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エレベーターは止まらなかった



あのアパートの前を通らないようにしていた。

203号室。

灯りのついた部屋。

知らない着信音。

考えすぎだ。

そう思うようにしていた。

でも。

あの日だけは違った。

雨が降っていた。

近道をしようと思った。

そして。

またあのアパートの前を通ってしまった。

一階のエントランス。

古いエレベーター。

ふと見ると、
扉が開いていた。

誰も乗っていない。

ただ。

なぜか気になった。

私は近づいた。

すると。

チン。

エレベーターの扉が閉まり始めた。

誰もいないはずなのに。

そして。

上へ。

二階。

三階。

四階。

ゆっくり数字が変わっていく。

古いアパートなのに。

四階なんて存在しない。

私は思わず立ち尽くした。

表示は「4」。

しばらくして。

チン。

再び降りてくる。

三階。

二階。

一階。

扉が開く。

誰もいない。

その時だった。

奥の壁に。

小さく何かが映っていた。

ぼんやりとした人影。

私は息を止めた。

目を凝らす。

次の瞬間。

人影が動いた。

そして。

こちらを向いた。

私は逃げた。

振り返らずに。

雨の中を走った。

帰宅してから、
びしょ濡れのまま玄関に座り込んだ。

ポケットの中で、
スマートフォンが震えた。

午前三時十三分。

知らない番号。

私は画面を見つめた。

そして。

初めて気づいた。

着信番号の最後の三桁。

それは。

『203』

だった。

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