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彼の好きなものが楽しくない


「ふあーーふ……っ……」

これ以上ないぐらい大きな欠伸をして、テレビを消す。

つまんない。

観ていたのはリアルタイムの番組ではなく、スマホからキャストしたテレビドラマ。
見逃し配信サービスで1週間は再放送されている。
いつも観ていない番組だったから、助かった。

でも……

彼が面白いよと言ったから観たけれど、つまらなかった。

違う。
『好みじゃなかった』ってのが正しい。たぶん。


面白い面白くないは人それぞれ。
他人の好みを否定しちゃいけない。


オススメされて観たお笑い番組も、なにが面白いのか全然わからなくて、夜中まで収録につきあっているらしい観覧客たちがどうして笑っているのか、まるで理解できなかった。

読んでるって小耳に挟んだベストセラー本も買ってみた。
でも、最初の数ページで挫折した。
なんとか賞を獲ったベストセラーなんだから面白いハズ。だけど、内容に没入できなかった。
面白い本なら、寝食を忘れてむさぼり読んじゃうのに。

なんでかな。

あのひとが、こんなにも好きなのに。

彼が面白いって話すものが、ひとつもそう思えない。

姿を目にしただけで胸がドキドキする。
声を聞いたら、頬がぱあっと熱くなって耳まで火照る。きっと恥ずかしいぐらいに赤くなってるだろう。

ちょっと低めの声が好き。 
黒髪を短く刈り込んだ、精悍な顔つき。
陸上部で毎日外で練習しているから、日に焼けて逞しく筋肉のついた身体。
小さな私よりずっと背が高い。
運動が苦手で、文化部な私とは正反対。
学年をこえて、人気者な彼。

あ、走ってる。
カッコいい。

教室の窓から見ているだけ。
それだけで十分だったけど。

彼が好きなものを共有できたら、もう少し近づけるかな。

そんな風に思って、彼を応援するグループに入ってみた。
そこで教えたもらった『彼が好きなもの』を試してみたけど、どれもわたしの好みじゃなくて。

なんで?

彼を好きな気持ちと、彼の好きなものを面白いと感じる心は別モノなの?

それとも、本当に好きじゃないってこと?

え、まって。
"本当"ってなに?

ドキドキするこの気持ちはウソじゃないよ。ホンモノだよ。

だって、寝ても覚めても彼の姿がチラついて、勉強に集中できない。中間テストの成績がめっちゃ落ちて、怒られた。

これが恋じゃなかったら、なに?
もしかして病気?

んなわけないでしょ。

好きなものが同じじゃないと、恋人になれない?そんなことないよね。
でも、同じほうがきっと、一緒にいてもたくさん楽しいハズ。



「ふわぁ……」

ダメだ、眠いや。

考えたって、しょうがない。

もう寝よう。

窓から彼を見てるだけで幸せ。

彼が好きなものが楽しくなくても気にしない、気にしない。



(1075字)


#片想い文芸部
#33日ライラン


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