Jaco Pastorius のアルバムレビュー(Weather Report編)
Weather Report というグループは個人的には馴染みがないというか,リアルタイムで聴いていないこともあり,正直どの辺が凄いのだろうか…と思うこともあります.Jaco Pastorius 参加作品を聴いてみることで,自身の中でのWeather Report に関する認識を新たにすることに加えて,二重に買わないためのメモとして残しておきたいと思います.
Black Market (1976)
Black Market はウェザー・リポートの7作目の作品で,1975年10月~2月にかけて録音されました.Jaco Pastorius の Weather Report への初参加アルバムで,2曲目の Cannon Ball と6曲目の Barbary Coast に参加しています.
その他の曲のベースは Alphonso Johnsonです.Alphonso Johnson はBlack Marketの作成中に George Duke との新しいバンドを結成するために,Weather Report を脱退してしまい,偶然,デモテープを送ってきた Jaco Pastorius が抜擢されたとのことです.
Cannon Ball は,Joe Zawinul のかつてのボスであるアルト・サックス奏者 Julian Edwin "Cannonball" Adderley に捧げた曲です.Cannonball Adderleyは,1975年に脳卒中で亡くなっており,Cannonball Adderley がフロリダの出身だったこともあって,同郷(生まれたのはペンシルベニア州ですが,7歳の頃にフロリダ州に移住している)となるJaco Pastorius が抜擢されたとの噂がありますが,それだけでメンバーに加わることができた訳ではないと思います.この曲では,リバーブを効かせたJaco Pastorius のフレットレスベースが,既往のベースサウンドとは異なり,曲の全体を支えつつ,フローするような感じを出しています.当時はこの曲でJaco Pastorius の存在を知った人も多かったのかもしれません.また,クレジットを見て,どの音がベースなんだろうかと思った人もいたかもしれません.
また,Barbary Coast はJaco Pastorius が故郷に思いを寄せて書いた曲だそうです.この頃は無名の新人だったにも関わらず,Weather Report に参加して,曲も提供してしまうJaco Pastorius は超大型新人といった感じだったのでしょうか.収録曲は以下の通りです.
Black Market(Joe Zawinul)
Cannon Ball(Joe Zawinul)
Gibralter(Joe Zawinul)
Elegant People(Wayne Shorter)
Three Clowns(Wayne Shorter)
Barbary Coast(Jaco Pastorius)
Herandnu(Alphonso Johnson)
Musician: Wayne Shorter (sax), Joe Zawinul (synthesizer), Jaco Pastorius (bass #2, #5), Alphonso Johnson (bass #1, 3 - 5), Alejandro Neciosup Acuna (percussion), Don Alias (percussion #1, #6), Narada Michael Walden (drums #1, #2), Chester Thompson (ludwig drums)
Heavy Weather
ジャコが加入してから2作目となる Heavy Weather は Weather Report としては通算8作目となり,1977年にリリースされていて,Weather Report のアルバムの中では,最も売れたアルバムだそうで,ここからが Weather Report の黄金期と言われることが多いようです.
このアルバムでは,2曲の楽曲提供があり,1曲目の Birdland のイントロでは,Jaco Pastorius のハーモニクス奏法を聴くことができます.3曲目の Teen Town と8曲目の Havona はJaco Pastorius の曲です.前の初参加アルバムに続いての楽曲提供.やはり超大型新人です.クレジットでも Co Producer と記されているので,Joe ZawinulとWayne Shorter にも認められていたのだと思われます.また,想像でしかありませんが,Joe Zawinulや Wayne Shorter 達から音楽理論等も含めて多くのことを吸収していたのではないかと想像します.
Birdland(Joe Zawinul)
A Remark You Made(Joe Zawinul)
Teen Town(Jaco Pastorius)
Harlequin(Wayne Shorter)
Rumba Mamá(Manolo Badrena, Alex Acuna)
Palladíum(Wayne Shorter)
The Juggler(Joe Zawinul)
Havona(Jaco Pastorius)
Musician: Joe Zawinul (Synthesizer, Piano), Wayne Shorter (Sax), Jaco Pastorius (Bass, #3 Drums), Alex Acuna (Drums), Manolo Badrena (Percussion)
8:30 (1979)
ウェザー・リポート9作目のアルバム."8:30"というタイトルは,当時の Weather Repot の公演が8:30pmから始まっていたことに由来するらしいです.この頃のWeather Repotのライブは2時間を超えて20曲くらいの演奏だったそうで,ライブが終了するのは11:00pmくらいだったのでしょうか.日本の感覚で言うと,結構遅めのスタートに感じます.収録曲は,1978年9月のドイツ オッフェンバッハで行われたライブ音源9曲に加えてスタジオ録音の4曲の計13曲です.
個人的にはJaco Pastorius が参加しているWeather Report のアルバムの中では,これが一番好きです.これには,ドラムとしてPeter Earthkin が参加していて,リズムセクションが鉄壁状態になっていることもあると思います.
3曲目の Teen Town のJaco Pastorius のドライブというのかわかりませんが,グイグイと全体を引っ張るような感じは,他では聴いたことがありません.スゲェ〜という感じです.Jaco Pastoriusのリーダーアルバムのレビュー記事でも書きましたが,早いテンポの曲で,グイグイ引っ張るというのか,以前のJaco Pastorius のレビューでは,緊張感,切迫感,ギュルギュルギュルと渦巻くようなドキドキ感と表現した感じは,Jaco Pastorius 独特の空気感だと思います.グルーヴしているとか,ドライブさせているとかという表現もあるかと思いますが,個人的には,何かそれとは違うんだよなぁ〜という感覚で,結局は「ギュルギュル」感という擬音表現に落ち着きます….そして,続く4曲目の A Remark You Made では,メローかつ全体を支えるフレットレスの特徴を最大限に活かしたベースを聴かせてくれます.そして次のSlang (Bass Solo)では,自身の弾いたベース音をサンプリングしてループさせ,その上で演奏するという新たな演奏スタイルでの表現を聴くことができます.このような演奏は,当時一般的なものだったのでしょうか?こんな演奏を生で聴いたら,感動しちゃうだろうなぁと思います.
このアルバムを聴くとWeather Report の凄さがわかる気がします.レコーディングと同等,若しくはそれ以上のライブ演奏をするメンバーのポテンシャルと,新たな何かを求める実験性を持ったバンドが,アルバムでも,ライブでも今までにないような何かを示してくれるのではないかという期待に応えたのがWeather Reportなのかなと思います.あと,全体的に曲調が明るいのも特徴の一つで,それも魅力の一つのような気がします.そして,なんと言っても,Jaco Pastorius とPeter Erskineの鉄壁リズムセクションの存在です.Weather Report を聴いたことのない人に一枚薦めるとしたらこのアルバムかなと思います.
収録曲とミュージシャンは以下の通りです.
Black Market
Scarlet Woman
Teen Town
A Remark You Made
Slang (Bass Solo)
In A Silent Way
Birdland
Thanks for the Memories
Badia/Boogie Woogie Waltz (Medley)
8:30
Brown Street
The Orphan
Sightseeing
Musician: Joe Zawinul, Wayne Shorter, Jaco Pastorius, Peter Erskine, Erich Zawinul, The West Los Angeles Christian Academy Children's Choir
Mr. Gone
Weather Report の10枚目となるアルバム."Heavy Weather"までのメンバーだったAlex Acuña(drums)が脱退して,Manolo Badrena, Peter Erskine, Tony Williams, Steve Gadd達がサポートドラマーとして参加しています.それにしても,もの凄い豪華なサポートドラマーです.ドラマーが定まらないことで,バンドとしては色々と大変な面があったのだろうとは思いますが,何故,そのようなことになったのかはわかりません.ALL ABOUT WEATHER REPORT のような本を読んでみれば何かわかるのかもしれないと思うので,いつか,機会をみつけて読んでみたいと思います.
また,サポートドラマーとして参加したPeter Erskineが正式メンバーとなるので,Weather Report から Word of Mouth Big Band の約4年間に渡る Jaco Pastorius とPeter Erskine の黄金・鉄壁リズムセクション時代がスタートします.この↓写真を見ると,Jaco Pastorius とPeter Erskineは,とても相性が良かったのではないかと思ってしまいます.

Mr. Gone ではJoe Zawinulがポリフォニック・シンセサイザーを使い始めたり,Earth, Wind & Fire のMaurice Whiteを招いてのボーカル曲 "And Then" を収録したりと,バンドサウンドにも色々な変化が生じ始めています.今となっては,Weather Report は古典的なバンドとして位置づけられるのだと思いますが,当時は実験的な尖ったバンドだったのではないかと思います.
Jaco Pastorius はこのアルバムで "Punk Jazz" を提供しています.ジャコパストリアスの肖像(ビル・ミルコウスキー)に書かれている本人インタビューで,Jaco PastoriusはPunk Jazzについて以下のように語っています.
俺はフロリダ出身のパンク,ストリート・キッドだ.オレの住んでたあたりでは,パンクとは生意気な奴のことを指した.物事に全然かまわないって点では,俺はまさに生意気な奴だよ.パンクってのは悪い言葉じゃない.自分を擁護できるだけの度胸があり,尊敬に値する人のことを指すんだ.流行りのイギリスからやって来たパンク・ミュージックの,鼻にピンとか通してる連中やっていることとは関係ないよ.俺は自分の音楽をパンク・ジャズってもう十年間呼んでいる.そのイギリスの音楽が流行る,ずっと前からね.
Night Passage
このアルバムでは,これまでに Weather Report のアルバムで多用されていたオーバーダビングによる録音ではなく,即興的な演奏が多くなっているようです.スタンダード曲 Rockin’ in Rhythm はWeather Report らしくないような気もしますが,Mr. Gone までに作り上げた,計算して作り上げた楽曲から,また違う世界を模索していた考えると,スタンダードが収録されたのは妥当なのかもしれません.そして,Three Views of A Secret がこのアルバムで初登場となります.ただ,Heavy Weather や 8:30 の感じが好きだったファンからすると,なんかちょっと違う…と感じるアルバムだったかもしれません.
アルバムは1980年発売で,その後(1981年),来日ツアーが行われています.以下の写真はネットで拾った,1981年6月11日の新宿厚生年金会館でのライブ時のものです.

Weather Report
このアルバムで,1978年に発売された Mr. Gone から安定していたJaco Pastorius とPeter Erskineによる黄金・鉄壁リズムセクションは最後になります.Peter Erskin は "No Beethoven: An Autobiography & Chronicle of Weather Report"というWeather Report時代を軸にした自叙伝も書いているので,いつか読んでみたいと思います(残念ながら和訳はされていません).


Jaco Pastorius のリーダーアルバムなどのレビューはこちら.
Jaco Pastorius のムービーレビューはこちら.
