心にきく絵本「ラチとらいおん」
「心にきく絵本」のご紹介
心理学やカウンセリングのテーマを絡めて、ちょっと元気が出たり、勇気が出たり、癒されたり学んだりできるような心に「効く」絵本をご紹介を何冊かやってみようと思います。
「きく」は「訊く」または「聴く」とも書きます。心の声を確かめて、じっくり味わってみる、そういう意味も込めて「心にきく絵本」としてみました。
1冊目は、マレーク・ベロニカ (文・絵),、とくなが やすもと (訳)「ラチとらいおん」福音館書店です。
あらすじ
ラチは犬や暗がりや友だちが怖くて、世界一の「よわむし」です。飛行士になりたいけれど、よわむしの飛行士なんているの疑問です。絵本の中にらいおんの絵を見つけ、「ぼくに、こんならいおんがいたら、なんにもこわくないんだけどなぁ」と言います。すると、ある朝、絵のらいおんとは似ていないけれど、小さな赤いらいおんがあらわれました。
らいおんはラチに強くなるための方法を教えてくれました。そしてラチと一緒に怖いものに一つずつ立ち向かってくれます。
けれどもふと気が付くとらいおんはいなくなっていて、家にはらいおんからの手紙が置いてありました。そこには…
シンプルな文章でとても読みやすい絵本です。絵はとてもユーモラスでとくにらいおんが愛らしいです。今回はこの絵本を通して、怖さを克服することについて考えてみたいと思います。
怖いものが多いとやりたいことができない
ラチには怖いものがたくさんあります。きっと感受性が強かったり、外の刺激に敏感に反応したり、想像力が豊かだったりして、怖くなってしまうのでしょう。
そしてそんな自分を「よわむし」だと思っています。弱虫な自分では飛行士になれないし、絵をかくために暗い部屋にクレヨンを取りに行くこともできません。
怖いことがあるために自分の望んでいることができないというのは不自由なことですね(私にもたくさん覚えがあります)。怖さを克服するとは自由を得るプロセスなのかもしれません。
ラチも、やりたいことができないから本当は強くなりたいのです。そんな気持ちから小さな赤いらいおんは生まれたのでしょう。
英語で「Lion Heart」とは「勇敢な心」を意味するのだそうです。ラチの「勇敢な心」は小さく赤い姿をしているのですね。
どうやって怖さを克服するか
らいおんとラチはまず、体操をしました。そして怖さを前に逃げ出したくなったら、そばにらいおんがいることを思い出して「怖くなんかないぞ」と自分を鼓舞してやりとげました。そして十分に力をつけ、怖いものを一つずつ克服してから、最後に一番怖かった同年代の子どもたちのところへ行きます。
怖さを克服するには、やみくもに立ち向かうのではなく、らいおんのような自分の支えになるような存在を得ること、そして体操のような自分を強くするための方法に取り組むこと。怖いものに出会ったら、逃げ出さずに立ち向かってやり遂げることが必要だと言えます。
ラチにとっての勇敢な心が小さな赤いらいおんの姿をしていたように、自分の中に勇敢な心を表すような存在がいるとよいのだと思います。
あなたにとってはどんな存在が思い浮かぶでしょうか?
ぴったりくるイメージや、架空のキャラクター、現実の人でも良いと思います。
私にとってらいおんのような存在は何だろうと考えてみましたが、子どもの頃に読んだ漫画のキャラクターや好きなミュージシャン、スポーツ選手勇気について歌った曲などいろいろ浮かびました。サブカルチャーが私にとっての勇敢さのお手本だったのだと思います。
ところで怖さを克服する心理学と言えば、認知行動療法が思い浮かびます。認知行動療法ではセラピストとクライエント(相談者)の信頼関係が大事と言われますが、これは、クライエントにとってセラピストがらいおんのような存在になることが大事だということなのだと思います。
らいおんがいなくても大丈夫ーロールモデルの内在化
らいおんはラチが「いたらいいのに」と願ったから現れ、ラチが十分に強くなったとき、いなくなりました。
らいおんと一緒に怖いことに立ち向かううちに、らいおんがいなくても大丈夫になったのです。
らいおんはラチにとってのロールモデル、目標、憧れとして現れました。これまでの自分にはなかった視点や考えを心の中に取り込むことを内在化と言います。らいおんを内在化して自分の一部とすることで、本当に強くなることができたと言えるでしょう。
別の見方をすれば、らいおんは、ラチの心の中に眠っていた勇敢さが外在化されたものとみることもできそうです。本当の勇敢さを身に着けることができたので、具体的な形をとらなくもよくなったのでしょう。
今回は「ラチとらいおん」を取り上げ、怖さを克服することについて考えてみました。自分の中の勇敢さについて振り返るきっかけになればうれしいです。
