【詩】倫理が悪い
右の方から美味しい匂い
匂いにつられてワラワラと
あなたは答えをしっている
だから左に向かいたい
そんなことはゆるされない
安堵の紐でつかまえる
そしてささやく
みんなで食べたら美味しいよ
── 倫理という名の協調圧力
🔍 読み解きポイント
この詩における「倫理」は、正義ではなく共感のシステムとして機能している。右の匂いに惹かれる自然な動きよりも、「左に向かうべき」という“みんなの感じ方”が優先される。
人を動かすのは理性ではなく、共感の圧力である。ここでは“安心”が拘束の手段となり、危機感をあおる言葉はむしろ人々を“不倫理”へと導く。
そして「みんなで食べたら美味しいよ」という声が、倫理という名のやさしい囲いを完成させる。たとえそれが、他者から奪う行為であっても──共感の中では“悪”さえも分かち合える。
【詩集】言葉にしない哲学|II章:「正しさ」の街を歩く
ひらがなひめか
