バラの花咲く庭に佇みて
昔からバラの花が大好きだった。
それもピンク。
貰うなら、ピンクのバラとカスミソウ。それにピンクのチューリップをあわせた花束を。
母が家を建てて引っ越した時。
自分の部屋に最初に飾ったのは、やっぱりピンクのバラだった。
けれど、西日のさす部屋が合わないのか、なんなのか。どれだけ水切りしても花瓶のバラは翌朝にはくったりとうなだれる。
チューリップは大丈夫。カスミソウも、雪柳だって大丈夫。
でも、バラはだめ。
当時、勤め先の関係で花屋が身近だった私は、毎週のように仕事帰りに花を買っては部屋に生けていた。フラワーデザインを習っていたので、切り花は常に私のそばにあった。
けれど。
とにかくバラの花だけが、私の部屋では咲いてくれなかった。
何度生けても水あげしなおしても、翌日にはしおれてしまうので、私は次第にバラを買わなくなった。
きれいに咲いて散るまで愛でてもらうんだよと、大切に育てられ出荷されたバラを、たった一晩でしおれさせてしまうのが、心に痛かった。
やがて仕事を変えて花屋との縁がなくなり、フラワーデザインもやめた私は、バラどころか花を飾ること自体から遠ざかった。
あれから二十数年。
人から贈られた花は飾っても、自分から花を買わなくなった私がいま、庭中でバラの花を咲かせている。
それはひとえに、夫がバラの花咲く庭のある家を買ったからだ。
園芸どころか、土いじりすらしたことがない。興味もなければ、力も体力もない。虫を見たら悲鳴をあげる。
そんな私が『とりあえず枯らさない』を目標に手入れをはじめた時、庭にあったのはアンジェラのアーチと白バラが2株、赤バラが1株に、ノイバラが1株。
それが十三年を経て、地植え18品種20株、鉢植えが16品種32鉢にもなった。
5月の庭は華やかだ。
朱色のカクテルが一番乗りで開花すると、少しずつ日にちをずらしながら、先を争うようにバラの花が咲きほころんでいく。
白、桜色に濃いピンク、オレンジに藤紫、黒と見紛うばかりに濃い紅、ベルベットみたいな紅色、純白の花びらに薄紫のふちどり。
色も花姿も様々なバラの花が競いあう中、最後に咲くのは、アーチを覆い隠すほどのアンジェラ。
我が家のシンボルローズだ。
切り花のバラを散々しおれさせてきた私が、満開のバラに囲まれて暮らす。
きれいに咲いて散るまで存分に愛でて、そのあとも世話を続ける。
次に花咲く季節を楽しみにしながら。
(992文字)

三條凛花さんの企画に参加しています。
久しぶりに文字数制限のある文章を書きました。
1400字くらいから推敲して1000字に収めるのが、なかなか大変でした。
楽しかったです。
【プロフィール】
ひかり
バラと桜と航空機をこよなく愛する、とっておき家事ラボ1期生。
