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成功するのは今からだ。

🎧️グラスの角の曲を作りました♪
よかったら聴きながらお読み下さい♪

今から十年以上前のことだ。

親しくしていたコンサルタント会社の社長に誘われ、
東京で開かれた講演会へ出かけた。

講師は、『六十歳でもこわくない』の著者、鈴木かつ子さん。

当時、八十六歳だった。

ホテルの会場には大勢の人が集まっていた。

一段高くなった壇上の机に腰掛けた鈴木さんは、髪をきれいに後ろでまとめ、ベージュのスーツを上品に着こなしていた。

背筋はすっと伸び、終始おだやかな笑顔をたたえている。

とても八十六歳には見えなかった。

司会者が紹介した。

「鈴木さんは現在、ニューヨークの高級不動産を扱う会社の
副社長として活躍されています。」

会場が静まり返ると、鈴木さんは静かな口調で、
自分の人生を語り始めた。

若くして結婚し子どもを授かったが離婚。

その後アメリカ人と結婚し、アメリカで暮らすが
再び離婚して財産を失うなど
決して平坦な人生ではなかったらしい。

それでも人生をあきらめることはなかった。

六十歳になったある日、子どもから不動産会社の求人広告を渡され、
「お母さんも挑戦してみたら」と背中を押された。

面接へ向かう途中、時間があったので近くの店を見ていると
気に入った大きな敷物を見つけたので、おもわず買ってしまった。

その大きな敷物を抱えて会社へ向かい、
エレベーターにのると、親切にしてくれた女性がいた。

会社に入ると、その女性が社長だった。

その出会いが縁となり、鈴木さんは採用された。

しかし、英語も十分ではない六十歳の新人を
歓迎する社員はほとんどいなかったという。

そんな時、社長が声をかけた。

「何か私にできることはありますか。」

鈴木さんは迷わず答えた。

「私の写真入りの広告を出してください。」

当時は、日本人がアメリカの不動産を
盛んに購入していた時代だった。

広告をきっかけに、日本人客からの問い合わせが増え
鈴木さんはやがてトップセールスマンの一人になった。

それだけでは、彼女は満足しなかった。

アメリカで不動産会社を経営するために必要な
最上位の資格、ブローカーライセンスに挑戦したのである。

試験は難しかった。

毎年受けも、受けても落ちる。

それでもあきらめず、十年間受け続けた。

十年目。

「今回だめなら、もう終わりにしよう。」

そう決めて午前の試験を終えた帰り道、午後にも試験があることを知る。

急いで会場へ戻り、その試験も受けた。

その結果、見事に合格したという。

私は、その話を聞きながら思った。

十年間も、同じ夢を追い続けられる人がいるのだ。

運は、努力する者に味方するという
あきらめない人のところへ夢は
近づいてくるのかもしれない。

鈴木さんの座右の銘は

「今を生きる」だという。

そして続けた。

「私が成功するのは今からです。
 今、成功に向かって歩き始めています。」

八十六歳の女性が、
「成功するのはこれから」と言う。

その言葉に、会場は静まり返った。

さらに鈴木さんは、いたずらっ子のような笑顔で言った。

「私の夢は、百歳で女優デビューすることよ。」

会場は大きな笑いと拍手に包まれた。

講演が終わり、私は名刺を差し出した。

鈴木さんは受け取ると、にっこり笑って言った。

「ニューヨークへ来ることがあったら、連絡してください。」

あの日から十年以上が過ぎた。

今でも私は、ときどき鈴木さんの言葉を思い出す。

「私が成功するのは今からです。」

夢に年齢はない。

夢をあきらめた時が、本当の終わりなのだと、
あの日の講演が教えてくれた。

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