見出し画像

AI業界の「先駆者」たちは何を見ているのか?— STech I Forum 2025 参加レポート


こんにちは、現役IT執行役員のグイグイです。⚡

先日、2025年10月21日(火)に開催された「STech I Forum 2025 先駆者と創るAI未来予想図」に参加してきました。

AI業界の最先端を走る様々な方々が登壇されており、そこから自社のビジネスに活かせるヒントや知見を得たいと思い、足を運びました。

私はメインのイノベーションステージで、オープニングから最後の特別講演まで、合計5つの講演を連続で聴講しました。各講演の概要と、私が特に強く感じた「示唆」や「気づき」を、ここにまとめておきたいと思います。


デジタルネイチャー(計算機自然)

【基調講演】創造性×AI×生産性:テクノロジーで再定義する未来の経営力


登壇者:落合 陽一 氏(メディアアーティスト・大阪万博パビリオンプロデューサー)

講演概要

メディアアーティストであり、大阪万博のパビリオンプロデューサーも務める落合氏からは、「デジタルネイチャー(計算機自然)」という氏が10年来研究するテーマが語られました。全世界の生物の総量(バイオマス)よりも、人工物質の総量が上回った現代において、人間と自然、デジタルの境界線は融合していく、という未来像です。

感想と示唆

2ヶ月ほど前にも落合氏のオンライン講演を拝見したのですが、今回特に面白かったのが、氏が実践する「DJ」と「音楽生成AI」の話です。

落合氏はDJプレイの際、「Suno」などの音楽生成AIで作成した楽曲を使っているそうです。かけている音楽はAIが作り、どの曲を選び、どのタイミングで切り替えるか、どんなエフェクトをかけるかは人間(DJ)が担う。

かつては明確だった「作り手」と「聴き手」の境界線がなくなりつつあります。これからは、センスのいい音楽を聴く人が、そのままセンスのいい音楽を作れる時代になる、という視点でした。

また、「AIは課題を解けるようになるが、人間を動かす“モチベーション”は誰が担うのか?」という問いも印象的でした。結局、人を触発し、行動させるのは人間なのではないか、と。

1970年の万博で岡本太郎が残した言葉からの考察「人間なんか進歩していない。文明が進歩しているだけだ」という言葉の引用も、深く考えさせられました。AI(文明)は進化しても、人間(我々)の本質は変わらないのかもしれません。

普段の仕事に直接活かせる話ではありませんでしたが、何十年も先を見据えて研究されている方の思考に触れ、非常に強い刺激を受けました。


両利きの経営

シリコンバレーに学ぶAI事業戦略の本質 ~企業の“稼ぐ構造”はこう変わる~

登壇者:櫛田 健児 氏(カーネギー国際平和財団 シニアフェロー)、新田 学 氏(Sojitz Tech-Innovation USA, President)

講演概要

シリコンバレーの最前線で活動するお二方から、AI時代の事業戦略について語られました。日本企業が得意とする「部分最適化」の延長線上には、大きなイノベーションは無いこと。そして、Waymo(自動運転)がそうであるように、一度体験すると不可逆なパラダイムシフトが起きるため、「顧客のペインポイント」をいかに見抜くかが重要であると説かれました。

感想と示唆

この講演で最も刺さったのは、「両利きの経営」を「シオマネキ(カニ)」に例えた話です。

多くの企業が、時代の変化に対応するために新規事業(AI事業など)を立ち上げようとします。これをシオマネキに例えると、既存の中核事業は「大きなハサミ」、新規事業は「小さなハサミ」です。

問題は、大企業の経営陣や幹部は、「大きなハサミ(中核事業)」で成功し、成り上がった人たちだということです。彼らは無意識に、「大きなハサミ」の基準やKPIで「小さなハサミ(新規事業)」を測ろうとします。

しかし、新規事業は「3年後の費用対効果は?」と聞かれても、「ゼロかもしれないし、主力事業になっているかもしれない。わからない」としか答えようがありません。

この「噛み合わせの悪さ」こそが、日本の大企業でイノベーションが起きにくい問題の本質ではないか、と強く感じました。新規事業に既存事業のモノサシを当てても、失敗するのは当然だという、非常に明確な指摘でした。


「お客様のためにベストを尽くす」というマインド

AGI元年!─AI世代の起業家が見ている“次の産業地図”

登壇者:田中 邦裕 氏(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)、千葉 俊介 氏(株式会社neoAI 代表取締役CEO)・寺澤 幸素 氏(株式会社neoAI 取締役COO)

講演概要

さくらインターネットの田中社長と、AIスタートアップneo AIの若き経営者2名による、新旧起業家対談セッションでした。AGIの登場により、産業地図がどう変わるかが議論されました。

感想と示唆

登壇された3名とも学生時代に起業されており、自分が学生だった頃とは1ミリも違う世界で生きてきた方々の話は、純粋に「すごいな」と圧倒されました。

このセッションで最も印象的だったのは、田中社長の言葉です。さくらインターネットも、これまでに何度も外資ビッグテックの波にさらされ、業績が大きく揺さぶられてきたそうです。

しかし、「ビッグテックが次に何をしてくるかを考えても、後手に回るだけで消耗してしまう。それよりも、ひたすらお客様と真摯に向き合い、お客様のために何がベストかを考えて尽くすことが大事だ」と語っていました。

これはAIや技術の話ではなく、ビジネスの本質そのものだと感じました。

これからAI事業に参入すれば、当然、激しい競争にさらされます。その時、最後に勝負を分けるのは、技術力だけでなく、「お客様のためにベストを尽くす」というマインドと、それを裏付ける行動なのだと、改めて認識させられました。


『これを正解にしたい』という熱い情熱や哲学

AIファーストによる事業開発 ~新規事業、人材育成はどう変化するのか~

登壇者:及川 卓也 氏(Tably代表、Technology Enabler)、神宮司 実 氏(株式会社ディジタルグロースアカデミア 執行役員)、一色 正治 氏(双日テックイノベーション株式会社アプリケーション事業本部 事業開発部長)

講演概要

AIを前提とした事業開発や人材育成がテーマでした。AIに代替されないスキルとは何か、また、組織として成果を出すためのAI導入はどうあるべきかが議論されました。

感想と示唆

この講演の冒頭で行われた会場アンケートが、日本の「今」を象徴していて非常に面白かったです。

  1. 「会社の業務で生成AIを使うことが認められている」→ 7割が挙手

  2. 「組織全体で明確な効果を体感している」→ 5%以下に激減

この結果に、会場全体がどよめきました。

ツール導入(契約)は、お金を払えばすぐにできます。しかし、それを組織として使いこなし、明確な成果を出す段階には、ほとんどの企業が至っていない。これが日本のリアルな実態です。

個人的には使っていても、組織レベルでの活用に至っていない。

ここにこそ、今後のビジネスチャンス(AI定着化支援やプロセスコンサルなど)があるのではないかと感じました。

また、登壇した及川氏の「AIに仕事を丸投げするのは、SIerに丸投げするのと同じでダメだ」という指摘や、「AI時代には、何が正解かわからない領域で『これを正解にしたい』という熱い情熱や哲学こそが重要になる」という話には、非常に熱量があり引き込まれました。

AI導入の成功事例として、「AIを使えるようになる」ことを目的にせず、「AIで時間を捻出し、その時間をお客様や仲間のために使う」ことを目的に設定した、という話も、すぐにでも参考にすべき視点だと感じました。


ブロードリスニング

【特別講演】AIと人が共進化する未来:社会実装のリアルと企業共創のかたち

登壇者:安野 貴博 氏(AIエンジニア / チーム未来党首 / 参議院議員)

講演概要

今回のフォーラムで、私が最も楽しみにしていたセッションです。AIエンジニアでありながら参議院議員でもある安野氏が、政治や経営におけるAIの社会実装について語りました。

感想と示唆

今、個人的に最も注目している政治家の一人です。当選からわずか90日ほどで、「みらい まる見え政治資金」などを次々とリリースし、目に見える形で「実績」を出している姿に、非常に期待しています。

安野氏が政治の世界に入った動機は、「バグを直したい」というエンジニアとしての根源的な欲求から来ている、という話が印象的でした。社会課題も、彼にとっては解決すべき「バグ」なのだと。

そして、安野氏が掲げる「ブロードリスニング」という思想。

これまでの「ブロードキャスト(一方的に大勢に伝える)」とは真逆の、「大勢の多様な意見を(AIを使って)聴く」という考え方です。

これまでは情報が多すぎて処理しきれなかったことが、生成AIの登場で実現可能になってきた。これは間違いなく、今後の企業経営にも応用できる思想だと感じました。

また、非常に興味深かったのが、永田町の内情です。

安野氏曰く、「(永田町も)変化していないことに対する危機感は、ほぼ全ての議員が持っている。ただ、具体的な『どうすればいいか』という答えを持っていないから動けない」のだそうです。

これは日本企業にも通じる話です。技術の革新的なスピードに対し、経営層が「アジリティ(迅速さ)の価値」を正しく評価できていないことが、変化のボトルネックになっている。

「いち早く変化に対応すること自体に価値がある」と経営者が認識し、そこにリソースを投資する判断ができるかどうかが、今後の企業の明暗を分けるのだと痛感しました。


全体を終えて

AI事業を考える上で、非常に有益な1日となりました。

「両利きの経営」の難しさ、「70%vs 5%」という導入と成果のギャップ、「ブロードリスニング」という新しい可能性、そして「アジリティの価値」。

これからの事業を考える上で、すべてのセッションが刺激的であり、先駆者たちから多くの貴重な示唆を得ることができました。


あとがきとお願い 💡

この記事が「ためになった!」と感じたら、♥️スキ・👍フォローで応援いただけると励みになります。
さらに深く学びたい方は、有料noteやメンバーシップで実践ノウハウを公開中です。

あわせて他の記事もぜひチェックしてみてください。


「気になる方はプロフィールや過去記事もぜひどうぞ。」
私のプロフィールはこちら
👇

私のサイトマップはこちら👇

おすすめ記事はこちら👇
生成AI時代のスタート地点に立ちたい方に非常におススメです。


#生成AI
#AIビジネス
#AI活用
#AIイベント
#AIレポート
#AI戦略
#ビジネス戦略
#両利きの経営
#イノベーション
#未来予測



いいなと思ったら応援しよう!

グイグイ ⚡ 圧倒的AI実務家 この記事が少しでも役に立ったと思ったら、サポートいただけると励みになります!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー