見出し画像

防衛省のイオンモール熊本内部映像より分かる事

防衛省が公開したイオンモール熊本の内部映像を見ると、まるで福島第一原発事故でロボットが撮影した建屋内部映像のような壊れ方をしていることが分かります。福島第一原発では、水素爆発によって建屋が大きく破壊されました。

一方、LPガスや都市ガスによる爆発事故は、一般的には「爆燃(ばくねん)」と呼ばれる現象です。爆轟のように衝撃波が音速を超えて伝播する現象ではなく、通常はそこまでの燃焼速度には達しないとされています。

ただし、2018年12月に発生した札幌・アパマンショップ平岸駅前店の爆発事故では、小さな不動産会社で行われていた除菌・消臭スプレー缶のガス抜き作業によって可燃性ガスが室内に充満し、大爆発が発生しました。その爆風で隣接する居酒屋まで吹き飛び、一帯に甚大な被害が及んだことは記憶に新しいところです。

この事故では、冬の北海道で窓を閉め切っていたことに加え、スプレー缶に使われていた可燃性ガスにはLPガスのような強い臭いが付けられていなかったため、誰も危険に気付くことができませんでした。密閉空間に可燃性ガスが滞留することの恐ろしさを改めて示した事故だったと思います。

あの事故を見た時、私は、「密閉空間に大量の可燃性ガスが滞留すると、爆燃であっても爆轟を思わせるほどの破壊力になることがある」ということを強く印象付けられました。

今回のイオンモール熊本の映像も、見た目の印象としては、それに近いほどの強烈な爆風だったように感じます。

テレビでは「LPガスは都市ガスより燃焼力が大きいので、飲食店ではLPガスがよく使われる」と説明している場面を見かけます。しかし、私はこの説明には少し違和感があります。

確かにLPガスは都市ガスより単位体積当たりの発熱量は大きいものの、ガス器具は使用するガスの種類に合わせて設計されています。そのため、同じ能力のガスコンロや厨房機器であれば、LPガスでも都市ガスでも調理時の火力に大きな差はありません。

飲食店でLPガスが採用される理由は、「火力が強いから」というよりも、都市ガスの供給状況や設備条件、災害時の運用などが関係しているのではないかと思います。

ガス漏れが発生した場合、LPガスは空気より重いため床付近に滞留し、都市ガスは空気より軽いため天井付近へ上昇します。そのため、ガス漏れ警報器の設置位置も異なります。また、どちらのガスにも保安上の理由から臭いが付けられています。

もし今回、建物内に爆発を起こすほど大量のガスが滞留していたのであれば、現場にはかなり強いガス臭が漂っていた可能性がありますし、警報設備も何らかの反応を示していた可能性があります。もっとも、実際に警報設備が作動したのかどうかは、現時点では公表されていません。

もちろん、今回の事故が水素爆発のような「爆轟」だったと断定することはできません。LPガスであれば通常は爆燃ですが、大量のLPガスが建物内に長時間滞留し、一斉に着火したのであれば、爆轟と見間違えるほど大きな爆圧が発生した可能性も考えられます。

商業施設は窓が少なく、気密性が高い建物が多いため、可燃性ガスが滞留しやすい条件がそろう場合があります。私は、地震が発生した時点でLPガスのバルク設備は自動的に供給が遮断されるものだと思っていました。今回、その遮断設備がどのように作動したのか、あるいは正常に作動したのかも、事故原因を解明するうえで重要なポイントになるでしょう。

現在、全国のイオンモールでは、計画されていた各種イベントの中止が次々と発表されています。理由は「抜本的な安全対策の見直しが必要」とのことですが、その意味では、他の商業施設でも同様に安全対策の見直しが必要なのではないでしょうか。

阪神・淡路大震災や東日本大震災の直撃を受けた身としては、震災発生時に被災地以外の地域が果たすべき役割は、「日常生活を続けること」だと思っています。

だからこそ、今回のような悲惨な事故が発生したことは重く受け止めるべきですが、通常営業は続けながらイベントだけを中止するという対応には、少し違和感があります。

抜本的な安全対策が必要なのであれば通常営業そのものを見直すべきでしょうし、通常営業を続けるのであれば、せっかくの夏休みイベントは実施し、その場で被災地への募金活動や支援活動を積極的に行う方が、多くの人の気持ちにも応えられるのではないかと感じています。

私たちが今すぐできることは、地震が発生した際、周囲の安全を確認したうえでガスの元栓を閉めることではないでしょうか。

一般家庭はもちろん、大型施設においてもガス遮断設備や緊急時の対応手順を改めて見直す契機となり、このような悲惨な事故が二度と繰り返されないことを心から願っています。