🎥 一人ゲーマーが自分自身と一対一で対戦

第1章:限界値のハーネス(The Threshold Harness)
目を覚ましているのか、それとも眠っているのか。もうその境界線すらわからない。
モニターの前に座り続けて40時間、俺の胸には軍用グレードの自動除細動器(AED)と、神経系の痛みを測定する「ペイン・スレッショルド(痛みの限界値)・ハーネス」がガチガチに装着されていた。
限界に達した俺は、自分が生きている証拠を確かめるため、デスクの上のガラスのコップを掴み、自分の手に叩きつけた。
ガシャーン! と破片が飛び散る。
だが、何も起きない。血は一滴も流れず、痛みすら一切感じない。現実の肉体は、完全に感覚を失ったただの空っぽの殻(シェル)だった。
その直後、画面の向こうでデジタルカーがガードレールに接触した。
――ガツンッ!!!
遅れて、俺の本物の胸に、骨が軋むほどの凄まじい衝撃と激痛が走った。ハーネスの警告灯が真っ赤にフラッシュする。
【痛みの限界値:残り1回】
システムのアナウンスが冷酷に告げる。
「警告:一般成人の許容限界を超える激痛をあと1回感知した場合、ショック死を回避することはできません」
そう、俺のすべての五感と命は、すでにこのシステムの中にアップロードされている。そして、このゲームオーバーのペナルティは「心臓停止」だ。除細動器が心臓を強制再起動してくれる「残機」はもうない。次の一撃で痛みのリミッターを超えれば、俺の脳が自分の身体を完全に破壊する。

第2章:恐怖のフィードバックループ(The Feedback Loop)
画面の中で操作を誤れば、現実の肉体にダイレクトに激痛がフィードバックされる。
急ブレーキを踏めば、現実の俺の肺からすべての空気が搾り取られる。少しでもスピードを出しすぎて車体がブレれば、その微細な振動が神経を焼き切るような痛みに変わる。
俺はただ走るだけでなく、「恐怖と痛み」を完全にコントロールしなければならない。 心拍数を上げず、完璧に冷静なまま、時速300キロの世界をノーミスで切り抜ける。少しでもパニックになれば、そのストレス自体が限界値のカウンターを進めてしまうからだ。
脳が恐怖で絶叫する。
「一体、どちらが先に死ぬんだ?」
画面の向こうでクラッシュするデジタルアバターが先か? それとも、痛みのショックで心臓が破裂するこの空っぽの肉体が先か? どちらにせよ、残された時間は残りわずかだ。

第3章:強制終了(The System Shutdown)
最後の急カーブ。モニターの向こうの車が、暗闇のサーキットを突き進む。
操作ミスは許されない。現実の部屋でどれだけ叫ぼうが、その声は誰にも届かない。俺の現実の指は、疲労と恐怖で完全に硬直している。画面の車がわずかにスピンし、タイヤが激しく白煙を上げた。
車体が激しく壁をこする。その摩擦の「感覚」が、ハーネスを通じて俺の脳へ一気に流れ込んでくる――。
確信した。もしこのレースで痛みのリミッターを超えれば、ゲームオーバーの画面すら表示されない。
その瞬間に、すべてのデータと共に、俺という存在自体が現実から完全に消去(アンインストール)されるだけだ。
「おい……動け、動いてくれ……!」
画面が真っ赤なノイズで歪み始める。システムが冷酷に囁く。
【警告:痛みの許容限界値を突破。システムを強制終了します】
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