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探偵のお茶会ー1杯目ー

 楓学校は最寄駅から電車で5駅のところにある。
 街の中に広い敷地があり、都会なのに大きな運動場がある。幼稚園から大学までの一貫校というのもあり莫大な資金があるのだろう。
 ただし防犯上の観点からから幼稚園と小学校、中学校と高校、大学は別と他にも敷地はあるみたいだ。
 中学と高校が同じ敷地内にはあるけれど校舎は、明確に分かれている。
 ここで三年間、勉強するのかと思うと少し怖気付いてしまう。
 勉強も大切だけど部活をやるために来たのだから、とりあえず置いておくこにした。

 入学式の前にクラス発表がされていた。体育館の外に大きな張り紙がされていて、そこに自分の名前が書いある。
 自分の名前を探すのは一苦労する人が多いと思うけれど、私の場合そこまで大変でははい。
 日本では佐藤さんや鈴木さん、高橋さんという名前が多い関係上。あ行、か行、ま行、や行、ら行といった名字の人は上の方か下の方を探すだけでいいから。
 私は小原だから比較的上だけ見ればいいから楽である。

 1組から8組まで全て探すはずだったけど、すぐに見つかった。

「一組か....」

 別に何組だろうが関係はないのだけれど、1組や8組は端になるから何かと頼まれることが多い印象がある。
 実際私が中学生の時には、学年主任はクラスのことを分ていないため、公演の片付けなどを任されて嫌だった。

 クラスを確認して受付に名前を伝えた。出席確認を終えてから自分のクラスに一度向かう。

 一年一組は2階の新館にある。
 一年生の教室は全て新館に集まっていて、1組と2組が2階。3組から7組が3階。8組は4階に位置している。他の教室があるためバラバラになっていた。
 使われていない教室があるのだからまとめてもいいと思うのだけど、学校もそれなりに理由があるのだろう。
 2、3年生になると旧館に移り、そちらには教室と職員室、会議室、保健室と、主に先生が使う教室が目立つ。
 1組の教室に入ると、黒板には新入生歓迎のメッセージが書いてある。黒板のメッセージなどは、上級生が描くことからクラスによっては凄く上手い絵を描いてあることもあるが、私のクラスはシンプルで華やかな感じになっていた。
 下手に絵を描いてあると恥ずかしさがあるので、こういったシンプルな方が好きだから少し嬉しくなった。
 教卓には紙が置いてあり、自分の名前が書かれている指定の席に着く。
 クラスでは何人かがグループになって会話をしているが、おそらく内部受験者だろう。私も早速グループに「おはよう!」とか「よろしくね!」と会話に混じれば良いのだけれど、盛り上がってるところに入る勇気はなかった。
 暫く経って担任の先生が入ってきて、そのままHRが始まる。先生の挨拶の後生徒の自己紹介と、ごくありふれた入学式当時の流れになり、体育館に移動していく。

 入学式は、どこでもある、良くテレビで見る、ネットで調べると書いてある、そんな普通の流れで進んでいき新入生挨拶に移っていく。
 式というのは存外暇なもので、ワクワクするものでもない。
 学生は一つの締めくくりの意味があるみたいに言われることが多いが、どちらかと言えば教師のためや教師が生徒にいう口実に思えてならない。

「次に新入生代表の挨拶です。新入生代表、千本木美桜さんお願いします。」

「はい!」

 新入生代表が登壇していく。楓高校で入学式のテストで一位の人が基本的には挨拶を行うことになっているので、千本木さんが今年の首席ということになる。
 内部受験者は内部用のテストが存在して、その点数と比較するため一概に一番賢いとはならない。
 しかし大きくは外さないためトップ5には入る実力者ということにはなる。

 千本木さんが登壇し、祝辞を読見上げようと紙を広げた時、なぜか固まっていた。
 理由はわからないけど時間にして数分にも思える静寂の時間が続いた後に話し始めた。
 在校生、新入生ともにざわつきがあったが、そこまで時間は経ってなかったのか、何もなかったかのように、挨拶が始まり静まり返る。

 そして彼女は新入生代表の挨拶を終えて紙を戻して降壇していく。
 降りてくる表情からは何も分からなかった。

 (何困ったことがあったのだろうか?)

 私から見える範囲では、何かあったようには見えなかった。どこからか見える範囲にいた人は何かわかったのだろうか?
 そんな挨拶があったことから、何があったのか考えているうちに入学式はいつの間にか終わっていた。
 結局、教室に戻り先生の話などがあったと思うが私は上の空だった。

 気がつけば周りには誰もいなくて私一人になっていた。いつまで考えていたのだろう?
 代表の千本木さんがもし、内部受験者ならいじめの可能性もある、外部受験者なら、何かが書かれていても加害者はその反応を見るためだけに、ここに入学したとも考えられない。
 虐めでないのなら告白とか?それも外部受験者なら態々手の込んだことをしているし、卒業式に告白の方がいいと思う。さらに先ほどの態々入学とも同じ理屈でないだろう。
 悩みながら鞄を持って教室から出ると、2組はもうHRが終わっていてそこには、新入生代表の1人だけが残っていて何かを考えている様子だった。

 その様子は焦っているようではなかったので、やっぱり告白だったかな?と思った。

 そう思って私は通り過ぎようとしたが、入学式に告白という青春を見たくなり廊下に止まっていると、新入生代表と目が合った。

「何か用?」
「あっ、いえ、別に私は勝手に…」
「勝手に?」
「かっ、勝手な、勝手なことで失礼かも知れませんが入学式のことについて、聞いても良いですか?」

 言い訳を考えようとしたのに、ついさっきまで自分勝手に考えたことから言葉を選ばずに、口から出てしまった。

「ああ、あの時ね。恥ずかしいところを見せてごめんね。ちょっと気になることを思い出しただけで...」

 何故か誤魔化してる。やっぱり告白でもされたのかな?
 それなら少し直接聞いても良いと思った。

「告白でもされました?」

 彼女は目を見開いて驚いた顔をした後、表情を戻して口角を上げた。

「ふふっ。面白いことを聞くのね。何故そう思ったのか聞いてもいい?」

 驚いた顔とは変わって何故その結論に至ったのかを私に聞いてきた。
 ただの思いつきと、そうだったら面白いなって思ったから。と言うにはあまりにも失礼なので言葉を考えた。

「勘?っと言ったら信じますか?」

 結局言い訳を考えれるほどの頭は私には持ち合わせていなかったため、本来思っていたことを勘という実に誤魔化すのが下手な言葉で濁した。

「勘、ですか。面白い答えですね。その勘と言うのをもう少し詳しく聞いても良い?」

 言葉選びの下手さを笑われた気がするが、何故か彼女は私の考えを詳しく知ろうとしていた。
 私も彼女が本当に告白されたか気になるから答えるしかなかった。

「脅迫でしたら、もう少し慌てると思います。そして悪戯ならそもそも紙を隠すと思います」

「なるほど…」

 彼女はその言葉を聞いてい深く考えるように顎に手を当てていた。

「それが違うなら、何か悪戯ではなくてプラス的な方向に図ったと考えて。それなら告白かな?っと思っただけです」

「飛躍しすぎな気もするけど、面白い発想ね」

 その言葉に私は焦ってしまった。告白は単なる私がそうだと面白いかな?っと思った結果だから他にも誰かが友達になってくださいなど選択肢は多かったからだ。

「た、確かに、他の選択肢もありますが、あくまで私がそう思っただけですので」

 慌てて訂正をしようとしたけど、彼女は無言でカバンを開けて答辞を入れていた紙を取り出して封を開けていく。
 そこには紙が入っていて、それを開けた。

「うそ...」

 私はその言葉しか出なかった。
 そこにあったのは真っ白な紙が一枚何も書かれていなかった。

「では、あなたの予想が正しいのならこれはどちらかと言うと悪戯だね」

 彼女は笑って誤魔化そうとしていたけど、その顔には翳りがあるよに見えた。
 けど私はその紙には違和感がある。やはりわざわざ悪戯なら隠すのが良い。なくても焦る。結果は同じだ。
 白紙で結果が変わることは一つだけだ。他人の目が違うと言うことだ。
 成績優秀と思われる彼女なら暗記もしていれば言葉に困ることはない。
 だけどこの場で変わることは彼女の気持ちが変わると言うことが大きい。

「でも、もしかしたら......」

「水知らずの人を庇うのね。嬉しいけど、事実は事実だから....ありがとう。気持ちだけ受け取っておくわ」

 だけど何か違和感がある。悪戯にしても彼女のことを知っている人なら隠したほうがいい。何故わざわざ反応を見るような真似をしたのか。私には分からない。
 寧ろ相手の表情やその場の焦りを見て楽しんでいたのだろうか。
 そうなると相手の思惑は失敗に終わっていることになるけど。

 沈黙が続きその場の、このまま何もなかったかのように家に帰る、そんな雰囲気に耐えれなかった、私は口を開いた。

「わ、私、外部受験者なんです。こんなこと急にあれですが友達になってください。まだ友達もいないですし、明日も明後日も明明後日も学校にきて私とたまにはお話ししましょう。」

 励ましの言葉なんて見つからず、友達としてこれからも仲良くしましょう。そういって元気付けるしか私にはできなかった。
 自分のミスもあるが彼女自身もそのことを分かっていていたと思う。そうでなければ私たちよりも先に話が終わっていて誰もいない教室に残る必要はないから。
 これが私の精一杯今できることだ。

「ええ、勿論よろしくね。」

 彼女は笑ってそう答えていた。
 精一杯の演技かも知れなかったけど。お互いにそう言うことしかできなかったのは悲しいことだと思った。
 そのあと知ったのだけれど、彼女も外部受験者だった。

 白紙が入っていた。態々紙を入れていた。隠すことも可能なはずなのに、あるように見せかける必要を取った人がいる。
 それと白紙といえば、白紙に戻すって言葉がある。
 仮に今回は言葉の意味を探すのなら、わざわざ白紙に戻すのは何を戻すのだろう。
 そして戻すなら何かが書かれていて戻す必要がある。
 新入生挨拶の文字が入っていた、そこから白紙に戻すなら。誰が白紙に戻したかったのだろうか。

「ミナ何悩んでいるの?入学式だったのに丸でテスト期間に答えが分からなくて考え込んでるみたい…」

 帰ってからもずっと考え事をして、ママに心配かけることになった。

「入学式でちょっと変わった事があって…」

「どんな事があっの?」

 そう言われて今日あった出来事を、ママに話した。

「そうね。じゃあ炙り出してでもやってみたら?そのお友達から許可取れるか分からないけど。う〜ん、でも今回は炙り出しでも、水を使った方がいいのかな?水字の可能性もあるかな?」

 ママはすぐに結論を出したが、なぜか困惑した顔をしていた。

「そんな単純なことする?」
「学生だものそれぐらいで十分だと思うわよ。もしかしたらブラックライトの可能性もあるけど」

「ブラックライト?」

「知らない?ブラックライトペンで文字書いたりして。今は売ってないのかしら?」

 私はブンブンと横に振った。そんな商品があるのを初めて知ったから。

「後炙り出しした後にブラックライト当てても見えなくなる可能性もあるから順序的にもこの順番の方がいいと思うわよ」

 関心するしか私はなかった。そもそも炙り出しと言う方法を考えはしたけれど、そんなことをするかと言うのが残っていたからだ。
 答辞の紙が白紙で炙り出しと考える方が変わってると思う。白紙が関係すると思うのが順当な考え方だ。
それをママは何故まず炙り出しを考えたのだろうかと疑問に思った。

「なんでまず炙り出しするって思ったのですか?」

「なんでって....だって白紙に関係するで白紙に戻すだとして考えるよりかはやれることをやった上で何もなかったら白紙という意味を考えた方が早いでしょ。物事は行動しながら考えるのよ。行動した結果が答えに繋がったり、別の何かに繋がることもあるのだから。」

 ママの考えは行き当たりばったりの気がしてならなかったけど、何故かそれが一番納得のいく自分に少し苛立ちを覚えた。

「まあ炙り出しさせてって頼んでも今日友達になった人に、はいそうですか。って渡してくれる人はいないと思うから、今回の件は諦めた方がいいと思うわよ」

「そう、ですね…」

 ママは諦めることを提案してきたけど、私はどこかのタイミングでこのことについて教えてみようと思っていた。
 友達でいたいけど、悪意のあることをしているのならそれを黙って見過ごすのは私は何か違うと思うから。

 だから次の日私はそのことを彼女に伝えた。

「……」

「すみません。やっぱりこんなことしたくないですよね」

 失敗した。美桜さんは俯向き、暗い顔をした。
 ママが言ってたように提案すべきだはなかった。

「ううん、それで何かわかるのなら試してもいい、けど....」

 煮え切らない返事だったが、その反応の方が正しいのかも知れない。答えが分かるからと言ってそれにすぐ飛び込む方が珍しい、漫画やドラマとは現実は違うのだから。

 紙が駄目になる可能性があるのはやめて、ブラックライトだけでも試してみる?と提案した。
 美桜さんはやや不満があるような表情だったが、首を縦に振った。
 本人が嫌がることはできないからもしこれで何もなければキッパリと諦めることにした。

 何か分かるかも知れなのにこの場の雰囲気は暗いままだった。

「私の家近いから帰り寄ってみる?」

「ううん」

 彼女は首を横に振った。

「祝辞の紙持っていないから」

 こんな単純なことにも気付かないのかと。悲しくなった。
 私に探偵役は向いてないなっと。

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