人工膝関節置換術後の20%に残る慢性疼痛──「受容」は前向きとは限らない?
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はじめに🦵
人工膝関節置換術(TKA)は軟骨のすり減ってしまった膝の「痛みを減らして、生活の質を上げる」ことを目的とした代表的な手術です。
しかし実は、約20%の方に慢性疼痛が残るとも報告されています。
今回ご紹介するのは「痛みが残ってしまった方の心の中で何が起きているのか」を15か月にわたって追跡したPain誌の縦断研究です。
術後、患者さんの「痛みへの向き合い方」はどう変わる?🤔
この研究では、人工膝関節置換術後に痛みが続いた患者さんを対象に、
🔹 痛みを「解決しよう」とし続ける姿勢
🔹 痛みは解決できないものとして「受け入れる」姿勢
この2つのバランスが、時間とともにどう変わるかを調べています。
結果を一言で言うと👇
時間が経つにつれて、患者さんは「痛みを何とかしよう」としなくなっていきました。
一見すると、「受容できている=良い適応」のようにも思えますよね。
でも、その「受容」は前向きではなかった😢
ここが、この研究のとても重要なポイントです。研究では、
痛みの消失を追い求める姿勢は減った
「もう解決策はない」という考えは強まった
しかし同時に…👉 「痛みがあっても人生は意味がある」という感覚が、むしろ低下していた
そして👉 人生には意味があるというような感覚が弱い人ほど痛み・生活障害・膝機能が悪かった
つまりこれは、
ポジティブな適応的受容
ではなく「諦め(giving up)」
「ネガティブな現実主義」
に近い状態だった、と解釈されています。
「痛みの受容=うまくいっている」とは限らない⚠️
心理療法(ACTなど)で言う「受容」とは、
痛みはあっても
大切なこと・意味のある活動に
人生の軸足を移していくこと
です。しかし本研究の患者さんでは、
痛みの消失を追い求め続けるのはやめた
でも 次の意味ある目標が見つかっていない
という、宙ぶらりんな状態に陥っていた可能性が示唆されました。
追記:フォロー期間は「まだ短い」可能性も⏳
ここで大切な補足です。術後遷延痛に限らずですが、
痛みをいったん受け入れたあと、かなり時間が経ってから
新しい意味のある目標が見つかる
痛みとは別の軸で人生が再構築される
というケースも、臨床では決して少なくありません。
今回の研究は術後15か月までのフォローでした。
👉 もしかすると、その先で回復していく人も多いのかもしれません。
ただし、「何もしなければ自然に良くなる」と期待できるエビデンスは、今のところ乏しいというのが、研究者たちの結論でもあります。
整形外科医として考えたいこと🩺
人工膝関節後のこの20%を少しでも減らす努力はやはり絶対に必要です。
実は、人工股関節置換術(THA)ですら、
👉 割合は少ないものの(おそらく膝の5〜10分の1程度)、
👉 慢性疼痛が残存する方は存在します。
だからこそ、
「手術をすれば必ず痛みはゼロになる」
「痛みが残る可能性はほぼない」
という説明では不十分です。
これから求められる介入とは?🌱
論文や臨床的示唆をまとめると、重要なのは👇
❌ 痛みの「消失」だけをゴールにしない
⭕ 「痛みがあっても達成できる、意味のある次の目標」への転換
具体的には、
痛みは残るかもしれない
それでも 人生の質を維持・向上させる方法がある
それを 専門家の支援のもとで学ぶ
こうした心理的・行動的な介入を、術前から!行うことが求められている、とされています。
まとめ✨
人工膝関節置換術後、約20%に慢性疼痛が残る
時間とともに「痛みの消失ばかりを追求する」ことは減る
しかしそれは、前向きな受容ではなく諦めやネガティブな現実主義である可能性がある
「痛みがあっても意味のある人生」への移行は、自然には起こりにくい
術前からの説明・心理的サポートが非常に重要
「痛みをゼロにする」だけではなく、「痛みがあっても、その人らしく生きられる」そんな医療を目指す必要があるというメッセージの研究です。
参考文献📚
Gibby A, Braun M, Bertram W, Crombez G, Gooberman-Hill R, Peters TJ, Wylde V, Eccleston C. Changes in problem-solving style when pain does not resolve. A longitudinal analysis of adults with chronic pain after total knee replacement. Pain. 2026 Feb 1;167(2):338-343. doi: 10.1097/j.pain.0000000000003799. Epub 2025 Sep 9.
PMID: 40923911

