【漫画のメイキング】冒頭ポエムができるまで
エスキャトロギヤは毎週水曜日朝7時リリース。でも今週はイラストコンテストの締切があり、作画が間に合いませんでした。
代わりに、メイキングを披露する。一度は絵を描くことを忘れ去った元デザイン学生、現在はアラフォーがどんなふうにのたうちまわりながら絵を描き上げているかご覧いただけたら幸いである。
題材は、漫画エスキャトロギヤの冒頭、ファンタジー漫画にありがち? な「プロローグのポエム」だ。

デジタルかアナログか、の議論にあまり意味はない
私は小学校〜中学校まで図画工作やデッサンを習う教室に通っていた。高等専門学校に入学して即Adobe IllustratorとPhotoshopを習った。デジタルにもアナログにも郷愁があるので、どちらも良い面があり、補完し合えない部分がある。
アナログの良さ
デジタルより手早く描ける。
全体を俯瞰できる。
書き込みまくって指示書的な状態にすることができる。
デジタルの良さ
執拗なまでに修正を繰り返せる。ねちっこいタイプには最適
初期費用とかランニングコストはかかるとして、サブスクを使いこなせばアナログよりも低価格でフリー素材とかあらゆる色が使える。RGBカラーが使える。
編集脳がある人はスキルの底上げができる。
漫画の制作においては、アナログとデジタルを組み合わせながら作業を行なっている。
1. 構想を練る
物語は初めがとても重要だ。映画で、冒頭でゲタ履かせてるな……と感じるくらい衝撃的だったのは、若い頃のヒュー・グラントが主演している映画、『ボディ・バンク』だ。
冒頭なのでネタバレしていいと思うが、映画が始まるやいなや、素っ裸のおっさん二人が突然現れて、必死の形相で大都会を走っていく。異様さが一発で演出される。
内容としては、若くて美しいヒュー・グラントを堪能するための映画と言えなくもないが、「あのおっさん二人はなんなんだ?」というクエスチョンに集中力がかき立てられる体験は忘れない。
それだけに、冒頭はとても大事だ。ポエムなんて置いてる場合じゃないかもしれない。さっさと事件を起こして読者を惹きつけないと。まあでも、デジタルのいいところは上げ下げ自由というところだ。描きたいものを出し切るのが先決だ。ファンタジーと言えば、どっかのおっさんが重低音で紡ぎ出すポエムがないとはじまらない。覚悟を決めてポエムをイメージに起こすことにした。
ぼんやりと頭の中のイメージを紙に書き出してみる。

どんなにラフだろうととにかく描き出す。この段階ではアナログがちょうどいい。
メインキャラがなにかを差し示しているというイメージは、完成まで採用したが、当初はこのとおり、跪いて上を見上げていた。なんとなくコマ割りも考えた。
漫画にするとなった時、読者は上から下に視線を移すので、視線の誘導に合わせて、指が1コマ目にあるんじゃなくて、上下逆さまにしたらどうだろうと考えた。

……なんか、このイメージ既視感あるぞ……いや、何かを差し示しているエモい画像は世の中にごまんとあるんだけれども。もっとマスターピース的なやつが。
そうだ。アダムの創造だ。
エスキャトロギヤの世界観も、人間が土から創られた創造論を基盤にしている。だからいっそ、天地創造の絵のパロディをやろうと思いついた。
2. モチーフを試行錯誤する

早速元画像をネット上から失敬していじり始める。紙に切り貼り、書き殴ったりするのもアナログが便利だ。足が上、指が下、という発想は引き継ぐ。
コマ割りをせず一枚絵にしようかとも考えたが、程よく枠線で絵を割って、描き込むモチーフを減らし、時間をかけすぎないような工夫も盛り込んだ。

モチーフが固まったので、画像をPCに取り込み、CLIP STUDIO PAINTに配置して、早速コマ割りをする。
『アダムの創造』の中からクローズアップしたいモチーフを、4コマの中に割り振りつつ、全体として、見る人が見たらあの絵かな、というのがわかるあたりに調整する。
必然的に、神様、神様の後ろの女性(若者?)、さらにその後ろの子供を、それぞれメインキャラに描き換えることにした。それ以外の御使いみたいなのは省略したり、原画から写し取りつつもっとぼんやりさせてみたり。
絵に夢中になりすぎると、フキダシを入れたときに描きこまなくていい部分まで描いてたってなる可能性がある。
労力の無駄すぎるので、初めからフキダシのレイアウトを決めておいた。
3. 下書き
レイアウトを薄いグレーで出力し、原画を書き換えていく。ミケランジェロの描く人物は体つきがかなりがっしりしているので適宜細くしたり。

当然のことながら、名画を題材に使うととても勉強になるし、『アダムの創造』はイラストコンテスト応募でも題材として使い、ポージングについてもさらに研究した。それで興味深い発見もあったのだけど、それはコンテストの結果がわかってから改めて記事にしたい。
4. ペン入れという名のデジタル清書
下書きをPCに再度取り込み、クリスタ上で清書していく。
まだまだペンの太さとか絵柄も安定しないし、影の入れ方、ベタ(黒く塗る部分)の範囲だとかもわからないことだらけ。

わからなくなりすぎたら一手戻ったほうがいい。できたところまでで一度出力し、アナログのいいところである、全体のバランスを見ながら影を入れる部分を手書きで考えていく。
水色の色鉛筆という利器
思い出してみれば、小学生の頃から漫画絵に目覚めた私は、「漫画の描き方」なる本を読んで、漫画家スターターセットを買ったりして、それなりに漫画の描き方は知ってるつもりでいた。
ひと昔前の漫画技法は、とにかくアナログで職人級にテクニックを極めるというものが主流だった。ペンで細かく点描をしたりカケアミを描いたり。今となっては、デジタルで描くかぎり、それらはブラシツールで一発で再現できる。
でもやっぱりそこはかとなく後ろめたさはある。アナログで何でもできるようになってこそ真の漫画描きというかんじがする。
後ろめたさは翻って、下書きにおいては鉛筆一本で何もかも何とかする、というこだわりになっていた。
しかし最近、札幌市でいうところの世界堂的ポジションのセントラルという画材屋で、カランダッシュのブルーペンシルなるものを見つけてしまった。

どうやって使うのかというと、「ここは影ですよ」と主線と差別したい描写のところをブルーで塗る。
影を鉛筆で書き込んだために主線が潰れてしまうのが避けられる。1色から2色になっただけでめちゃくちゃ視認性がアップする。こんなチートがあったのか。

アナログ原稿でスクリーントーンを貼りたい範囲とかに明るい色の色鉛筆を使う(印刷には乗らないから)とは聞いたことあったけど、下書きでガッツリ使うのは思いつかなかった。
カランダッシュ・ブルーペンシルの弱みは、2本入りで1000円近くするという、値段がべらぼうに高いことにある。手法自体に慣れたら安価な色鉛筆に切り替えてもいいのかもしれない。普通の色鉛筆より消えやすかったりもするけど。
5. グレーで色を塗るように
漫画の良さってモノクロ2階調の様式美というか、黒と白の世界でどれだけの絵を追求できるかにある。極論すると、極力ホワイトと墨だけで画面を構成し、トーンの存在感を感じさせないようにするというか。
少女漫画はトーンをいっぱい使ってフンワリした雰囲気を作り出したりもするけど。
真面目に漫画を描き始めてすごく難しく感じたのは、「ベタの塗り方がわかんねぇ」ということだった。そこに塗るべきベタがある。でもどの範囲を塗ればいいのかなんて誰にも教わらなかったな……。みんな簡単そうに塗りやがって……くそ……。
各種取り揃えるってことでいっスか?
しょうがなから、とりまデッサンの手法で乗り切ることにした。
すなわち、ベーシックなスクリーントーンを薄い〜濃いの濃度別に七種類くらい用意して、塗るようなイメージで影を足していくのだ。


濃度の違うスクリーントーン同士が重なり合うと、綺麗に仕上がらない感じがどうしてもするので、私が心配するべきはトーンが重なり合わないように丁寧に仕事をするという部分だけだ。
アラフォーはどんなふうに作品を作っているか
年齢を重ねるいいところは、逃げ道のバリエーションが増えて、やろうと思ったことの完成度に関わらずに、やり切ったと言えるところまではお茶を濁すことができるところにある。
だからといって、終始すずしい顔で取り組んでいるわけではない。

能力を発揮できることには苦しまなくっていいのかと言うと、そうではない。
ていうか、最後まで描いてるな、と思った
物語を自分でコミカライズしようと決めたのは今年の7月。絵と向き合おうと考え始めてから二ヶ月経った。仕事で必要とされるデザインをしたり、イラストを描いたりすることも「絵を描く」と言ったりするけれど、作品をつくるのとはやっぱり、全然違う。私に関してデザインの仕事では「自分の世界観」を表現することはないからだ。
はるか昔に教わったこと、本で読んだこと、見たもの、考えたこと全てで描いている。自分の思いが強いばかりに、どれだけ人を遠ざけているかも関係ない。恐れているのは、思いが強いばかりに自分がイメージに潰されてしまわないかということだ。
下書きやデジタル上のラフ含めて、色々描き上げてきて、今日ふと思った。描きたいと思ったものは、全部仕上げてきたなって。
完成させることを繰り返すほど成長できる。なんなら、今日取り上げた冒頭ポエムだって、まだまだ表情とかポーズとか硬いなぁって反省があるし。
ここであまりに昂りすぎると簡単に燃え尽きてしまうから、今日からもまた描きたいイメージに手を取られてのたうち回りながら進むことを続けようと思う。
これからもよろしくお願いいたします。
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