「定年してまで、なぜ働くんですか?」再任用の先生方に聞いて分かった、お金以外の理由
「定年してまで働き続ける人って、なんでなんだろう?」
職員室で、ふと出た同僚のひとこと。続けて、別の同僚が答えました。「お金のためじゃない?年金だけじゃ厳しいって聞くし」。
なるほど、と私もうなずきかけました。でも、その瞬間、引っかかる思いがあったのです。
「お金に困っていなくても、働き続けている人がいる」。
これって、なぜなのでしょうか。気になったら、聞かずにいられない性分です。
私は、再任用で働いているベテランの先生方に、片っ端から聞いて回ることにしました。今日は、その答えを正直にシェアします。働くことの本当の意味について、考えさせられる話でした。
お金じゃない。インタビューで返ってきた、リアルな声

「なぜ、定年後も働き続けているんですか?」
直球の質問を、先生方にぶつけてみました。年齢も経歴も違う、何人もの先生に。
返ってきた答えは、私が予想していた「年金が心配だから」とは、まったく違うものでした。
「家にずっといたって、何もすることがないんだよね」
これが、いちばん多かった答えです。退職した瞬間、毎日の予定が真っ白になる。
最初の数週間は「自由で最高!」と思っても、すぐに飽きてくる。
やがて、何をすればいいか分からない時間が、苦痛になってくる。
そう、皆さん口を揃えて言っていました。
「通勤して学校に行くだけで、歩数が稼げるんだよ」
これも面白い答えでした。家にいると、本当に動かなくなる。気づくと一日中座りっぱなし。でも、職場があれば、駅まで歩く、階段を上る、教室を移動する。
ただ働きに行くだけで、健康が維持できるのです。これは確かに、家にいては手に入らないものです。
「子どもたちと接していると、元気をもらえる」
そして、これも多くの先生がおっしゃっていました。教室には、エネルギーの塊のような子どもたちがいる。
その元気に触れているうちに、自分まで若返るような感覚がある、と。「子どもたちの方が、私を元気にしてくれている」と笑う先生の顔が、印象的でした。
どれも、お金とはまったく関係ない理由ばかりでした。
いちばん多かった答えは「ありがとうと言われるのが嬉しい」

そして、インタビューで圧倒的にいちばん多かった答えが、これでした。
「ありがとう、と言われるのが嬉しいんだよね」
ほとんどすべての先生が、これを口にしました。
「先生、ありがとう」 「一緒に遊ぼう」 「分かるようになったよ、ありがとう」
子どもたちから何気なくかけられるこんな言葉が、定年を過ぎた先生方の心を、本当に深く満たしているのです。
私は、これを聞いて、ハッとしました。
私たちは、働く理由を「お金のため」とだけ考えがちです。でも、本当はそれだけじゃない。「自分の存在が、誰かの役に立っている」と感じられる場所が、人間には必要なのです。
家にいて、何もしないでいると、その実感が得られません。
テレビを見ても、買い物に行っても、「ありがとう」と言われる機会はほとんどない。でも、職場に行けば、誰かが自分を必要としてくれる。誰かが、自分のしたことに感謝してくれる。
「自分はまだ、誰かの役に立てる」
この実感が、人を元気にしてくれるのです。
ある先生は、こう言っていました。「家でゴロゴロしてたら、たぶん3年で老け込んでた」と。
冗談まじりでしたが、たぶん本当のことだと思います。人は、誰かに必要とされる場所を失った瞬間、急速にエネルギーを失う生き物なのかもしれません。
働くことは、お金を稼ぐことだけじゃない

ここまでインタビューしてきて、私はひとつの答えにたどり着きました。
働くことは、お金を稼ぐためだけの行為ではないということです。
もちろん、お金は大切です。生活のために働くのは、当たり前のこと。でも、もしお金がすべてなら、必要な額を稼ぎ終えた人は、全員すぐに辞めるはずです。でも、実際にはそうじゃない。お金以外の何かが、人を働き続けさせているのです。
その「何か」の正体は。
人とつながること。 誰かの役に立つこと。
「ありがとう」と言われること。
自分の存在に、意味を感じること。
働くことは、社会への貢献であり、自分の存在を確認する行為なのだと、ベテランの先生方は身をもって教えてくれました。
これは、若い世代の私たちにも、大切なメッセージだと思います。
私たちはつい、「もっと稼ぎたい」「楽な仕事がいい」「早く引退したい」と考えがちです。でも、いずれ「引退」という日が来たとき、お金以外に何を持っているか。それが、人生の後半戦の充実度を決めるのかもしれません。
人に「ありがとう」と言われる経験。 誰かに必要とされる感覚。 社会と関わり続ける場所。
これらは、定年してから急に手に入るものではありません。現役のうちから、コツコツと育てていくものなのだと思います。
定年後も働き続ける先生方の姿は、私にとって、未来の自分への大切なヒントになりました。
働くことは、苦行じゃない。 働くことは、貢献することだ。 そして、貢献することは、自分自身の喜びでもある。
そんなことを、改めて教えてもらった、貴重なインタビューでした。

