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「お父さん」でも「課長」でもない私は、誰か?

コーチング・研修・コンサルティングを通じて「人を育てる人」を支えてきました。
最近は、ミドル・シニア期のキャリアや生き方に向き合う一人ひとりにも、
その知見をお届けしています。株式会社ドリームパイプラインの安藤秀樹です。

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ここまで、職場での役割、家庭での役割が、少しずつ変わっていく話をしてきました。

役職を離れ、子どもが巣立つ。
すると、ある根源的な問いが静かに立ち上がってきます。
「お父さん」でも「課長」でもなくなった自分は、いったい何者なのだろう? と。


私たちは、たくさんの「役」を生きてきた

考えてみれば、私たちは長い間いくつもの「役割」を身にまとって生きてきましたよね。

会社では「課長」や「部長」。
家では「お父さん」「お母さん」、あるいは「夫」「妻」。
地域では「〇〇さんの親」。
それぞれの場面で、その役にふさわしい振る舞いをいつのまにか身につけてきたんです。
そしていつの間にか、その役割こそが自分自身だと思い込むようになっていませんでしたか?

ところが午後になると、その役割が、ひとつ、またひとつと外れていくんですね。
役職定年で「課長」が外れ、子どもの巣立ちで「現役の親」の役が薄れる。そのとき、ふと立ちすくんでしまうのです。
役をすべて脱いだあとに、いったい何が残るのだろう? と。

この問いは、思いのほか深い不安を連れてくることがあります。
役割で自分を支えてきた人ほど、その支えが外れたとき、足元がぐらりと揺らぐ。
「自分には、肩書きや役割を取り去ったら、何も残らないのではないか?」そんな心細さに襲われることさえあります。
かく言う私も、その心細さをちょっぴり味わった一人です。

役割は、自分そのものではない

しかし、ここで思い出したい大切なことがあります。

役割は、あなたが「演じてきたもの」であって、あなた「そのもの」ではない、ということです。
舞台の上で俳優がさまざまな役を演じるように、私たちも人生という舞台で、いくつもの役を演じてきたわけです。
役を脱いだからといって、俳優そのものが消えてなくなるわけではないのです。

むしろ、すべての役を脱いだあとに残るもの・・・それこそが飾りのない、素(す)のあなたです。

何が好きで、何を大切にし、何をしているときに心が動くのか。
肩書きや役割を抜きにした、あなた自身の輪郭。
午後は、それをあらためて確かめていく時間なのだと思うのです。

「役」ではなく「私」を、主語にしてみる

では、素の自分を、どう見つけていくのか。

ひとつのやり方は、「〇〇として」ではなく、「私は」を主語にして考えてみることです。
「親として、こうすべき」
「管理職として、こうあるべき」ではなく、
「私は、本当は何がしたいのか」
「私は、どんなときに、心から楽しいと感じるのか」と。

長いあいだ役割を生きてきた人ほど、この「私は」という主語がさび付いていることがあります。
すぐには、言葉が出てこないかもしれません。
しかし、それはあなたの中身が空っぽだからではなく、ただそんな問いを久しく自分にかけてこなかったからなんです。

手がかりは、案外小さな日常の中にあるものです。
どんなときに、時間を忘れて没頭できるか?
何をしているときに、心がふっと軽くなるか?
誰といると、飾らない自分でいられるか?
そうした小さな「心が動く瞬間」を、拾い集めていく。

その積み重ねの中に、役割ではない「素のあなた」の輪郭が、少しずつ浮かび上がってくると思うのです。

面白いもので、この作業を始めると忘れていた自分に再会することがあります。
若い頃に好きだった音楽、心を動かされた景色、時間を忘れて夢中になった何か・・・。
役割に追われるうちに、いつのまにか押し入れの奥へしまい込んでいた「私」が、ひょっこり顔を出す。
午後は、その懐かしい「私」と、もう一度仲良くなっていく時間でもあるのかもしれません。

役割を手放すことは、喪失であると同時に解放でもあります。
誰かの期待に応えるための人生から、自分自身を生きる人生へ。
午後は、ようやく「私」を主語に生きられる、その入り口だと思うのです。

次回は、少し目線を変えてみます。自分の変化だけでなく「親」という、もう一つの大切な存在の変化について。
親の背中が、小さくなっていく話です。

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