人身売買組織に捜査官が単身潜入、幼き姉弟を救出する実話ベースの良作『サウンド・オブ・フリーダム』
世界興行収入25000万ドルの大ヒット!
コロンビアの人身売買組織にホンジュラスの幼き姉弟が言葉巧みに騙されて拉致・監禁される。あまりにも残忍で冷酷な犯罪だ。その哀しきありさまを見捨てておけず、国土安全保障省の捜査官ティム(ジム・カヴィーゼル)は、単身現地コロンビアに乗り込み、悪辣な人身売買組織の摘発と拉致された少年少女の救出に命がけで取り組む。
本国アメリカで大ヒットし、2024年の興行収入ランキングのベスト10にも入った。製作費1400万ドルで世界興行収入25000万ドル突破したという。幼児誘拐は世界の映画ファンにとっても、関心の高いテーマなのだ。
エンドクレジットにおいて、毎年世界中で200万人の幼児が誘拐されて売春行為を強要されているというテロップが流れる。
幼き子どもたちが乱暴に扱われ、薄暗い部屋に監禁されるシーンなどを見ると、胸が詰まる思いだが、子どもを持つ親ならば、ぜひ見届けてほしい。

ジム・カヴィーゼル迫真の演技
そうはいっても、狡猾な組織はなかなか尻尾を見せず、摘発には時間がかかる。国土安全保障省の上司がティムに捜査中止の命令を出すが、それをまったく聞き入れない。誘拐された姉弟の父親に救出を誓ったティムは、国土安全保障省を退職してまさに単身で事件の解決に動く。
ティムの正義感や使命感には心を打たれる。彼は被害者と同じ世代の子どもを抱える父親だが、勇気ある行為だ。
あと10か月間勤務すれば生涯年金を手にできるのに、老後の安定を葬り去ってまで組織の摘発にまい進する。ティムの奥さんも偉いと思った。
ティム自身、奥さんのフォローがあったからこそ、最後まで任務に集中できたと述懐している。
捜査官役のジム・カヴィーゼルは、幼児誘拐犯罪が許せず、メディアや動画配信などでも幼児虐待を根絶するよう、世論に向けて幅広く喚起を促していた。その強い思いが乗り移ったかのような迫真の演技だった。

ひとりの捜査官の信念が法律化へ
象徴的なシーンがある。
誘拐された子どもたちの写真や資料を読み込んでいるとき、ティムはそっと涙を流す。大声で泣きわめいて机の上をひっくり返したりするような大げさなオーバーアクションはほとんどない。ナチュラルで感情を抑えた演技だけにリアリティがあった。
同僚の捜査官が幼児犯罪容疑者の摘発に立ち会うなか、その哀しい実態を目にして心が折れ、「この仕事はもう続けられない」と言ってティムの前から立ち去っていく。
そうなのだ、幼児の人身売買犯罪は子どもたちや親だけでなく、捜査官の心までも壊していくほど残虐な犯罪なのである。犯罪にかかわる多くの人々の心を蝕むものであり、決して看過してはならない犯罪なのだ。

モデルの捜査官は実在の普通人
エンドクレジットでは、作品のモデルとなった捜査官が登場する。
巨体で近接格闘のスペシャリストのような外見ではないし、マッチョなガンマンタイプの雰囲気もない。アメリカでごく普通の家庭を営む理知的な父親像に近い。いかにも軍人上がりのアウトロータイプには見えなかったため、むしろ人物像が意外だった。
結果的に多くの幼児を救出したが、氷山の一角に過ぎない。ティムの活躍によって米国議会では、幼児に対する犯罪を防ぐため、国際的な捜査連携をもっと進めるという趣旨の法律が成立されたことを紹介している。
重いテーマの作品だが、憂鬱になるような内容ではなかった。
エンタメ視点でも十分に楽しめるからだ。
たとえば、子どもたちの救出作戦や山奥にある組織からの脱出シーンなどは見ていてハラハラする。赤十字の医師のふりをして麻薬製造組織に乗り込み、クレイジーなボスとのやりとりも見応えがある。
ティムがコロンビアで仲間をつくっていくプロセスは興味深いし、多少のユーモアはあるし、サスペンスシーンはきちんと用意されている。肩の凝らないストーリー展開になっている。
救出映画としても傑作だ。
評点:★★★★☆(4.2/5.0)
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