ハリー・ポッターの世界で見つけた勇気と笑顔の物語
大学生のときの話。
友人たちとUSJに行った日のことだ。
私は子どもの頃からハリー・ポッターが大好きで、念願かなってその世界に足を踏み入れられると思うと、それだけで胸が高鳴った。
大学生にもなって子どもみたいにはしゃぐのは少し恥ずかしかったけど、そんなことはどうでもよくなるほどのワクワク感だった。
一緒に行った友人たちもみんなハリー・ポッター好きだったから、その日私たちは完全に魔法界の住人。
バタービールでお互い「ひげ」を作って大笑いし、百味ビーンズで賭けをして楽しむ。
まるで、ホグワーツの生徒になった気分で、夢のような時間を過ごしていた。
そんな中、お土産屋さんを出たときに、ふと目に留まったのが、入り口に立っているスタッフの女性だった。
おそらく新人さん。
ホグワーツの制服はとても似合っていて素敵なのに、うつむいていて元気がなさそうに見えた。
少し気になって観察していると、理由が分かった。
その女性はゲストに向かって、「いってらっしゃい!」と声をかけていた。
けど、その声に気づく人はほとんどいない。
誰も彼女を見ていないし、反応もない。
その光景を見ていると、彼女の緊張が伝わってくるようだった。
声を出すたびに、どこかおそるおそるで、次第にその声も小さくなっていくのを感じた。
「あぁ、分かるなぁ……」と思った。
慣れない環境で頑張ろうとして、でもなかなかうまくいかない。
誰にも気づいてもらえないと、自分のしていることが意味のないように思えてくる。
私にもそんな経験が何度もあったから、彼女の気持ちが痛いほど分かった。
だから私は、思い切って大きな声を出してみた。
「行ってきます!」
その言葉と一緒に、手を振った。
すると、下を向いていた彼女の顔がふっと上がり、私を見た。その瞬間、まるで魔法がかかったみたいに表情が変わった。
「いってらっしゃい!」
とびきりの笑顔だった。あの笑顔は、今でもはっきりと覚えている。
あのときの彼女、今はどうしているのだろう?
ときどき思い出すたびに、「私ってお人好しだな」と少し照れくさくもなるけれど、悪い気はしない。
笑顔って、ほんの少しの勇気や思いやりで生まれるんだ。
それを教えてくれた、USJで出会ったちょっと恥ずかしがり屋な魔法使いと、あの日の私の物語。
