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【掌編小説】ここでは誰もが輝けます!

ここは、誰もが自分らしく輝けるタウンです!

そんなキャッチフレーズに引き寄せられるように。
私はこの街に、小さなカフェを出店した。

色んなお店が立ち並ぶこの街は、とても賑やかだ。
キャッチフレーズそのままに、
誰も彼もが生き生きとしていて、輝いて見えた。
ここなら、私も、やっていける、かも。
そんな淡い期待を乗せて、カフェオープンの日を迎えた。

アロマの香り高い厳選した珈琲と。
国産の小麦と天然酵母に拘った手作りのパン。
スパイスを利かせたキャロットラペを挟んだサンドウィッチ。
私はドキドキしながら、お客様の到来を待った。

だけど。
カフェには閑古鳥が鳴いた。
入り口に置いた試食の「売れ行き」だけは抜群だった。

いやいや。
まだオープンして一週間しか経ってない。
まずは、この街に馴染むことにしよう。

そう考えた私は、暇を見つけては色々なお店へと足を運んだ。

みんな、「お客」として訪れた私を温かく迎えてくれた。

へえ、あの空き店舗にカフェを出したんですか。
頑張って下さいね。
今度是非行かせて頂きます。

そんな風に、口々に優しい言葉をかけてくれた。

私は、嬉しかった。
この街に受け入れられてもらえた。
そんな気がしていた。

だけど。
その人たちは、ちっとも私のお店には来てくれなかった。
姿を見かけても、私の店には目もくれず、
お喋りをしながら、ただただ目の前を通り過ぎていくだけだった。

私は、愕然とした。
何が、いけないんだろう。
どうして、私の作ったサンドウィッチには
だれも見向きもしてくれないんだろう。

ーーどうして。

ーーーーーー

通りの奥には、行列のできる大きなカフェがあった。
何でも、界隈では有名な人が経営しているらしい。
華々しい経歴。そして、付き合いの広さ。
過去に開発したメニューが大当たりしたこともあって、
そのお店はいつも大繁盛だ。

私は、お客としてその店を訪れた。
評判のサンドウィッチを食べてみた。
あれ?
確かに美味しいけど。
一度は食べた方がいいというほどではないような。

正直な所。
私が作ったキャロットラペのサンドウィッチの方が、
味は上だと、思った。

SNSで絶賛されている、他のカフェにも行ってみた。
ここのイチオシという、スイーツを注文した。
季節のフルーツをたくさん乗せたそれは、確かにとてもおいしそうだった。
だけど、半分ほどで飽きてしまった。
フルーツ以外の味の変化が殆ど無くて、
最初から最後までただただ甘ったるいだけだったから。

これが、この店のイチオシかあ…。
私は残念な気持ちになりながら、お会計を済ませた。

ヒトそれぞれ、好みの味があるとはいえ。
私には、この店が絶賛される理由がわからなかった。

ーーーこれは、もしかしたら。
この時初めて、私の頭を冷ややかな不安がよぎった。

ーーーーー

いや。
まだまだ出来ることはある。
きっと、努力が足りないのだ。

私はそんな言葉で、不安をかき消した。

気を取り直した私は、チラシを配ったり、SNSで発信してみたりした。
また試食をやってみたり、新商品を出してみたりもした。
繁盛店を真似て、見栄えをちょっと変えてみたり。
それから、フードライターの人にお願いして、レビューを書いても貰った。
他にも、思いつくだけの施策はやってみたつもりだ。

だけど。
私のお店には、閑古鳥が鳴くばかりだった。

どうしてなんだろう。
何が、違うんだろう。
知名度?
印象?
味?
でも、味は絶対に負けてない。
珈琲だって、美味しいものを用意しているし。
パンだって、ちゃんと焼いてる。
味にうるさい友達に試食してもらって、
OKが出たものしかお店には出してない。

ーーなのに。

ーーーーー

そんな状態が半年ほど続いた、ある日の閉店後。
私はその日も、売れ残りのサンドウィッチを食べていた。
美味しいけど、ちっとも美味しくなかった。

・・・一体、何やってるんだろうな・・・・。

とうとう、私の中で、
何かがぽっきりと真っ二つに、折れた。

私は、泣きながら小麦粉と食材の注文をキャンセルした。

翌日から。
私のお店は、単に普通の飲み物だけを出す、
実につまらない場所になった。

あれ、このお店、サンドウィッチやめちゃったんだね。
通りすがりの人から、そんな声が聞こえてきた。

美味しかったのに。
残念だね。

今更な賛辞の言葉を、私はただ聞き流した。
ただただ、空疎だった。

ーーーーー

ここは、誰もが自分らしく輝けるタウンです!
嘘だよ、そんなの。
あ、いや。
まるっきりの嘘じゃないか。
輝いている人は、確かにいる。
あの繁盛店のカフェだって。
私が訪れた数々のお店だって。

ただ。
それは。
他の場所と同じく。
平等に訪れる機会ではない。
ただ、それだけのことなんだろう。

ーーーーー

それから暫くして。
私は再び、国産小麦と天然酵母で美味しいパンを焼き始めた。
ただーー。
これは、私のカフェに並べるものではない。

週末に行われる、駅前広場のイベント。
数々のキッチンカーが並ぶそこに、私のパンも置いてもらえることになったのだ。

さあ。
ここから、逆襲だ。


(おわり)


今回も「みくまゆ会」様のチャレがやに参加させて頂きました!


お題は「おとしもの」
広義の解釈をしたので、お題そのままズバリを書いたお話ではありません。
あしからず。

では!

#みくまゆ会
#チャレがや
#おとしもの