ゼノギアスのロボットアニメ・特撮ネタ
30周年間近と書くと恐ろしいが、やっぱり『ゼノギアス』は最高だ。『AOR』収録の文章内でも言及したが、昔から指摘されているようにロボットアニメネタが多い。まず主人公たちがロボットに乗ってるしな。どうしても『新世紀エヴァンゲリオン』とばかり比較されるし、1998年発行の『スクウェアマニアックス』では、高橋哲哉氏本人が「作劇において影響を受けた」と言及しているので、それは仕方ない。しかし『ゼノギアス』の企画は95年から動いているので、『エヴァ』TV版と併走していたと考える方が正確だと思われる。同『スクウェアマニアックス』掲載記事では、『ゼノギアス』がグレッグ・ベア『ブラッド・ミュージック』やアーサー・クラーク『幼年期の終わり』に対するアンサー(要約)とも話していて、こっちの方が重要と思われる。千葉暁『聖刻1092』や神林長平小説(エリィが「あなたの魂にやすらぎあれ」って言ってるし)などもだいぶ元ネタなのだが、ここは明確なロボットアニメネタに絞って書き出してみた。
装甲騎兵ボトムズ
スラム街的なキスレブと、そこで開かれているバトリング(ギアと呼ばれる機動兵器を用いた試合)はモロである。街中でコーヒーを飲むイベントがあったら絶対に苦くなくてはいけないところだった。ゲームではこのバトリングに参加し、無数のカリギュラたちに勝利しないと先に進めない。
主人公キリコが無自覚のまま絶対的な存在ワイズマンへ呼び寄せられていたという展開は、『ゼノギアス』の兄弟ともいえる『FF7』のリユニオン設定にも通じる。なお、ワイズマンとはフェイに助言を与える人物の名前に使われている。
キリコとフィアナに贈られた「60億年目のアダムとイブ」は、転生を繰り返し続けるフェイとエリィ(とその前世たち)にピッタリだ(?)
今はもう閲覧できないが、嵯峨空哉ウェブサイトのFAQコーナーにて、『ゼノギアス』が企画されるずっと前から「多重人格の傭兵が主人公」、「打ち捨てられた女性人格を持つAIとの出会い」といったアイデアがあったと書かれていた。兵士(ソルジャー)が多重人格であるという設定は『FF7』にも受け継がれていると考えたくなるところだが、実際このアイデアがどこまでスクウェア開発陣でシェアされていたかははっきりしていない。『ゼノギアス』のプロットや世界設定は、多数のオタクなスタッフたちによって多分に肉付けされている。
ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日
マリアとゼプツェンは主人公・草間大作とジャイアントロボがあてはまる。アハツェンを駆るマリアの父ニコラとのやりとりは、大作とその父親である草間博士の会話を思わせる。なお、アハツェンに組み込まれた良心回路は『人造人間キカイダー』由来だろうが、2000年にはリメイク版『人造人間キカイダー THE ANIMATION』が放映された。
ゲーム序盤のボスとして登場するカラミティはゼプツェンのプロトタイプ的存在だが、これは特撮版『ジャイアントロボ』に出たニセジャイアントロボ(というかメルカ共和国が作ったそっくりロボット)の名前にちなんでいる、はずだ。ゼプツェンはドイツ語で17の意であり、『大鉄人17』とかけていると思われる。兄弟機アハツェンは18。余談だが『ゼノギアス』の翌年にアーケードで稼働した『超鋼戦紀キカイオー』にはディアナ17(読みはセブンティーン)というロボットが出ていた。

機動武闘伝Gガンダム
『地球が静止する日』と同じ今川泰宏監督が担当したガンダムシリーズ。バトリングはガンダムファイト(世界各国のガンダムを戦わせるオリンピック的なもの)ともひっかけている、かもしれない。東方不敗マスターアジアとマスターガンダムは、『ゼノギアス』における主人公の宿敵グラーフと彼が駆るORヴェルトールである。そして謎のお助け仮面ワイズマンとグラーフが同一人物というか、別人格同士という設定は『Gガンダム』の物語の焦点となるキョウジ・カッシュとシュバルツ・ブルーダーそのもの。
親追いの物語は今川作品において重要なモチーフである。遺言を間違って解釈してしまったり、行動の動機が誤解に基づくものであったり。『ゼノギアス』では、フェイの別人格であるイドが父親と母親への怒りを行動理念にしていたところを、真実に触れることでフェイやその他の人格と和解する。母親がだいぶそっちのけにされ、女性が自己犠牲的な立ち位置に終始しがちなのも今川作品らしいとはいえばそうか。
もう一つ重要なのが、「事情をすべて知ってる人間が主人公のすぐそばにいるけど、大切なことを大切な時に伝えられない」という図。今川作品では『ハーメルンのバイオリン弾き』(1996)『鉄人28号』(2004)などで頻発する。『ゼノギアス』ではシタンである。

機動戦艦ナデシコ
『ナデシコ』自体が『エヴァ』に並んで過去の作品というかロボットアニメ・特撮にまみれていた子供時代へ手を振りまくる内容である。つまりは『ゼノギアス』的だ。巨大ロボットGエレメンツ(これがもう『勇者シリーズ』とか合体ロボットモノ自体へのトリビュートなのだが)を讃える歌がソラリスの教科書に載っているという設定は、『ナデシコ』における劇中劇「ゲキ・ガンガー3」と木連の関係を思わせる。木星へ移り住んだ人類の子孫たちの国家こと木連では、古代の先祖たちが地球から持ち込んだとされるアニメ「ゲキ・ガンガー」がプロパガンダ的に使用されている。
ウルトラマンA
エースキラーがウルトラ一族を磔にしているシチュエーションは、エリィが単身カレルレンたちのもとへ辿り着いた先で目にした仲間たちと重なる。ここで筆者が勝手に紐づけてしまうのが、ロボットアニメ・特撮と並んで『ゼノギアス』のプロットに根をはっているニーチェが『この人を見よ』で提唱する彼の世界観「十字架に架けられたもの対ディオニュソス」である。なおディオニュソスとは、神を否定するカレルレンでありそこには『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のシャア・アズナブルさえ見出すことができる。ちなみに『ゼノギアス』はユング心理学やジャック・ラカンも知的ソースとなっており、高橋哲哉は『ザ・プレイステーション』Vol.126掲載「箱崎エレメンツ」にて両者の名前を挙げている。

余談。Gエレメンツの一員ケルビナの「合体しましょう」は、これまたパロディだらけの『破邪大星ダンガイオー』に由来していると信じたい(別になんでもいいだろ)。そして『ゼノギアス』の6年弱ほど過ぎたのちに登場した『創成のアクエリオン』の決め台詞に「合体」が出てくるところに、『ゼノギアス』を感じたのは筆者だけではないはずだ。天使がモチーフだし。
『冥王計画ゼオライマー』では、黒幕の科学者が主人公の少年の肉体に寄生というか人格を移植して生き延びていた。フェイとイドの切り替わりはちょっと似ている。『ジャイアントロボ 地球が静止する日』や『ダンガイオー』のようなOVAからの影響を見ていると、フェイとエリィのベッドシーンも『メガゾーン23』からではないか。こんな風に考えると、エンディング内でカレルレンが別れ際につぶやく「お前たちがうらやましい」も、『メガゾーン』PART2ラストのBDかと思ってしまう。
まあこじつけ含めて、挙げるだけならキリがない。『ゼノギアス』を再訪するには、こうした記号単位ではなく、それらがいかに使われているかという目的が必要だ。目的は正確な再現のみにあらず、『ブラッド・ミュージック』や『幼年期の終わり』に対して抱かれていたように、「わたしならこうする」というあり得た未来を描くために過去を持ち出しているのである。エンディングは要約すれば「ゼノギアス大勝利 希望の未来へレディ・ゴーッ」、フェイが愛するエリィと一緒に生きて仲間たちのもとへと帰還するエンドだった。旧劇『エヴァ』のあとにこれが出たというのがたまらんな。
