『竜馬の如く夢は世界を駆けめぐる』 第九章 改訂版『大学付属のELIについて』
米国大学付属のELI(英語語学学校)について
大学に付属するELI(English Language Institute:英語語学学校)には、大きく分けて二つの目的を持つ留学生が在籍していた。
第一に、英語の基礎から学びたい留学生である。英語で「聞く・話す・読む・書く」の四技能を身につけ、日常生活や仕事で英語を使えるようになることを目標としていた。
第二に、アメリカの大学や大学院への進学を目指す留学生である。彼らは大学入学に必要な英語力を身につけるため、TOEFLの高得点を目標に勉強していた。
ELIの教育目的
ELIでは、次のような目的に沿って授業が行われていた。
英語の基礎能力を身につける。
TOEFL受験の準備をする。
アメリカの文化や生活を学ぶ。
大学・大学院へ進学できる英語力を養成する。
クラス編成
学生はレベル別にクラス分けされていた。
基礎クラス(Basic)
中級クラス(Intermediate)
上級クラス(Advanced:大学進学レベル)
授業内容
どのクラスでも、次の科目を中心に学習した。
英文法(Grammar)
英文読解(Reading)
英作文(Writing)
英語語彙(Vocabulary)
リスニング・スピーキング(Listening & Speaking)
授業はすべて英語で行われた。毎日の宿題は当然のように出され、予習・復習、とりわけ復習を欠かすことはできなかった。宿題をしてこない学生はほとんど見かけなかった。
各講座の終了時には達成テストが実施され、合格すると次のレベルへ進級できる仕組みになっていた。
TOEFLとSAT
大学進学を希望する留学生は、TOEFL(Test of English as a Foreign Language)の受験が必須であった。TOEFLは、アメリカの教育試験サービス(ETS)が実施する、非英語圏出身者向けの英語能力試験であり、その成績によって志望できる大学が決まる。
また、当時(1985年)はSATの科目別試験(SAT Subject Tests)も実施されており、英語、歴史、数学、自然科学などの学力試験を受験することができた。日本人留学生は数学では高得点を取る者が多かったが、文章題では英語の語彙力が求められるため、単語の意味を正確に理解できなければ解答は難しかった。
ELIは単なる英会話学校ではなく、アメリカの大学教育へ進むための「準備教育機関」としての役割を担っていたのである。
米国大学へ入学したい留学生について
米国の大学付属ELI(English Language Institute:英語語学学校)は、英語を学びたい外国人に広く門戸を開いていた。私が在籍していた当時は、年齢や職業を問わず、多くの留学生が学んでいた。
大学への進学を目指す留学生の多くは、次のような人たちであった。
母国で高校を卒業した人
社会人として働いた後、改めて大学進学を目指す人
私が在籍していた大学では、入学を希望する留学生は、高校の卒業証明書と成績証明書を提出する必要があった。
しかし、大学へ入学できたとしても、それで安心できるわけではない。授業はすべてアメリカ人学生と同じ英語で行われるため、十分な英語力がなければ授業についていくことは難しい。そのため、多くの留学生は、まず大学付属のELIで英語力を身につけてから大学へ進学していた。
英語力には個人差があり、ELIで学ぶ期間も人それぞれであった。
英語力の高い学生は、夏期講座など約2か月の学習で大学や大学院へ進学する者もいた。
一般的には、6か月から1年程度ELIで学んでから大学へ進学する学生が多かった。
英語をほとんど話せない学生の中には、2年近くELIで学び続ける者もいた。
もちろん、努力しても大学進学に必要な英語力へ到達できない人もいた。
私は、そのような場合は無理に大学進学だけを目標にする必要はないと思う。人生にはさまざまな道があり、大学を卒業することだけが成功ではないからである。
当時、多くの州立コミュニティ・カレッジ(2年制大学)では、一定の英語力を証明できた留学生を受け入れていた。コミュニティ・カレッジを卒業した後、4年制州立大学へ編入する制度も広く利用されており、多くの留学生がこの制度を活用して大学卒業を目指していた。
アメリカには、自分の能力や目的に応じて学び続けることができる、多様な教育制度が整えられていたのである。
大学付属のELIを卒業した留学生の進学
大学付属のELI(English Language Institute)を修了した留学生は、校長や担当者の推薦を受けて、その大学へ進学することができる場合があります。また、別の州立総合大学への進学を希望する場合は、TOEFLの成績をもとに出願先を選ぶことになります。
難関の州立大学や私立大学、大学院への進学を希望する場合は、高い英語力が求められます。当時は、TOEFLでおおむね550~600点程度の成績が一つの目安とされていました。さらに、大学によっては面接やエッセー(論文)の提出を求められることもあり、それらを総合的に審査したうえで入学が許可されます。
TOEFLで500点以上の成績があれば、多くの州立総合大学への出願が可能でした。大学ごとに入学基準は異なりますが、条件を満たせば入学許可を得られる可能性は十分にありました。
また、TOEFLで400~450点程度の成績を取得した留学生は、まず州立コミュニティ・カレッジ(Community College)へ進学する道もありました。コミュニティ・カレッジには、職業教育を中心とした専門課程と、四年制大学への編入を目的とした大学移行課程があります。
大 学編入コースを2年間修了し、所定の単位と成績を満たせば、多くの場合、州立総合大学の3年次へ編入することができます。この制度は、英語力をさらに向上させながら学士号取得を目指す留学生にとって、有効な進学ルートとなっていました。
※以上は1980年代当時の一般的な制度をもとにした内容です。現在では、TOEFLはiBT方式に変更され、各大学の入学条件や編入制度も大学ごとに異なっています。


