エンジニアの独り言 ~ 仕事はできるが、人間としてはどうなんだ? ~
アマチュア小説家の相川ヒゲと申します。
私は普段、システムエンジニアとして働いています。
主なお仕事は、スマホやタブレットのアプリを作ること。
ストアで一般向けに配信されているアプリではなく、企業向けや特定の施設の中で使われるようなシステムを開発することが多いです。
とある会社で正社員をしていますが、働き方は「客先常駐」というスタイルをとっています。
※客先常駐とは? →所属する企業ではなく、クライアント(顧客)のオフィスに実際に赴いて席を置き、プロジェクト単位や期間限定で業務を行う働き方のことです。
現在の現場には、かれこれ10年くらいお世話になっています。
契約形態やプロジェクトの区切りで、数ヶ月ごとに違う企業へ次々と移っていくエンジニアも多い世界ですが、ありがたいことに現在のクライアント先では長く気に入っていただいているようで、ずっと席を置かせてもらっています。
大体3ヶ月〜半年ほどのプロジェクトをいくつも経験し、納品が終わったら次の開発へ……という感じで、日々キーボードを叩いています。
そんな私が、昨年あるプロジェクトに従事していたときのお話です。
作業自体は既存のスマホアプリの仕様変更や保守作業でした。
いつも通りの慣れた仕事だったのですが、たまたま同じチームになったメンバーの中に、1人だけ「ものすごく強烈な技術者」がいました。
彼のことは仮に「Pさん」としましょう。
Pさんは30代半ばから後半とお見受けする、フリーランスのエンジニアでした。
技術や知識はピカイチで、残業も進んで行うほど仕事熱心な方だったのですが、こだわりがとにかく強く、周りへの配慮や社会人としての礼儀に少し欠けるところがあったのです。
具体的には、以下のような感じでした。
〇 言葉遣いが常に攻撃的
相手の話にかぶせて遮ったり、頭ごなしに否定することがデフォルト。受け答えも「ふーん」「まぁいいですけど」といった感じで、チャットの文字越しでもトゲが伝わってくるタイプです。
〇 チームのルールをマイルールで無視する
毎日定例のミーティングがあるのですが、Pさん自身が「必要ない」と判断すると、平気で遅刻したりスルーしたりします。
その割に、「ミーティングは15分で終わらせる」というルールがあると、リーダーがまだ話している最中でも「15分過ぎてるんで、もう終わりでいいんじゃないですか?」と容赦なく口を挟みます。
〇 若いエンジニアへの容赦ない詰め
各自のコードをレビューする際、Pさんの指摘に対して、経験数年の若いエンジニアが「〜という意図があって、このように実装しました」と返答したことがありました。するとPさんは、「知ったかぶりで間違った知識をひけらかさないでもらいたいんですけど」と、これまた頭ごなしに決めつけるような言い方で一蹴してしまったのです。
(その子は知ったかぶりをしたわけではなく、単純に少し知識が不足していただけでした)
〇 謎の深夜稼働
「残業は原則禁止。定時内に収まるタスク量で」とチーム全体に指示が出ていたにもかかわらず、Pさんは「昼間は体調が悪いから」という理由で、夜中にひとりで作業を進めていました(レビューコメントのタイムスタンプで一目瞭然です)。
チームリーダーが「体調が悪いなら休んで翌日に回すか、他の人に振るから無理しないで」と優しく伝えても、どこ吹く風という様子でした。
他にも細かいエピソードを挙げればキリがないのですが、書ききれないのでこの辺にしておきます(笑)。
当時のチームリーダーがPさんより年下で、とても大人しいタイプだったことも、彼の態度をエスカレートさせる原因になっていたのかもしれません。
当時はリモートワークだったため、直接顔を合わせることはありませんでしたが、私とPさんは担当する開発箇所が近かったため、2人で密に話を詰めなければならない機会が多くありました。
技術的に言っていることは正論だったりするのですが、常にこちらを否定してマウントをとってくるような態度なので、画面越しに会話をするだけで精神的なエネルギーをすさまじく消耗しました。
「リーダーが何も言わないのに、同じ立場の私が注意するのも角が立つな……」と、思うところがあってもグッと飲み込む日々。
チーム内には私以外にもPさんの振る舞いに頭を悩ませている人が多く、ミーティングの空気はいつもどこかギスギスしていました。
結局、そのプロジェクト自体が諸事情で縮小することになり、私もPさんも半年ほどでメンバーから外れることになりました。
その後はお会いしていませんが、思い返しても、あの半年間はなかなかのストレスフルな日々でした(笑)。
──さて、ここでタイトルにもした「人間としてはどうなんだ?」という疑問についてです。
一緒に仕事をしている最中や、そこから離れてしばらくの間は、私も彼のことを「技術はあっても人間性には難がある」「二度と一緒に仕事はしたくないな」とシンプルに嫌悪していました。
けれど、ふと「人間としてどうなのか」の「人間として」って、そもそもどういう意味なんだろう?と考え、調べてみたのです。
AIに聞いてみたところ、面白い答えが返ってきました。
「人間として」とは、単なる生物としての「ヒト」を超え、道徳的な良識、思いやり、誠実さ、そして人間らしい感情や尊厳を持って振る舞うあり方を指します。
一般的には主に、「倫理観と道徳」「他者への思いやり」「人間性の成長(謙虚さや人格の成熟)」の3つの要素で構成されていることが多いようです。
この基準に照らし合わせて、改めて当時のPさんを冷静に考えてみました。
確かに、彼は「他者への思いやり」にはだいぶ欠けていたし、周囲への謙虚さといった「人格的な成熟」という点では物足りない部分があったかもしれません。
しかしその反面、仕事には誰よりも熱心で、幅広い知識で常に「仕様通りの正しい回答」を突き詰めようとしていたことも確かです。
決して誰かを騙そうとしたり、不正を働いたりといった、社会的な「倫理観」を大きく踏み外していたわけではありません。
そう考えると、「人間としてどうなのか」という、人生の根底を否定するような大きな枠組みで彼を非難するのは、少し大げさだったのかもしれないな、と思えてきたのです。
そもそも、「道徳的な良識」や「気遣い」のボーダーラインは、受け取る側の主観によっても変わるもの。
Pさんのあの極端なまでの「技術第一主義」や妥協のなさを、むしろ「プロとして頼もしい」と評価する職場や立場の人も、世界のどこかにはいるはずです。
……まぁ、少なくとも私個人にとっては、もう二度と一緒に仕事をしたくない相手であることには変わりありません(笑)
けれど、少し時間が経ってからこうして振り返ってみると、あのギスギスした半年間も、私にとっては「とても良い経験」だったなとしみじみ感じています。
私はアマチュアとして小説を書いている身です。
自分だけの脳内からは逆立ちしても出てこないような、極端な行動原理や尖った考え方を持つリアルな人物というのは、創作においてものすごく貴重な生きた資料になります。
現世の業や人間のドロドロした未練を描くホラーミステリーを書いている身としては、彼のような「悪意はないのに周囲を猛烈にピリつかせる人物」は、キャラクターの造形として非常に魅力的です。
もしかしたら遠くない未来、私の連載している小説の中に、Pさんのエッセンスをたっぷりと含んだキャラクターが登場するかもしれません。
その時はぜひ、「あ、こいつが例の……!」とニヤリとしながら読んでいただければ幸いです。
アマチュア小説家をしています。
小説家になろう、Tales等各小説サイトにて小説を連載中です。
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