こんとあき(絵本)
たまたま立ち寄った書店の店頭に「地元の高校生が選ぶ絵本コーナー」がありました。店頭に絵本の特設コーナーがあることはめったにないと思いますが、そこに地元の高校生が選んだ絵本が並んでいるということも特別で、とてもいい企画だと感じました。
ちなみに、立ち寄った書店はイオングループの未来堂書店で、絵本の売り場面積も広く在庫も多いので、好きな書店のひとつです。
地元の高校生が選んだ絵本のなかに、林明子さん作の『こんとあき』がありました。なつかしくて手に取りました。『こんとあき』は絵に温かみがあり、登場人物の表情がとても豊かで、優しさと愛に包まれた名作です。
おばあちゃんが作ってくれたぬいぐるみのきつねが「こん」。おばあちゃんは遠くに住む孫の「あき」を見てもらうためにこんを手作りしました。あきが生まれてすぐのときから、こんはあきをずっと見守っています。
やがてあきは成長してこんよりも大きくなりますが、小さくてもこんは、あいかわず親のようにあきの面倒を見ます。でも、こんはぬいぐるみなので成長することはありません。かわいそうに古くなってボロボロになってしまいます。一方、あきは、幼い子供ゆえの弱さがあるけれど、いざというときは親のようにこんを支えます。
こんとあきはいつも一緒。
こんの体を「治し」に二人は遠いおばあちゃんのところへ電車で行くことになりました。電車のなかでも二人は仲良く座って窓の外に流れる山の景色を見ています。お腹がすいたのでこんが駅のホームで売っているお弁当を買いに電車を出ました。でも、こんは電車が走り出してもあきのところへ戻ってきません。
また、おばあちゃんの家の近くの広いさきゅうに着きました。するとこんは犬にさらわれてしまいます。あきは必死で探しますが、こんはどこにもいません。
いつでもでこでも一緒だったふたりの旅には、二度のお別れが待っていました。このお別れがとても切なくて、二人がどうなってしまうのか気になって、おはなしの世界にはまって出てこれなくなります。
「こんとあき」を子どもに読み聞かせると、何度も読んでとせがむ子どもがたくさんいるそうです。子どもにとっても目が離せない絵本になっているようです。
大人子ども関係なく心をつかんではなさないおはなしには、神話的な魅力があります。「こんとあき」には「別れと再会」の普遍的なテーマがあります。それは「死と蘇り」にも通じていて、誰もが心を動かされる物語性でもあるのです。
作者の林明子さんが、物語の普遍性を意識しておはなしを創作したかどうかはわかりませんが、1989年以来「こんとあき」が不朽の名作になっているのは、普遍的で奥深い物語性があるからだと、ぼくは思っています。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートありがとうございます!