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「べき」を手放す ~ 完璧なリーダーという幻想

コーチングのテーマとなることが多い「重要だけど緊急でないこと」の典型は、
キャリアプランです。特にシニア年齢を迎える時期への漠たる不安が多いことを知り
そんなお悩みに向き合ってみました。株式会社ドリームパイプラインの安藤秀樹です。

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これまで、「リーダーも一人の人間だから、あるべき姿に潰されないように」というお話をしてきました。
今回は少し角度を変えて、私たちを内側から追い詰める「べき」という言葉そのものを見つめ直してみたいと思います。


「リーダーは弱音を吐くべきではない」
「上司は部下より仕事ができるべきだ」
「いつも冷静であるべきだ」
「すべての相談に答えを持っているべきだ」
・・・管理職の方と話していると、こうした「べき」が、まるで空気のように本人を取り囲んでいることに気づきます。

ある中間管理職の方は「部下の前で迷ってはいけない」という思いから、わからないことも即答してしまい、後で辻褄合わせに追われて疲弊していました。
「べき」は、こうして静かに人を追い詰めます。
やっかいなのは、本人がそれを「正しい心がけ」だと信じているため、苦しさの原因に気づきにくいことです。

「べき」は、しばしば事実ではなく「思い込み」

以前アンガーマネジメントのお話でも触れましたが、怒りやストレスの背後には、「べき」が潜んでいます。
心理療法の世界では古くから、この「〜すべき」「〜でなければならない」「~すべきでない」「~であってはいけない」という硬い思考が人を苦しめる元凶のひとつとされてきました。

精神分析家のカレン・ホーナイは、これを「べきの専制(the tyranny of the should)」と呼びました。
理想の自分が「こうあるべきだ」と命令を下し、現実の自分がそれに届かないと人は自分を責め始めるのです。
論理療法を創始したアルバート・エリスも、「〜ねばならない」という非合理な思い込みが不要な苦しみを生むと指摘しています。

問題は、これらの「べき」の多くが「よく検証してみると「絶対の真実」ではない」ということです。
「リーダーはすべての答えを持っているべき」
・・・本当にそうでしょうか?
むしろ、わからないことを「わからない」と言える、チームの知恵を借りられるリーダーの方が健全ではないでしょうか。

完璧主義という、見えない重し

「べき」が積み重なると、完璧主義に近づいていきます。
完璧主義は一見すると高い基準を持つ立派な姿勢に見えます。
しかし研究では、過度な完璧主義は燃え尽き(バーンアウト)や、不安、抑うつと結びつきやすいことが、繰り返し指摘されています。

「完璧でなければ意味がない」という思考は、達成しても満足できず、わずかな失敗で自分を全否定する・・・そんな消耗のループを生みやすいのです。

しかも完璧主義のリーダーは、自分だけでなく知らず知らずチームにも同じ基準を求めてしまいがちです。
これが問題です。
結果的に部下は萎縮し、挑戦や報告をためらうようになります。
本人の苦しさが、そのままチームの息苦しさへと伝わってしまうのです。

リーダーに必要なのは、完璧さではありません。
むしろ「7割で前に進み、走りながら補正していく勇気」だと私は思うのです。

その「べき」を、検証してみる

ひとつ、おすすめしたい習慣があります。
頭に「べき」が浮かんだら、いったん立ち止まって、こう問い直してみるのです。

「それは本当に『べき』なのか、それとも自分がそう思い込んでいるだけなのか?」
「その『べき』は、いったい誰の声なんだろう? 昔の上司? 親? それとも世間(という曖昧なもの)?」
「もし守れなかったとしたら、実際には何が起きるんだろう?」

最後の問いは、特に効きます。
「弱音を吐いたら、リーダー失格だ」と思い込んでいても、実際に一度メンバーに「正直、今ちょっと参っていてね」と打ち明けてみると、軽蔑されるどころか、かえって信頼が深まった・・・
そんな経験をされた方は少なくないでしょう。
頭の中の「べき」が予言する「最悪の事態」は、たいてい現実には起こらないんです。

問い直してみると、その多くが絶対の掟ではなく、いつの間にか自分に課していたルールにすぎないと気づきます。

しかし、すべての「べき」が悪いわけではありません。
仕事を支える健全な規範もあります。
大切なのは、自分を不必要に痛めつけている「べき」と、本当に守る価値のある「べき」を選り分けることです。

完璧なリーダーである必要はありません。
「べき」の鎧を一枚ずつ脱いでいくことが、長く務めを果たしていくための、案外いちばんの近道なのだと思います。

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