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台湾人スタッフに通訳をお願いした会議で起きる認識ズレの正体。

なぜ伝わっていないのか?


台湾での日系企業や日本とのビジネスの現場では、

  • 会議では合意したはずなのに、後日台湾側から違う提案が出てきた

  • 価格は難しいと伝えたつもりなのに、相手はまだ交渉できると思っていた

  • 日本語ができるスタッフなのに、なぜか話が噛み合わない

といった話をよく耳にします。

こうした問題が起きると、多くの人は、

 「通訳が正しく訳していなかったのではないか」

と考えます。

しかし、
問題は語学力そのものが原因ではないケースが多いです。

問題は、

 「同じ日本語でも、受け取り方が違う」

ことにあります。


実際にあったコミュニケーション事故

以前、台湾企業との会議で実際にあった話です。

台湾企業側の上司が中国語で発言し、
それを台湾人スタッフが日本語に通訳しました。

その時の訳は、

 「難しいかもしれません」でした。


日本語としては間違っていません。

中国語の内容をそのまま日本語に置き換えれば、
確かにそうなります。


しかし問題は、その言葉の受け取り方でした。

台湾企業側の上司が伝えたかったのは、

 「少し困難かもしれない」

 「条件次第では可能性はある」

という意味でした。


ところが、日本側は

 「それは無理です」

 「断られた」

と受け取ってしまったのです。

結果として、その後の交渉の進め方にズレが生じました。

このケースで興味深いのは、
通訳した日本語自体は間違っていなかったことです。

問題は、

言葉を訳したことではなく、
言葉に含まれる意味や温度感を伝えられなかったこと

にありました。


そして、これは台湾人スタッフの日本語力の問題ではありません。

また、日本側の理解力の問題でもありません。

それぞれが自然な解釈をした結果、認識がズレてしまったのです。


日本人が見落としがちな前提


日本人は無意識のうちに、

 「日本語が話せる=日本人と同じように理解している」

と考えがちです。


しかし実際には、

 「日本語が話せること」と 
 「日本人と同じ前提で解釈すること」は別の話です。


同じような文章でも、

  • 言葉の強弱

  • 温度感

  • 遠回しな表現

  • 文脈から読み取る意図

については、日本人と台湾人で受け取り方が異なることがあります。

そして、この違いがビジネスの現場で認識ズレを生みます。



ビジネス通訳は「正確な翻訳」だけでは足りない

ここで一つ知っておいていただきたいことがあります。

学会や講演会の通訳であれば、発言内容を正確に伝えることが最優先です。

しかし、ビジネスの場ではそれだけでは足りません。

  ・交渉なのか。

  ・提案なのか。

  ・状況確認なのか。

あるいは、相手との関係を維持したいのか。

目的によって、同じ内容でも伝え方を変える必要があります。

私は会議の通訳を担当するとき、
単に資料や議題を確認するだけではなく、

「この内容を相手にどう伝えたいですか?」

と確認するようにしています。


私が通訳の前に必ず確認すること

私は会議の通訳を担当するとき、
できるだけ事前に次のようなことを確認します。

  • この内容は強めに伝えたいですか?

  • 相手の反応を見たいだけですか?

  • 本当に難しいのですか?

なぜなら、同じ内容でも伝え方によって意味が変わるからです。


例えば価格交渉で、

1.「この価格だと弊社としては受け入れが難しいです。」

2.「今の段階では少し厳しいですが……。」

3.「条件面を考えると、弊社では対応が困難です。」

という3つの表現があります。

どれも似ていますが、相手に与える印象は異なります。

1つ目は比較的明確な拒否。

2つ目は交渉余地を残している印象。

3つ目は条件変更がなければ難しい

というニュアンスです。

もし、依頼者が「今回は強く伝えたい」と考えているのに、
通訳が交渉余地のある表現として伝えてしまったらどうなるでしょうか。

逆に、本当は相手の反応を見たいだけなのに、
完全な拒否として伝わったらどうなるでしょうか。

言葉は同じでも、結果は変わってしまいます。



通訳者と共有するのは議題だけではない


一般的に会議前に共有される情報として多いのは、

  • プロジェクトの概要

  • これまでの経緯

  • 当日の議題       

これらは、もちろん必要です。

しかし実際には、それ以上に重要な情報があります。

例えば、

  • 今回の会議でどのような結果に持っていきたいのか

  • 譲れないポイントは何か

  • 相手はどのような立場なのか

  • 相手との関係性はどうなのか

  • 強く伝えたいのか、柔らかく伝えたいのか

といった情報です。

こうした背景が分かると、
通訳者は単に言葉を置き換えるのではなく、
意図や温度感も含めて伝えやすくなります。

特に、
プロジェクトに関わっていない台湾人スタッフや
外部通訳者に依頼する場合は、より重要です。

事前情報がない状態では、
聞いた内容を正確に訳すことはできても、
その発言の重みや目的までは判断できません。



通訳後に確認した方がいいこと


もう一つ、確認してほしいことがあります。

それは、

 「今の相手の発言はどんなニュアンスに聞こえましたか?」

と確認することです。

言葉の温度感は、
その場で聞いた人にしか分からない部分があります。

きれいな日本語に整えた結果、
本来あった強さや迷いが消えてしまうこともあります。


そのため、

  • 強く聞こえましたか?

  • まだ可能性があるように聞こえましたか?

  • 断る意味でしたか?

と確認することで、認識のズレを減らすことができます。



日本語が通じていることと、意図が伝わることは違う


台湾で仕事をしていると、

 「日本語ができる人を採用したから大丈夫」

と思ってしまいがちです。


しかし実際には、

 日本語ができることと、日本人と同じように理解することは別です。

私がこれまで見てきた多くの認識ズレは、
語学力不足ではなく、
その前提の違いから生まれていました。


だからこそ重要なのは、

「何を伝えるか」だけではなく、

「どう伝わるか」まで考えることです。

もし台湾人スタッフや通訳者に会議のサポートを依頼するときは、
次の3つを共有してください。

① 今回のゴールは何か

② 譲れないポイントは何か

③ 相手にどう受け取ってほしいのか


この3つを共有するだけでも、
会議後の認識ズレや交渉トラブルは大きく減ります。

日本語が通じることと、意図が伝わることは同じではありません。

日台ビジネスのコミュニケーションリスクの多くは、
言葉の問題ではなく、その背景や温度感の共有不足から生まれていました。

「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝わるか」まで考えること。

それが、
日台ビジネスにおけるコミュニケーションリスク対策の
第一歩だと考えています。

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