喫茶店とタバコの煙と日本語文法「迷惑受身」の話。
最近、月に1-2回のペースで、行ったことがない喫茶店やコーヒースタンドやバリスタがいるカフェを訪れています。
きっかけは釜山旅行。現地で思うように食事ができなかった分、ローカルのカフェ巡りがすっかり楽しくなって、それが帰国後の月イチ習慣になりました。
県内を中心に、昔ながらの喫茶店や、バリスタのいるコーヒースタンドを選んで訪れています。全国チェーンのカフェももちろん好きで、週の振り返りや予定の整理にはよく使いますが、今回の“カフェめぐり”では、やっぱりローカルの個人店がメイン。
さて、今回はgoogle mapを見ていたら見つけたとある純喫茶へ行ってみることにしました。
平日のランチ後だったので、お客さんは私とカウンターの常連さんひとり。店内はレトロで、雰囲気もとてもよくて、お店のマスターの雰囲気もすごく良くて、ああ、これは当たりだな…と思った….んですが…
突然タバコのにおいが。
そう、喫煙OKのお店だったんです。最近、禁煙のカフェがほとんどだったので、事前にチェックもしていなかった…
しかも、その常連さんがかなりのスモーカーで、20分ほどの間に3本も吸われてしまいました…。
最近、私のまわりにタバコを吸う人がいないので、久しぶりの煙に少しやられてしまって。
結局、20分ほどで喫茶店を後にしました。
お店に入ってからは、トラベラーズノートを開いて、noteの記事の下書きを書いていました。
最近は、noteを書くときはまず手書きから。思いついたことをざっくり書き留めてから、記事に仕上げる流れが自分に合っていて気に入っています。
今回も、「喫茶店に行った感想でも書こうかな」と思って書き始めたんですが、自然と出てきたのがこんな言葉でした。
「最近、近くでタバコを吸われるという経験をしていなかったし、私の周りにスモーカーがいないし……ちょっと私には長く滞在するのがしんどいかも。」
「しかも、ヘビースモーカーで、喫茶店にいる20分の間にタバコを2〜3本吸われた。」
このニ文を書いた瞬間、ふっと気づいたんです。
あ、これってまさに「迷惑受け身」じゃない?と。笑
そこで今回のnoteのテーマが決まりました。
喫茶店と、迷惑受け身について。
迷惑受け身、って知っていますか?
日本語文法には「迷惑受け身」と呼ばれる表現があります。
たとえば、今回の状況ならこう言えます。
「他のお客さんにタバコを吸われました。」
自分は吸ってない。でも他人の行動によって不快な思いをした、というニュアンスです。
この“被害”や“困った感”を、文法(受け身)で表現できるのが日本語のおもしろさです。
私の定番の例:「父にプリンを食べられました」
私がこの文法を教えるとき、よく使うのがこのプリンの話。
私はプリンが大好きで、ある日、家族みんなの分を買って帰りました。
でも自分の分は「明日の朝に食べよう」と決めて、冷蔵庫へ。
次の日の朝。冷蔵庫を開けたら、ない。
私のプリンが、ない!ない!ない!
そして判明したのが、父が私のプリンを食べた。という事実。
私が大好きなプリンを。楽しみにしていて、朝プリンが食べられると思ってワクワクしながら起きたのに。食べ物の恨みは怖いよ。
この時の私の心情を一言で表すとしたら私はこう言います。
「私は父にプリンを食べられました。」
これが受身形を使う文法の中の1つ、「迷惑受け身」です。
英語ではどうなる?
数年前、日本語と英語のバイリンガルで、日本語を流暢に話す当時15歳だった生徒さんに、
「父にプリンを食べられました、を英語で言うとなんて言う?」と不意打ちで聞いてみました。ちょうどその時、他の生徒さんとのレッスンで受身形を扱っていたんです。
すると、彼は迷いなく、"My dad ate MY pudding." と言いました。
MYをしっかり強調して。(他にも、いくつか例を出しましたが、それは今回割愛します)
そうか、英語では文法ではなく、語調や単語のチョイスで“ショックだった”“迷惑だった”を表現するんだな、と実感。
日本語は「自分がどう影響を受けたか」にフォーカスして、文法で表現するけれど、英語は「誰が何をしたか」を中心に語ることが多いんですよね。
書きながら気づく、言葉のかたち
最近、noteを書くときはまず手書きの下書きから始めています。
お気に入りのトラベラーズノートにnoteを書く下書きの「リフィル」を作っていて、そこにざっくり思いついたことを書き留めます。そして、それを元にnoteを書いています。
実は、今回、喫茶店で下書きを書き出した時の、元々のテーマは「喫茶店巡り」だったんです。
でも喫茶店で書いているときにタバコの煙が気になって、20分の間に2−3本吸われたと書いた瞬間、
ふと「迷惑受け身」の例としてぴったりだなと思って、それが今回の記事の軸になりました。
こうやって、「書くこと」で気づいたり、「その場の空気」がきっかけになって、言葉がつながっていくのがとても面白いなと思います。
昔の私と、今の私
昔の私と、今、伝えたいこと
そういえば、学生のころの私は、英語の「受け身」や「未来形」があまり得意じゃありませんでした。
「え?日本語ではこんなふうに言わないのに」とか、「意味はわかるけど、なんだか不自然だなぁ」と思うことがよくありました。
授業では、文法の“かたち”だけを覚えていた感じで、
どうしてその形を使うのか、どういう気持ちがそこにあるのか、までは分からなかったんですよね。
でも、いま。
日本語を教えるようになって、日本語の文法の奥にある「感情」や「視点」に触れるようになって、
ようやく見えてきたものがあります。
日本語では、英語で言えないことを「文法」で表している。
英語では、日本語のように「文法」で迷惑やショックを表すのではなく、「言い方」や「トーン」「単語の選び方」で伝えることが多いんだな、と改めて感じました。
バイリンガルの生徒さんとのやりとりや、自分自身のことばへの興味から、
昔モヤモヤしていた部分が、少しずつ腑に落ちてきています。
教えることは、学び直すこと。
そして書くことで、また違う視点が育っていく。
そんな実感があります。
昨日の喫茶店、タバコの煙はちょっとしんどかったけど、
それがきっかけで思い出した文法がありました。
(そして、コーヒーも雰囲気も良かった。ただ、私にとってはタイミングが悪かっただけ。)
こういうふうに、日常のなかでふっと浮かぶ言葉や文法を、
自分の言葉でメモにしておけることが、今の私にとっての小さな楽しみです。
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