから知らせたくないのだ。そうなると国全体にパンデミックが広がり、下手すると地球全体にパンデミックが拡大してしまうのだ。医師は、アフリカまで10時間で行けるのだ、地球も地域だと述べる。グローバルヴィレッジの考えを1950年当時に述べているのは、先進すぎるのである。
エリア・カザンは、決してつまらない映画を作る凡百な監督ではない。むしろ、傑作揃いである。マーロン・ブランドをスターにしたのはカザンの『波止場』である。才能はあるのだが、ハリウッド・テンで「告白」したがゆえに、不名誉な映画監督になってしまった。本作にしても、ペスト菌保有者を知らずと殺害したチンピラ犯罪者を演じるジャック・パランスにカザンは相当無理強いをした演技をさせている。海岸近くの倉庫のマンホールを開けると、下は海につながっており、海の上に板があるだけであり、その板の上を歩くシーンがあり、海に落ちそうになったり、船とつながっている紐を登らせたり、ジャック・パランスはサーカスをしているのかくらいの演技であり、本作がジャック・パランスのデビュー作である。映画最初の出演が、チンピラ犯罪者で、しかも曲芸まがいまでさせられ、走らされ、大変である。カザンの演出力はこんなところにも表れている。
ちなみに、本作は、ウイドマーク演じる医師が、仕事で疲れ、イライラし、いまだ貧乏家庭でありながらも夫婦の愛は硬く結ばれている、という良心的なメッセージを夫婦のシーンで表している。
妻は語る「一人っ子を卒業させなきゃ」名セリフである。
パンデミックを主題にしながら、刑事ものと結び付けるアイデアが知的であり、洗練されている。傑作である。

Amazon Primeであれば、無料で観られる。紹介しておきます。
