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「働く人に安全を伝えたい」第24回(道路陥没事故)

第24回は、「道路陥没事故と下水道管路の老朽化について」

埼玉県八潮市道路陥没事故
2025年1月18日、埼玉県八潮市の交差点で道路陥没事故が発生した。
トラックが、直径約5m、深さ約10mの陥没穴に落下し、74歳の運転手が、安否不明となった。その事故から3か月経った5月2日にようやく救出されたが、その場で死亡が確認された。
遺族の方は、トラックを運転していて道路の陥没事故に巻き込まれるなんて想像すらしておられず、救出されるまであまりにも長い3か月だったことだろう。心よりご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご家族の皆様にお悔やみ申し上げます。
 原因は、交差点の地下10mにある呼び径4.75mの下水道管で、下水から発生した硫化水素が空気に触れて硫酸になったことで管を溶かし、破損したことで水が漏れ土石が流れて空洞ができたとされている。

下水道管の腐食と道路陥没メカニズム(国土交通省HP)

大きな社会問題となった「埼玉県八潮市道路陥没事故」で益々、下水道管路の老朽化の問題が、注目されるようになり、腐食などによる破損がないか、緊急点検を直径2m以上で大規模な処理場に接続する下水道管を対象とし実施すると発表され、緊急点検や自主点検が行われた。
老朽化した下水道管を計画的に、かつ適切に維持管理・更新することが、管路の破損等による道路陥没事故の防止につながる。

下水道管の現状
令和5年度末までに整備された全国の下水道管の総延長は、約50万kmに達している。そのうち、標準耐用年数50年を経過した管路の延長が約4万km(総延長の約7%)となっており、10年後(令和15年度末)には約10万km(約20%)、20年後(令和25年度末)はに約21万km(約42%)と、今後は耐用年数を超過した管路が急速に増加する見込みとなっている。
持続的な下水道機能を確保するためには、計画的な維持管理・改築事業の実施が必要だ。

管路施設の年間別管理延長(国土交通省HP)

下水道に起因した道路陥没事故の現状
道路陥没件数については、平成19年に4,543件から徐々に減少し、15年後の令和4年には、2,607件になっているが、それでも、日当たりに換算すると、7~8回/日も発生していることになる。日本のどこかで毎日、起きているということに驚愕する。そのうち約86%が、50cm以下の浅い陥没事故であり、規模の小さいものがほとんどである。だが、100cm超が2%であっても注視が必要である。
また、布設後の40年を経過すると陥没個所数が急増する傾向にあり、道路陥没のうち下水道に起因する割合は、道路全体で約1割、都市部では約3割になっている。(道路管理者の調べ)

管路施設に起因した道路陥没事故の推移(国道交通省HP)
道路陥没深さによる陥没事故の割合(国土交通省HP)
管路施設に起因した陥没事故事例(国土交通省HP)

管路の点検実施状況
平成27年の下水道改正において維持修繕基準について下水道施設を対象に計画的な維持管理の実施を規定するとともに「下水の貯留その他の原因による腐食のおそれのある大きい下水施設」[1]については、5年に1回以上の頻度で点検を行うことが義務付けられている。
各下水道事業者による計画的な点検の実施により、下水道施設の状態の把握および異常の有無については、確認されている。

点検2巡目(R3年~R7年 5年間)点検実施及び実績(国土交通省HP)
(点検1巡目 H28年~R2年の5年間で実施されている)

点検実施累計が、令和5年度時点で52%であるが、随時、残りの48%については、点検計画がされている。

点検・調査の例(国土交通省HP)

下水道法では、腐食のおそれが高い下水道を対象に5年に1回以上の点検実施が義務付けられていると述べたが、管理する下水道事業者・自治体などが、点検の対象を決定し実施している。八潮市の道路陥没事故が発生した現場の管路は対象外であったが、埼玉県は管理するすべての下水道を5年に1回のペースで自主的に点検しており、当管路についても2021年に実施していた。

そうなると、4年前に実施していて異常がなかった管路が、短期間に損傷をしたのか、あるいは点検調査の方法や緊急度の判定の基準[2]を見直す時期にきているのかもしれない。また、管路の点検対象施設は、3,463kmであるが、標準耐用年数50年を経過した管路の延長は約4万kmに達しており、今後、増加する見込みである。標準耐用年数が経過した管路の点検・調査についても課題ではないだろうか。

点検結果および対策予定
腐食のおそれが大きい箇所に設置された管渠3,463kmのうち、令和5年度においては、670kmの点検を実施し、そのうち68km(約10%)で異常があった。
異常が確認された箇所の措置については、【緊急度Ⅰ】と判定された管渠8.1kmについては、令和5年度に3.6kmの対策が完了しており、残りは令和6年度に3.7km、令和7年度以降に0.8kmの対策を順次行う予定となっている。

おわりに 老朽化対策に思うこと
国土交通省では、2012年12月に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井版落下事故[3]を契機に、2013年を「社会資本メンテナンス元年」として、インフラの老朽化に係る取り組みを推進してきた。
点検・調査と診断に基づき、適切な時期に必要な対策を実施するとともに施設の状況や対策履歴などを記録し、活用していくというメンテナンスPDCA(計画、実行、評価、改善)を行い取り組んでいくことが、国民の安全安心につながる。維持管理に携わる人材確保や維持管理更新対策に必要な財源確保など課題は山積みであるが、国民の方々には、インフラの現状を理解していただき、維持管理・更新工事の重要性や今後の課題などを認識していただく必要がある。

まさに陥没事故から救出された5月2日に兵庫県神戸市でも「道路が陥没し、ガードレールが落ちている」と通報があったというニュースを耳にした。地中の給水管が破損したことが原因だった。一般市民からの通報で幸いにもケガ人は出なかった。いつも使っている道路が、「いつもと違う」に気付いたら通報することが本当に大事なことだと痛感した。道路の沈下やクラック、ポットホールであっても、市民からの通報で、未然に防ぐことができる。

公道の下には、50年という賞味期限のインフラが潜んでおり、常に安全ではないことの理解が必要だ。
そして、インフラを健全な状態に維持し、何も責任のない市民を巻き込むような悲惨な事故を、もう二度と起こしてはならない。公道を安全・安心して運転ができるように願うばかりだ。

働く人に
社会資本整備とインフラ更新工事に携わっている私たちは、尚更、道路の異変に注意を払う必要がある。市民を守る術を我々にも持っているんだから。


[1]暗渠部分を有する排水施設であって、コンクリート等腐食しやすい材料で造られている個所が対象である。対象は、下水の流路の勾配が著しく変化する箇所または下水の流路の高低差が著しい箇所。伏越室の壁その他多量の硫化水素の発生により腐食する恐れが大きい箇所など。


[2] 管路の緊急度の判定は、【緊急度Ⅰ】重度 速やかに措置が必要。【緊急度Ⅱ】中度 簡易な対応により必要な措置を5年未満まで延長できる。【緊急度Ⅲ】軽度 簡易な対応により必要な措置を5年以上に延長ができる。【緊急度Ⅰ~Ⅲ】と【劣化なし】の4段階の判定である。


[3] 2012年(平成24年)12月2日午前8時3分に山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線の笹子トンネルで天井板が約138メートルにわたり落下して、通行中の3台の車が下敷きになり9名が死亡した事故。原因は天井アンカーボルトの脱落であった。

追記:ニュースで見聞きしたことや国土交通省での資料を基にわかりやすく整理し、意見を述べましたが、読んでいただいた皆さんもインフラメンテナンスについて考えていただければ幸いです。


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