[1] ショパン14歳、夏の手紙を読む
都会っ子のショパンが、田舎のシャファルニャで夏休みを過ごしています。ワルシャワの両親に宛てた手紙を紹介します。(※「全書簡」を参考に、原文から意訳しました)
この手紙は一読しただけではわからないことだらけです。謎を読み解いて、ショパンの創作マンガを描こうと思いました。
1824年夏の手紙(8/10付)(前半)
お父さんお母さんへ
ぼくは元気です。毎日とても楽しいです。
本を読んだり勉強したりはせず、遊んで絵を描いて走り回り、新鮮な空気を吸っています。昨日は馬車に乗って遠出し、灰色の「フランス語の過去分詞(=要するに「馬」)」に乗って畑を突っ切りました。
食欲も旺盛で太ってきました。しかしぼくの痩せたお腹を完全に満足させるためには必要なのは「許可(!)」それと「自由」です!
主治医のジェラルド先生は「ライ麦パンは酸っぱいから食べてはいけない」とおっしゃいました。でも、それはワルシャワのパンに限ったことで、田舎の田舎パンには適用されないと思うのです。だってシャファルニャの田舎パンは、全然酸っぱくないんです。
黒いパンと白いパン。田舎パンは粗い粉で、ロールパンはきめが細かい。ジェラルド先生はきっと後者の方が美味しいと思ってるんですよ。でもシャファルニャの田舎パンを食べれば、考えを改めると思います。自分が良いと思うものを患者にも勧める、それがお医者さまというものですから。
だからですね。ワルシャワは街で、シャファルニャは村なんですよ。ワルシャワではみんながロールパンを食べますが、シャファルニャでは僕だけ。僕のために一人だけロールパンが用意されるのです。
僕も田舎パンが食べたい!
ママはどうして許可してくれないの?田舎パンを食べて良いと、はっきり言ってほしいです。
ジェラルド先生がワルシャワにいるのなら、僕は夫人に頼んでパンを一箱郵送しますよ!先生がもしパンを一口かじれば、すぐにでも僕に許可をくれるはず!
(実はルドヴィカさんとジョゼファさんからはすでに許可をもらいました。でも、ジェラルド先生やお母さんからの許可も必要ですよね?)
僕がこれほどまでに田舎パンを食べたいという気持ち、分かってくれますか?この希望が一刻も早くかなえられることを願いつつ、この件に関する僕の論考を終えます。
「全書簡」を参考に、ポーランド語の原文から翻訳・意訳しました。
https://chopin.nifc.pl/pl/chopin/list/416_do-rodzicow-w-warszawie

初めての夏休み、初めて家族と離れて田舎で過ごす1か月、初めて家族に出す長い手紙。
ショパンは神童と言われる天才少年で、ポーランドの支配者ロシア皇弟や有力貴族の前で演奏するほどの有名人でした。
その彼が、家族にはパン、パン、パン。パンの話ばかりです。意外な一面を見せるギャップを見せます。
1824年夏の手紙(8/10付)(後半)
手紙の後半は、ショパンの滞在先・シャファルニャにあるジェバノフスキ家のパーティに来たお客さまの報告です。
それから薬の話。音楽の話も少しだけあります。
土曜日、ジェバノフスキ邸には多くのお客さんが訪れました。(大勢の名前が続く・略)
錠剤は定期的に飲んでいるし、薬草の煎じ薬は毎日1カップの半分を飲んでます。食事の時は何も飲まないです。甘口ワインを少しと、果物はよく熟れて、ルドヴィカおばさんの許可を得たものだけ食べてます。
お父さんがシャファルニャに来るのを楽しみに待ってます。お願いがあるのですが、ブジェジーナ(楽譜店)でリース編曲の連弾用の楽譜「ムーアの歌の変奏曲」を買って持って来てくださいませんか。ジェヴァノフスカ夫人と連弾がしたいので。
それとね、処方箋を持ってきてください。それか薬の瓶。
というのもぼくの計算では、薬は27日までなのです。
あとは…それくらいかな。
お父さんお母さんの体の調子を聞いてませんでした。
お父さんはもう完全によくなったと思います。
ルトカ、イザベルカ、エミルカ、ズージャ、デケルトさん、レシュチンスカさん、キリギリスとホメントフスキ、ジヴニー先生、シーベルト先生、ヴォイチツキ先生によろしくお伝えください。
F.F.ショパン
ジェバノフスキ家の方々も、みなさまにくれぐれもよろしくとおっしゃってました。
[1-補足]「ショパンの手紙」を原文で読みたい人に
できるだけ一次資料に触れてみたい。今回ポーランド語の手紙を読むために機械翻訳を使いました。
[2]天才音楽家のイメージとは関係のない、普通の生活のエピソードを知りたい
この「パンが食べたい」という手紙は、ショパンの伝記で紹介されることはほとんどありません。この後書かれた『シャファルニャ通信』というジョークを交えた書簡が有名ですし、天才音楽家のイメージとは関係のない普通の子どものエピソードが多いからでしょうか。
しかし、私はこの手紙を非常に興味深く感じました。
神童ではないショパンの一面。
なぜ「パンが食べたいの」?
なぜ薬を飲んでいるの?
ショパンは馬に乗れないの?
なぜ1ヶ月以上も友だちの家に泊まれるの?
そんな疑問を持って、次はショパンの家族と生活を調べようと思います。
マガジンメニュー
「ショパンの手紙に見る少年時代」
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたサポートは資料購入や画材代、図書館までの電車代に使わせていただきます!少額でも活動に支援していただけると本当にありがたいです!