蛍。見えなくなったあとも、光は残っていました。
夏になると、
なぜか蛍を思い出します。
毎年見に行くわけでもありません。
特別な思い出があるわけでもないのに、
あの小さな光だけは、
今も静かに心へ残っています。
蛍は、
ずっと光っているわけではありません。
暗闇の中で、
ほんの一瞬だけ灯り、
また静かに、
夜へ溶けていきます。
光っている時間より、
見えなくなっている時間の方が、
ずっと長い。
それなのに、
帰る頃には、
暗かった夜ではなく、
あの小さな光だけを思い出しているのです。
私は時々、
うまくいかなかった一日ばかりを、
覚えている気がします。
何もできなかったこと。
言えなかった言葉。
頭の中で繰り返した不安。
そんな時間ばかりが、
今日だったように思えてしまいます。
けれど本当は、
誰かの言葉に少し救われたことも、
風が気持ちよく感じた夕方も、
静かに眠れた夜も、
確かにそこにありました。
小さすぎて、
その時は気づかなかっただけで、
私にも、
ちゃんと光っていた時間があったのです。
蛍は、
光っているから美しいのではなく、
暗闇があるから、
その小さな灯りに気づけます。
人の心も、
少し似ているのかもしれません。
元気な日だけで、
できているわけではありません。
立ち止まる日も、
何も変わらない夜も、
見えない時間として、
静かに積み重なっています。
それでも、
振り返ると残っているのは、
ほんの一瞬、
心が動いた時間でした。
私は、
その小さな光を、
これからも忘れたくありません。
あの夏の夜のように、
見えなくなったあとも、
静かに心を照らし続けるものが、
きっとあるのだと思います🌙
