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シニアが“活躍し続ける人材”になるために──8つの講義と人事の羅針盤:いまのたかの組織ラジオ#237

 今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回は、第237回目「シニアが“活躍し続ける人材”になるための講義リストを作ってみた」でした。

 現代社会における重要なテーマである「シニア人材の活用」、より具体的にはシニア層がこれからの時代をいかにして生き生きと、そして積極的に働き続けていくかという課題について、熱のこもった議論が交わされました。最近、この界隈のテーマは私自身も大変関心が高いです。

 番組の大きな軸となったのは、今野氏が自身のブログで最近公開した、「シニアが活躍し続ける人材になるための講座」という仮定のテーマで構想した、全8回にわたるシリーズの骨子案です。これは誰かに依頼されたわけではなく、自発的に考察を深めた結果生まれたものですが、シニア層のキャリア継続を考える上で非常に示唆に富む内容となっています。

 提案された講座は、まるで連続ドラマのように8つのテーマで構成されており、それぞれがシニアが自己を再発見し、社会で新たな役割を担うためのステップを示唆しています。

  1. 「世の中の変化と人生100年時代のとらえ方」
     
    まず初めに、現代が技術革新や価値観の多様化など、急速な変化の時代にあることを再認識します。特に「人生100年時代」という言葉が示すのは、単に寿命が延びたということだけでなく、その長い期間をどう充実させて生きるかという問いです。この変化を理解し、受け入れることが自己変革への第一歩となります。

  2. 「キャリアの棚卸しと価値の再定義」
     次に、これまでの自身のキャリアを詳細に振り返り、「棚卸し」を行います。これは、 自分自身の持つ財産を再確認する作業にも似ており、培ってきたスキル、経験、知識を客観的に見つめ直します。そして、それらが現代においてどのような価値を持つのかを「再定義」することが求められます。

  3. 「若者と共に学ぶ」
     第3のステップとして、若い世代と積極的に関わり、共に学ぶ姿勢の重要性が説かれます。これは新しい知識や技術、現代的な視点を取り入れるだけでなく、世代間の相互理解を深め、新たな協調関係を築く機会ともなります。

  4. 「テクノロジー(DX)への対応」
     デジタル変革(DX)が社会のあらゆる側面に浸透する現代において、テクノロジーへの対応は避けて通れません。単に新しいツールを使えるようになるだけでなく、デジタル技術がもたらす変化の本質を理解し、積極的に活用していく意欲が重要です。

  5. 「人との関わり方のアップデート」
     年齢を重ねると、無意識のうちに固定的な人間関係やコミュニケーションスタイルに陥りがちです。ここでは、かつての立場や権威に固執せず、フラットな目線で多様な人々と新たな関係性を築くための「関わり方のアップデート」が促されます。

  6. 「新たな役割の開発と多様性」
     従来の役職や肩書にとらわれず、自身の経験や特性を活かせる新たな役割を能動的に「開発」していく視点が提示されます。番組内では、「伴走型アドバイザー」「プレイヤー」「メンター」「サポーター」など、固定観念に縛られない多様な役割の可能性が語られました。

  7. 「健康維持とモチベーション管理」
     長く活躍し続けるためには、心身の健康維持が不可欠です。そして、それ以上に重要となるのがモチベーションの管理、特に「自己肯定感」です。「自分はまだやれる」という確固たる自信を持つことが、前向きな活動の原動力となります。

  8. 「新たな価値提供へ」
     最終回では、これまでのステップで再確認・アップデートした自己の価値をエンジンに、再び社会への「新たな価値提供」へと踏み出すことを目指します。特に若い世代と共に、新しい形で世の中に貢献していく姿が理想として描かれます。

 この8回シリーズの構成について、高野氏は、見事な「起承転結」になっていると指摘しました。第1回が変化の認識という「起」、第2回が自己の現状認識という「承」、第3回から第6回までが具体的な自己変革のアクションプランという「転」、そして第7回がその行動を支える自己肯定感という「転の中の結論」、最後に第8回が新たなステージへの飛躍という「結」に至るという流れです。確かにそうです。

 後半では、この8つのテーマの中でも特に、第2回「キャリアの棚卸しと価値の再定義」と、それが密接に関連する第7回「健康維持とモチベーション管理(特に自己肯定感)」の持つ根源的な重要性について、さらに深い議論が展開されました。

 「キャリアの棚卸しと価値の再定義」においては、シニア層がしばしば直面する体力や気力の低下といった感覚とは裏腹に、長年培ってきた経験、知識、そして人を支え、導く力といった無形の資産が必ず存在すると強調されます。自身のキャリアにおける「輝ける瞬間」や「一皮むけた経験」、つまり成長のターニングポイントを具体的に思い出し、その際にどのような人々の支援や協力(巻き込み力の発揮)があったのかを分析することが、自身の本質的な強みを発見する上で極めて有効です。

 ただし、過去の成功体験が必ずしも現代にそのまま通用するわけではないため、その普遍性と時代性を冷静に見極め、現代の状況に合わせて協力者を見つける方法や人間関係の構築術(例えばSNSの活用など)をアップデートしていく必要性も指摘されました。この自己分析のプロセスは、他者との対話やコーチングを通じて行うことで、より客観的かつ深い気づきが得られるとも語られました。

 そして、この第2回で丹念に行う「価値の再定義」こそが、第7回のテーマである「自己肯定感」の確固たる基盤となるとしています。自らが持つ価値を明確に認識し、それを信じることができて初めて、「自分はまだ社会の役に立てる」という揺るぎない自信、すなわち自己肯定感が育まれるのです。この自己肯定感こそが、シニア層が変化の時代においても意欲を失わず、新たな挑戦を続けるための精神的な支柱となるわけです。

 最終盤には、この非常に重要な「自己肯定感」というテーマ(第7回)について、次回の放送でさらに掘り下げて話し合うことが決定。リスナーに対しては、今回の議論のベースとなった今野さんのブログ記事を参照し、8つのテーマの全体像を把握しながら聴くことで、より理解が深まるだろうと案内されています。今回の内容は、シニア世代だけでなく、これからのキャリアを考える全ての人々にとって、多くの示唆を与えてくれる内容といえるのではないでしょうか。

企業人事の立場からのさらなる考察

 今回の議論は、今後の日本企業における人材戦略、特に経験豊富なシニア層の活躍推進を考える上で、極めて実践的かつ重要な示唆に富んでいると感じます。少子高齢化が加速し、労働力人口の減少が深刻な経営課題となる中、シニア人材の戦力化は待ったなしの状況であり、その具体的な方策を模索する人事担当者にとって、今回の議論は多くのヒントを与えてくれます。

今野氏提案の「シニアが活躍し続けるための8回シリーズ講座」に対する人事としての考察

 この8回シリーズの講座案は、シニア社員向けのキャリア研修や意識改革プログラムを企画・設計する上で、非常に有効なフレームワークとなり得ると考えます。各テーマについて、人事としての具体的な取り組みや課題意識を述べさせていただきます。

  1. 「世の中の変化と人生100年時代のとらえ方」
     企業としても、社員一人ひとりが外部環境の変化(技術革新、市場のグローバル化、働き方の多様化など)を正しく認識し、キャリア自律の意識を持つことは不可欠です。人事としては、こうしたマクロトレンドに関する情報提供や、変化に対応するための学習機会(リカレント教育の奨励など)を提供し、社員の主体的なキャリア形成を支援する役割が求められます。特にシニア層には、これまでの経験だけに固執せず、新たな学びを通じて自己を変革していく必要性を理解してもらうことが重要です。

  2. 「キャリアの棚卸しと価値の再定義」
     これは人事におけるキャリアディベロップメントの中核とも言える部分です。定期的なキャリア面談の実施、自己分析ツールの提供、キャリアカウンセリングの機会などを通じて、社員が自身の強み、経験、価値観を客観的に把握し、言語化する支援を行います。
     重要なのは、過去の実績だけでなく、そこで培われたポータブルスキルやコンピテンシーを明らかにし、それが現在の組織や新たな業務でどのように活かせるのかを共に考えることです。「価値の再定義」は、社員のモチベーション向上だけでなく、適材適所の人員配置や新たな役割創出にも繋がります。

  3. 「若者と共に学ぶ」
     
    世代間の知識・スキルの相互移転は、組織全体の活性化に不可欠です。人事としては、リバースメンター制度の導入、世代混合のプロジェクトチーム編成、社内SNSやコラボレーションツールを活用したコミュニケーション促進など、具体的な施策を通じて、シニア層と若手層が自然に学び合える環境を構築する必要があります。シニア層には経験知を伝承する役割を、若手層には新しい技術や感性を共有する役割を期待し、互いに尊重し合える文化を醸成します。

  4. 「テクノロジー(DX)への対応」
     
    DX推進は全社的な課題であり、シニア層も例外ではありません。人事としては、デジタルリテラシー向上のための研修プログラム(個々のレベルに合わせた段階的なもの)の提供、新しいツール導入時の丁寧なサポート体制の構築、そして何よりもDXに対する心理的なハードルを下げるための啓発活動が求められます。シニア層が持つ業務知識とデジタル技術が融合することで、新たなイノベーションが生まれる可能性も期待できます。

  5. 「人との関わり方のアップデート」
     組織のフラット化や多様な働き方が進む中で、従来の階層的なコミュニケーションや一方的な指示・指導だけでは通用しなくなっています。特にシニア層には、コーチングスキルやフィードバックスキル、異文化理解(世代間ギャップも含む)に関する研修を提供し、相手に敬意を払い、双方向のコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことの重要性を理解してもらう必要があります。

  6. 「新たな役割の開発と多様性」
     
    定年延長や継続雇用制度の整備と共に、シニア層がその経験や専門性を活かせる多様な役割を企業側が主体的に開発していく必要があります。ポッドキャストで触れられていた「伴走型アドバイザー」「メンター」「専門職としてのプレイヤー」などは良い例です。人事としては、職務分析を通じて既存業務の中からシニアに適した業務を切り出す、あるいは新たなプロジェクトや特命業務を創設するなど、柔軟な発想で役割を設計し、個々の意欲や能力に応じた活躍の場を提供することが重要です。

  7. 「健康維持とモチベーション管理」
     
    社員の心身の健康は、生産性やエンゲージメントの基盤です。健康経営の視点から、健康診断の充実、運動機会の提供、メンタルヘルスケアのサポート体制強化は当然のこととして、シニア層に対しては特に、仕事を通じた自己効力感や貢献実感を得られるような働きかけがモチベーション維持に繋がります。「自己肯定感」を高めるためには、これまでの功績を正当に評価し、期待を伝え、責任ある仕事を任せること、そしてその成果をきちんと承認することが不可欠です。

  8. 「新たな価値提供へ」
     
    最終的に目指すのは、シニア層がこれまでの経験と新たに獲得した視点・スキルを融合させ、組織や社会に対して新たな価値を創造し続けることです。人事としては、彼らの挑戦を後押しし、その成果が正しく評価され、組織全体の成長に繋がるような仕組み(例えば、社内ベンチャー制度のシニア枠、新規事業提案制度など)を構築していくことが求められます。

今回取り上げられた「キャリアの棚卸しと価値の再定義」「自己肯定感」の重要性

 今回取り上げられた2点はシニア活躍推進の成否を分けるものでしょう。「キャリアの棚卸し」を丁寧に行い、本人が自身の「価値を再定義」できなければ、新しい役割への適応も、若手との協働も、DXへの挑戦も、どこか他人事になってしまう可能性があります。企業が提供する研修や面談が、この内省と自己理解のプロセスを真に支援できているか、常に問い続ける必要があります。

 そして、再定義された価値を「認識」することが、まさに「自己肯定感」の源泉となります。企業風土として、経験や年齢に関わらず個人の価値を尊重し、挑戦を奨励する文化が根付いていれば、シニア社員は自ずと「まだやれる」「貢献できる」という意識を持ちやすくなります。これはトップダウンのメッセージ発信と、現場のマネジメント層の意識改革が両輪となって進めるべき課題です。

まとめ

 シニア層を一律の「保護すべき対象」や「コスト」として捉えるのではなく、豊富な経験と知識、そして変化に対応する意欲を持った「貴重な戦略的人材」として認識を改める必要があります。そのためには、個々のキャリア自律を支援するきめ細やかな制度設計、多様な働き方や役割の提供、そして何よりも彼らの自己肯定感を高め、主体的な貢献意欲を引き出すような組織文化の醸成が急務です。今回の視点は、そうした人事戦略を具体的に検討・推進していく上で、大変有益な羅針盤となるものと感じました。私自身も、さらに追求したいと思います。


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