不倫に至るまでの日記19〜彼氏の話を聞いた後
彼女の口から「彼氏」という言葉を聞いてから、胸の奥にずっと重たい石が沈んでいる。あの日、食堂で一緒にご飯を食べていたとき、何気ない調子で「この前、彼氏と映画に行ってさ」と笑って話してくれた。その瞬間、心臓が大きく跳ねて、息が詰まった。彼女が楽しそうに話す姿がまぶしくて、でもその「楽しさ」の理由が自分ではないことが痛いほど突き刺さった。
「いいな、その映画。評判だよね」――必死に笑顔を作ってそう返したけれど、声は震えていたと思う。彼女は気づかずに彼氏との思い出を語り続け、その一つひとつの言葉が胸に重く積もっていった。食堂を出て彼女と別れたあと、廊下を歩きながら涙がこぼれそうになるのを必死でこらえた。
その日から数日、心はずっとざわついている。勉強に集中しようとしても頭に浮かぶのはあの笑顔で、廊下ですれ違うだけで胸が苦しくなる。LINEで交わす何気ないやりとりも、嬉しい反面、彼氏がいるという事実を思い出させて痛みを伴う。夜、布団に入っても眠れず、目を閉じれば彼女が「この前、彼氏と」と話す声が蘇ってしまう。
「幸せそうでよかった」と思う自分と、「どうして自分ではないんだ」と叫ぶ自分。その二つが交互に押し寄せてきて、心はぐちゃぐちゃだ。いっそ嫌いになれたら楽なのに――そう思う瞬間もあるけれど、彼女の声や笑顔を思い出すとその考えは一瞬で消えてしまう。結局、僕はどうしても彼女が好きなのだ。
彼氏がいると知っても、それでも気持ちは止められない。矛盾した想いを抱えたまま、僕は今日も彼女の笑顔を見てしまう。そしてまた、心が沈んでいく。
