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kind_curlew8666
好き化粧 #毎週ショートショートnote
この世に生まれた時、私はただの板チョコだった。
そして今、銀紙を剥がされ、湯せんにかけられ、少しずつ形を失っていく。
怖くないと言えば嘘になる。でも、彼女の手はとても丁寧だった。
溶かされて新たな形になった私は、今度は白い線で模様を描かれた。ナッツをのせて、違う色も足して。まるでお化粧みたいだ。
でもきれいな姿になるほど、彼女の手が迷っているのが分かった。何度も置いては、少しだけ位置を直す。
「可愛くできたかな...」
答えられないけれど、私は精一杯うなずくつもりで固まった。
渡す瞬間、彼女は好きだと伝えられなかった。
ずいっと無言で差し出し、言葉にできない気持ちは私に預けられた。
大丈夫。めいいっぱいお化粧をされた私は、たぶん今日、生まれてから一番可愛い。
ラッピングは見えないけどきっと最高だし、私の表面には迷いながら慎重にのせた彼女の「好き」がこれでもかとトッピングされている。
彼が箱を開けたとき、私が代わりに伝えておくね。
(409字)
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