Radiohead - Daydreaming 【映像編集のデザイン】
はじめまして、こんにちわ。ひらまきと申します。
普段は映像ディレクターとして広告やMVなどを作る仕事をしています。主な仕事としてadobe、グーグル、キットカット、マクドナルド、フジロック、などの広告映像やらせてもらっていて、2019年には東京喰種[S]の監督もやらせていただきました。
興味がある方いらっしゃれば僕のWebサイトを覗いてみてくださいませ。
https://www.kazuhikohiramaki.com/
このブログについて
このブログは映像制作の編集について、フォーカスして考えようというものです。編集テクニックとか、PremiereのTipsを紹介するといったものではありません。(そういう話題が横入りしてくる可能性は大いにあります)
「なぜこの繋ぎになったのか」「この編集の意味、効果は何か」などそういったものを考察することで、映像の捉え方が変わったり、細かいところにまで拘ったディレクターや、編集マンの仕事に拍手を送るというものです。
Radiohead - Daydreaming
はい。はじまりました。記念すべき第一回は、みんな大好きRadioheadのDaydreamingのMVです。Radiohead、昔のバンドスタイルももちろん良いんですけど、新しいアルバム出すごとに凄みが増していって「こういう歳の取り方してぇわ」って思っちゃいますよね。
で、そんな凄みがすごいバンドのMVを担当しているのはポールトーマスアンダーソン監督です。映画、パンチドランクラブとか、ゼアウィルビーブラッドで有名です。パンチドランクラブめちゃ良いですよね。。。いまや映画監督のイメージ強いですが、元々はMVも結構やっていて、最近のRadioheadのMVは何本かポールがやってますね。Thom YorkソロのAmimaも彼のディレクションでした。では早速MV本編をみていきましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=TTAU7lLDZYU
いかかでしたでしょうか。
「いろいろ意味ありげな内容だけど、まったくわからない、が、雰囲気が曲やRadioheadの世界観にもあってるし、Daydreamingってタイトルともあってる気がする。トムヨークは歩いているだけでいいな」
みたいな感想でしょうか。そうですよね。僕もそう思いました。ですが、このブログを読み進めるにあたっては全くそれで問題ありません。なぜなら、これからお話しするのは、編集の話なのですから。
もちろん、伝えたい内容に沿って編集することが大前提ではありますが、今回はもっと表面的な話をしましょう。このMVの意味が気になりすぎて先に進めないよ、という人はこちらで詳しく解説されているので、よかったらどうぞ。
https://vimeo.com/178823364
MVっていいですよね。ディレクターにとってMVはとってもありがたいお仕事だと僕は思います。広告の仕事の方が予算のあることがほとんどで、色々できることは多いんですけど、急にこの世から消えちゃうんですよね。新商品が発売したり、シーズンが終わってしまうとパタリとその広告を目にする機会がなくなってしまいます。ネットにも残ってないことが多いし。広告の役割を考えるとその方が正しいと思うので、文句があるわけではないのですが...
その点、ミュージックビデオはほとんど消えないですよね。アーティストが不祥事起こすと消えるくらいで。日本のMVもyoutubeにフル配信される時代になってから、どんどんビデオが作られているし、若いディレクターでも活躍の場が増えました(民生機とプロ仕様の差がなくなったってのもでかいですけど)
理解のあるアーティストならディレクターの名前も載せてくれるし、仕事が残るってクリエイターにとって大事なことです。
話をDaydreamingに戻しましょう。このMVを編集にフォーカスしてみるとどうでしょうか。特に変わったことしてない気がしますね。そう思えることがこの編集の良さです。
このMVのほとんどの編集点は、ある一つの手法で構成されています。
それはアクションつなぎと言われるものです。
おそらく映像編集に関わったことがある人なら一度は聞いたことのある手法だと思いますし、映像という文化がずっと身近にあった若い世代にとっては当たり前のことすぎて、教えてもらわなくても自然とアクションつなぎをしている可能性すらあります。
アクションつなぎとは
「アクションの途中でカットして、別のアクションをつなげる」という手法です。(アクションつなぎの詳しい話は後述します)
つまりDaydreamingにあてはめると、「トムが扉を開ける途中」でカットをして、別のカット(別の世界)の「扉を開けている途中」にカットをつなげるということをひたすらやっているMVなんです。そしてそれ以外のカットは極力抑えられています。それはなぜか。このMVがDaydreamingだからです。
見終わった時の感想を思い出してみてください。「音楽とあってる」「タイトルにあってる気がする」
皆さんも似たような感想だったかと思います。つまりDaydreaming、白昼夢を見たかのような、フワフワとした不思議な映像だったと。
その感覚は当たり前ですが、ディレクターによって意図的に作られています。細かく分解してみましょう。
まず、フワフワの原因の半分以上は音楽です。「いや編集じゃないんかい」「ディレクターの意図関係ないやん」と自分でもツッコミそうになりますが、映像は複合芸術です。映像は画と音と時間で構成されていて、画に関しては、実写でもアニメでも文字でもなんでもアリです。その中で音はとても重要な役割を果たします。MVならなおさらです。
「映像作品を見て、受け取る情報の40%~50%は音」という話は映像業界の通説になっています。有名なMVの音楽だけ変えた2次創作ってあるじゃないですか。曲変えたら雰囲気も変わって新しい面白さが生まれるってのはそういうことです。
では、画の方ではどんな仕掛けがされているか。まず、扉をあけたら別の世界に繋がっている。
これ、めちゃくちゃシンプルですが、このMVの企画の骨ですね。
このMVを一言で表すなら、「トムヨークが次々と扉をあけるといろいろな世界と繋がっている映像」
また半分以上のカットがステディカムで撮影されてます。
https://www.youtube.com/watch?v=B7ABdAPYjT0
こういうやつです。カメラと重しをヘビが絡みついてるみたいに腰にくくりつけて、浮遊感のあるカメラワークを実現する装置です。映画とかでよく使われます。
かなり特殊な技術で、ステディカムだけやる専門の人がいます。経験とめちゃくちゃな体力が必要。
さて、他にもいくつかの要素があるのですが、そろそろ編集の話をしましょう。先ほど話が出た、アクションつなぎ。このアクションつなぎは、企画を実現するために取られた手段なんです。
ドアを開ける→別の場所に移動している
これを繰り返すわけですから、編集点が→の部分に入るのは当たり前なんですよね。例えばこれをカットではなく、画面手前の柱や壁を利用してシームレスにつなげるって手もあるのですが、それだとロケーションに制限がでてきてしまいますし、トムヨークの「扉を開ける」という動作をよりフォーカスした作りにしたんでしょう。
そしてもう一つ、アクションつなぎを活かすために、基本的に1シチュエーション1カットが採用されています。ステディカムで浮遊感のあるロングカットをアクションつなぎで組みあわせて全体的にフワッとさせています。
ではアクションつなぎを細かくみてみましょう。

まずひとつめのアクションつなぎです。30秒付近のこのカット。冒頭からここまで1シーンだったのでこのカットが最初の編集点になります。上のGIF画像みてもらうとわかると思いますが、扉の位置関係にあわせて編集していますね。これがアクションつなぎです。扉が動いている時に編集点を打つというのがポイントです。
こちら、例えば1カット目のトムが扉に手をかけた瞬間に、編集点を打つという方法もあります。
そうすると。。。

これでも良いじゃん。
って思いますか?確かにテンポ感はこっちの方が良い気がしますね。サクサク進む感じあるし。
これは1カット目の後ろを12フレーム削ったものです。
フレームとは映像を輪切りにした単位です。映像は静止画の連続でできているんですね。このMVの場合、1秒=24フレーム(24枚の静止画)で構成されています。なので12フレーム削るということは、0.5秒削ったことになります。
ただ、Bタイプの場合、ちょっと急いでいる印象がでますね。
また「入る」動作よりも「出ていく」動作に重きを置かれた編集のように感じます。
しかし、このBタイプの編集もアクションつなぎです。
扉をあける「動作」を軸に編集することでスムーズな流れを作ります。Bタイプの編集をよくみて欲しいのですが、扉に手をかけて一瞬扉が2cmくらいトム側に動く箇所があると思います。
![Radiohead Daydreaming [1080p].00_08_23_18.静止画001](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/17613335/picture_pc_e613a87021073354663a697aaa62f3ee.jpg?width=1200)
ここですね。これがBタイプ、1カット目のラストフレームなので、これ以上扉は開きません。
ただ、これがあるかどうかで「扉は手前に開く」という認識がされるわけです。
このように、アクションつなぎは決して扉の位置を完全に同期させなくても、成立させることができます。
人間の目は(脳は)動きの繋がりを補間するようにできているので、編集で時間や動きのスピードを意図的に操作することが可能なのです。
つまり。。

こうです!(伝わってくれ)
もとの編集は扉の位置関係をバチっと合わせて編集しているので、扉の開きはじめと、開ききったタイミングが遅くて、途中の動きが速い。
が、Bタイプの編集は開きはじめの編集をカットしているので、そこが省略されて、元の編集と比べると、急に扉を開けている印象がしませんか?
そういうところなんです!編集というのは!
Bタイプの編集は、確かにテンポ感は上がったように感じますが、、これが1つ目のカットであるという点と、これが「夢の入り口」と考えると、元の編集の方がこのMVにはやっぱり適しているということなんですよね。
余談ですが、先ほどみてもらった、扉のスピードを表した拙い図があったと思いますが、スピードがマックスになった時に編集点つけると気持ちよく変化させることができます。これは実写だけでなくモーショングラフィックの世界でもそうです。脳の補間を利用してあげるんですね。
こちらで解説されていることは実写でも応用できるので、気になる方はどうぞ。
https://the12principles.tumblr.com/
1カット目でこの分量はよくないですね。
ただ、MV的にはシンプルな編集なので、この1カット目の繰り返しが様々な場所で行われていきます。編集のテンポ感も崩さずに進行していきます。
編集のテンポが崩れてくるのは1分45秒あたりから。
https://youtu.be/TTAU7lLDZYU?t=96
![Radiohead Daydreaming [1080p].00_01_44_14.静止画002](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/17615476/picture_pc_203b7e3597ce07076a01c2e9dff21ccb.jpg?width=1200)
このあたりから、場所がロケっぽくなってきます。出てくる人も現地の人っぽい感じがして、ドキュメンタリー感ありますね。
1シチュエーション1カットの法則も崩れてきますし、ステディカムでもなくなります。いよいよ迷い込んじまったぞ。みたいな顔してますね。良い顔。
![Radiohead Daydreaming [1080p].00_02_02_16.静止画003](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/17615616/picture_pc_a2f2406bd234666506444a0a9ecceeb3.jpg?width=1200)
で、2:18のここ。
https://youtu.be/TTAU7lLDZYU?t=136
![Radiohead Daydreaming [1080p].00_02_18_17.静止画004](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/17616011/picture_pc_a5e82ed756aef2f931e552e3781e6e15.jpg?width=1200)
これまで、あからさまに音楽に合わせた編集点はありませんでしたが、ここの音楽の展開のタイミングで開放感のある画をいれてきました。とても気持ちのいい展開ですよね。これまでゆったりとした雰囲気ではありましたが、どの空間もどこか閉鎖的で、扉を開け続けてついに外に出れたという感じがします。
ここでもうまい具合にアクションカット使われています。
ただ今までの使い方とはちょっと違いますね。2カットともバックショットです。

扉が似ているのでわかりづらいのですが、ここの1カット目と2カット目はおそらく別の場所です。扉の横の傷とかみるとわかりやすいです。
編集点に注目してみると、今までとは違って扉が開いている途中にカット点を打っていませんね。あれ、僕が1カット目でお見せしたBタイプの編集点に似てませんか?
Bタイプの考察を思い返してみると、この編集は「出ていく動作」に重きが置かれている編集のやり方です。この方法をとることで、勢いよく外に飛び出した感が生まれ、音楽の展開も相まって開放感を最大限に表現できていますね。
(おそらくですが、1カット目の扉の先は開けてもただの部屋なので、真っ暗なはず。なので、直射日光が入らないからこの編集にしたというのもありえます)
ここの間奏部分から編集はテンポを上げていきます。
扉でシチュエーションが変わるというルールは崩され、トムの動きにあわせてカットが次々に変化していきます。

階段登っただけで別の場所に移動したり。
これも左手の動きがアクションつなぎになっているので、スムーズにみえますね。
音楽のクライマックスに向かってどんどんテンポをあげていく編集点。。
https://youtu.be/TTAU7lLDZYU?t=231
このあたりから扉の「アクションつなぎ」とか無視されていくのですが、その中でもいいなと思ったのがこのカット

1カット目は扉を引いているのに対して、2カット目は扉を押してるんで、厳密には繋がってないのですが、テンポが上がりきった編集の中でこれをやられると違和感なく見れちゃうんです。
おそらくこれは扉の開く方向(画面左に開く)があっているので、トムが右に入って左に出ていくという違和感も無視して繋がりがよくみえているのかと。

2カット目を左右反転させてみました。思ったより違和感ないな。。。
ということは繋がりの良さというよりもカオス感を表現しているということなのかもしれませんね。扉を引いたはずなのに押して出てくるとか。確かに表現的には元の方が面白いか。
このMVの全べてのカット点をタイムラインに載せて視覚化してみました。
ちょっと見え辛いのですが、上のバーが曲の構成。イントロとか書いてあるやつです。
でその下の水色の2本線が映像データで、縦の切り目が入っているところが実際にカットされている位置です。

いや、イントロ長いな。あと全然歌ってないですね
明らかに間奏部分、音楽でいうとアルペジオの音数も増えて少しハラハラさせるような展開の部分にカットを重ねているのがわかります。意識的に緩急を使いわけているように思えます。ラスト1分くらいのカット点が短いのは、4:56からずっと雪山のシーンが続くからでしょう。
https://youtu.be/TTAU7lLDZYU?t=293
カット数は56。この尺にしては少ない気がします。冒頭30秒はほぼ1カットですし、1つ目の間奏(2:17)まで13カットしかありません。そもそも最初の読後感はフワフワだったワケなので。編集点が少ないのは当然かと
編集に特化してRadioheadの名曲MV、Daydreamingをみていきましたが、いかがだったでしょうか。
はじめてブログ書いたので、終わりどころわからなかった。。あとノープランで最後まで書いたので、文脈ぐちゃぐちゃなのはお許しください。
ただ、良いなと思った映像には必ず小さな仕掛けがあります。ディレクターやエディターの細かい仕事の積み重ねが最終的に映像のクオリティをグンとあげることになります。そのためにフレーム単位で編集することは当たり前になってます。
長くなってしまいましたが、書いているの楽しかったので、これからも暇をみつけて職人たちに拍手を送るようなブログを書いていこうと思いますので、これからもよろしくお願いします。
