天才のひみつ外伝:HowではなくWhyを問え〜学歴なき偉人たちの「視る力」〜
1. はじめに:知性を紡ぐもの
前記事では、「宇宙は謎に満ちている」で締めくくりました。この宇宙は、人類の芽生えたばかりの知性にはあまりにも複雑でした。人類は、異なる視点、角度で、何世代にもわたり、バトンを渡しながら、宇宙を観察し、物語(神話)や数式で記述していきました。私たちの宇宙は一つのものなのですが、視点、角度で異なる顔を見せてくれます。そして、次のバトンを受け取ったのは私たちです。
さて、本記事では、この宇宙の仕組みを明らかにする挑戦をした学歴なき偉人たちをご紹介します。
歴史に名を刻んだ大天才といえば、どのような人物を思い浮かべるでしょうか?多くの人は、恵まれた環境で幼い頃から英才教育を受け、一流の大学で学んだ姿を想像するかもしれません。しかし、偉人伝で教えない天才のひみつで記したように、天才たちは決して恵まれた環境で育ったとは言えません。むしろ、絶望的な環境の方が多いぐらいです。私は良い大学を卒業していないあるいは大卒でないから天才になれないと決めつけてよいのでしょうか?
実は、科学の歴史を紐解くと、学校教育をほとんど受けていないにもかかわらず、純粋な「知りたい」という情熱だけで世界の常識をひっくり返した偉人たちが存在します。無名の職人の一歩であるが人類にとっても大いなる一歩を科学史に残した学歴なき偉人たちがいるのです。エジソンはあまりにも有名ですが、外伝では、物理学と数学の世界に革命を起こした2人の天才、マイケル・ファラデーとジョージ・グリーンの物語をご紹介します。
2. マイケル・ファラデー:製本所の見習いから「電磁気学の父」へ
現代の私たちの生活は、電気なしでは成り立ちません。スマートフォンも、パソコンも、家電製品も、すべてはマイケル・ファラデーという一人の男の好奇心から始まりました。
2.1 本との出会いと、運命を変えた一冊のノート
ロンドン郊外の貧しい鍛冶屋の家に生まれたファラデーは、小学校を中退し、14歳で製本所の見習いに出されます。普通の少年なら日々の過酷な労働に疲弊してしまうところですが、彼は違いました。彼が製本した冊子が現存していますが彼には優秀な製本の能力がありました。製本作業では、1頁ずつ、丁寧に確認していく地道な作業の連続です。つまり、彼にとって製本所は、「最先端の知識が無料で読める夢のような場所」だったのです。
持ち込まれる科学の本を片っ端から読み漁った彼は、やがて当時の大科学者ハンフリー・デービーの講演を聴く機会に恵まれます。ファラデーは講演の内容を一言半句漏らさずメモし、美しく製本してデービーに送り、王立研究所の助手として働かせてくれるように懇願しました。当時のデービーの助手が喧嘩して辞めるという歴史的な幸運が重なり、彼はデービーの助手として科学の世界に足を踏み入れることになります。
2.2 数学ができない天才の「本質(ありのまま)を視る心の眼力」
ファラデーの最大の特徴は、高等数学を全く知らなかったことです。数式で物理現象を説明することが主流になりつつあった時代に、彼は数式を一切使わず、頭の中に鮮明な「イメージ」を描くことで自然の法則を解き明かしました。科学の黎明期では、数式でHowを記述する現在の科学の方法でなく、本質は何?(Why)という問いが重要だったことがわかります。筆者(ミュール)がWhyから逆算する手法にこだわる理由です。数学の迷路に入り込む現在の手法は本質を見失う可能性があります。
まずは、Whyの問いから入るこれは科学の正攻法です。
電磁誘導の発見: 磁石を動かすと電気が生まれるという大発見。これが現在の発電機の基礎です。将来、これにより、国の財政に寄与すると予言していました。
「場」の概念: 空間に目に見えない「力線」が張り巡らされているというアイデアは、後に天才物理学者マクスウェルによって見事に数式化されました。
学歴がないからこそ、数式という枠に囚われず、自然の姿をありのままに「視る」ことができたのです。なお、現在でも、物理学の研究現場では、細部にとらわれず全体像の本質を捉えることを「粗視する」と呼び、主観を排除してありのままを観察することを徹底します。例えば、プレゼンテーションでは、観察結果のありのままを、まず、話したうえで、演者の解釈を添えて述べる手法が基本です。理系を卒業した読者は覚えているかな?人間の心や人間の経済活動の観察も、自然科学なので、ありのままをみるべきです。
ファラデーは、アインシュタインから、史上最高の実験物理学者と称され、書斎の壁に額縁を飾って深く尊敬されていたと伝えられています。筆者(ミュール)も、ファラデーの肖像を研究室に掲げ、自省しつつ、学びを深める日々です。
まずは、自室の壁に肖像画(推しとして)を飾る、カタチから始めていくのはいかがでしょうか?
3. ジョージ・グリーン:風車小屋で宇宙の真理を解いた粉屋
ファラデーが実験の天才なら、ジョージ・グリーンは独学で頂点に立った数学の天才です。彼の名前は一般にはあまり知られていませんが、現代の物理学や工学(特に量子力学や電磁気学)において、彼の生み出した数学的手法なしには計算が成り立たないほど重要な人物です。
3.1 学校に通ったのはたった1年、しかし、極めて質の高いきらめく出会いと時間
グリーンはイギリスのノッティンガムで、パン屋兼製粉業を営む家庭に生まれました。彼が学校に通ったのは、なんと8歳からのわずか1年(約4学期)だけです。その後は家業を手伝い、毎日粉まみれになって風車小屋で働いていました。ここで、重要なのはこの1年が極めて特異的で質の高い出会いと時間であったことです。彼が通った学校の校長であるロバート・グッドエイカーは、単なる読み書きを教えるだけでなく、自ら科学や天文学の公開講座を開くほど理数系に情熱を持った優れた教育者でした。グッドエイカーの科学への熱狂に触れたことで、幼いグリーンの心に「数学と自然の法則」への痛烈な興味が植え付けられたのです。このエピソードから、学ぶ時間の量でなく、圧倒的な質が重要なことを教えてくれます。
家業を手伝わせたい父親の意向でわずか1年で退学となり、その後は毎日粉まみれになって風車小屋で働く生活が始まりました。しかし、恩師から受け取った知的な火種が消えることはありませんでした。彼は過酷な肉体労働の合間を縫い、ノッティンガムの図書館に通い詰め、独学で当時の最先端の数学を吸収していったのです。
教師の才能を見つけて、生徒を「導く」力が、知識を暗記させるよりも、とても大事であることが分かります。もし、あなたの子供時代に、導きを与えてくれた先生との出会いがあるならば、それがこれからの原点になるかもしれません。また、あなたが、教える立場ならば、きっかけを与えれる役割があるかもしれません。
3.2 自費出版された歴史的論文:伝えたい、わたしが理解した世界の仕組み
1828年、35歳になったグリーンは「電気学と磁気学への数学的解析の応用に関する論文」という小冊子を自費出版します。ノッティンガムの地元の人々(ほとんどは数学に興味のない知人たち)がパトロンとなって出版されたこの論文には、のちに「グリーンの定理」や「グリーン関数」と呼ばれる、物理学の根幹をなす大発見が記されていました。
完全な独学: 大学の教授や数学者との交流が一切ないまま、彼はたった一人で世界トップレベルの数学的真理に到達していました。しかし、その背景には、短くてもきらめく質の高い出会いと時間がありました。
遅咲きの栄光: この論文の価値が認められ、彼がケンブリッジ大学に入学したのは40歳のときでした。しかし、すでに彼の数学的業績は、大学の教授たちを凌駕していました。
風車小屋の粉屋は、肩書きや学歴などなくても、純粋な探究心だけで宇宙の真理に手が届くことを証明したのです。


4. まとめ:彼らを突き動かしたもの、それは、世界の仕組みを知りたい。
ファラデーとグリーン。製本所と風車小屋という、科学とは無縁に見える場所からスタートした2人に共通しているのは、「ただ、この世界の仕組み(ひみつ)を知りたい」という純粋で強烈な情熱と行動力です。
彼らは「良い大学に入りたいから」「名声を得たいから」学んだのではありません。知ることそのものが喜びだったのです。もちろん、ファラデーは学がないことを自覚しており、市民が主催する科学のソサイエティに参加したり、文章の書き方などを教えてもらうなど、影の努力を惜しまない人でした。また、備忘録に、学んだことを記録し、知性の向上に努めていました。
学歴や環境は、確かに道を歩きやすくするツールかもしれません。しかし、歴史を変えるような偉大な一歩を踏み出すために本当に必要なのは、条件ではなく、燃え上がるような好奇心なのだと、彼らの生涯は私たちに教えてくれます。
Kindleで出版、Noteの記事で発表など、現在は、当時よりも桁外れに市民が世界の仕組みを学び、発表する機会に恵まれています。しかも、優れた教師(AI)のサポートも得られます。
筆者(ミュール)は、科学史にも通じているので、教育現場で、忙しさの中で、忘れがちな「導く」という教師の崇高な使命の重要性を想起するエピソードを、2人の偉人の生き様を借用して外伝で書いてみました。
現在の我々は、当時より恵まれており機会は平等なのに活かさないのはもったいなあと思います。もちろん、思春期の子供に宿題をやれと言ってもまだその時が来ていないだけであるように、大人にも精神の思春期があるのでしょう。
あなたは、眠れる竜なのか、それとも、そのまま骨になるのか、未来は多元宇宙です。

編修後記
今回は約4000字という大幅なさぼりをしました。本記事は、読者の背景や抱える課題で、印象や学びが違うように設計してみました。果たして、そうなのか、一部のフォロワーさんはコメントやクリエイターへの連絡で教えてくれますが、ぜひ、感想を教えてください。夏休みに入る(お盆休暇とか)ので、コメントをみながら、次は何を書こうか考えます。そろそろ、心理歴史学かな。
マガジンはじめました。不思議系の記事、同志たちの記事、なるほどと思った記事を集めました。昔、読んだ記事はまだ加えていないので、私の記事がないなと思った読者、すみません。面白いと思った記事にはコメントをしています。数日に1回はフォロワーを回遊しています。余暇は、防波堤で、人生を知り尽くした優しいおじさんたちに囲まれて過ごしてて、レスは遅れがちです。でも、自然の中にいる時間が大事です。
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天才のひみつの本伝です(別記事です)
