1520ルーメンの暗い常盤 ⑫
暗い山
山に続く公道が途切れている場所に、自転車が倒れていた。
カラカラ……。
まだ止まりきっていない車輪が、ゆっくり回っている。
「常盤、いる?」
念のため声を出してみる。返事はなく、それが常盤が山へ入っていったことを示していた。
常盤の家から走ってきて着いたこの山は、軽い登山もできるし、キャンプエリアもあるわりと人気な場所。わざわざ遠くから来る人もいて、オンシーズンの週末なら、夜でも人の気配があるような場所だ。
でも、平日の今日は違う。入り口近くの管理棟にも明かりはなく、辺りはひっそりとしていた。
18時半を過ぎて、日はもう落ちている。
夏に何度かキャンプに来た時とは、まるで別の場所みたいだった。人の声も、明かりも、賑わいもない。
数メートル後ろの街灯の光が届かない山の奥は、本当に真っ暗だった。目を凝らしても、何も見えない。頼れるのは、自分の電球がかすかに照らす足元だけだった。
暗闇と、静寂。……こわい。
常盤は、キャンプ場へ続く道に行ったんだろうか。
それとも、もっと山奥へ続く登山道の方に?どっちにしても、この暗闇の中じゃ危険だ。
キャンプサイトの近くには川もあるし、登山道の方も落下防止の柵がない場所が多い。この辺りは熊の目撃情報こそ少ないけど、それだって絶対じゃない。
川に流される常盤。山道から落下する常盤。熊に襲われる常盤。
そんなものを想像して、ゾッとした。
……正子おばさんに連絡しよう。
学校に持っていくのは禁止されているけど、鞄の奥に忍ばせていた、電源を切ったスマホを取り出して電源をつける。震える手で、正子おばさんを呼び出した。
「あ、優太? どうした~?」
すぐに出てくれた正子おばさんの呑気な声に、泣きそうになるのを堪えながら話す。
「あ、お、おばさんっ! 電球のことなんだけど……僕、言ってなかったけど……!」
「うん?」
「前に、おばあちゃんのお見舞い行った時。電球が点滅してるの見たんだ……! それで、その次の日に、おばあちゃん亡くなって……!」
息がうまく吸えない。焦って、言葉がぐちゃぐちゃになる。
「それで、今日、常盤の電球も点滅してて……!」
一瞬で、正子おばさんの声色が変わった。
「今、どこにいるの?」
「橋ノ下キャンプ場のある山……」
「え? どうしてそんな所に?」
「常盤、山に入ってっちゃって……! 常盤を追いかけてきたんだけど、本当に真っ暗で、どうしたらいいか分かんなくて……」
自分でも情けないくらい、声が震えていた。
「分かった。通報も連絡も、おばさんが全部やるから」
「……う、うん」
「優太はいったん家に……」
「帰れないよ! ここにいる」
「……って言うわよね。優太のスマホ、GPSついてるよね?」
「うん……」
「じゃあ、とにかくそこで待機。絶対に山に入らないこと。いい? もしかしたら少し時間かかっちゃうかもしれないけど、絶対だからね!」
正子おばさんは、心配そうにそう言って、電話は切れた。
