<詩> 専門家のために
論文の山から手が一本突き出ていて
その折れ曲がった指はせわしなく動き続ける
キーボードがなきゃ
こんな奇怪な動きはそうない
准教授の趣味は、色んな包装紙や紙袋を切り抜いて鶴を折ることらしい
本棚のあちこちに鶴がいてこちらを見ている
―――折り鶴と専門家についての一考察―――
はぁ
あなたの進路ですか
特にやりたいことは、ありませんか
専門家になってみなさい
専門家ってのは仕事じゃないってことだけ覚えておきなさい
論文の山から突き出した手はいつのまにか引っ込んでいる
よく見れば紙の多くにしわが寄り
それが解体した折り鶴だと気付く
卒業式で准教授が折り鶴を一羽くれた
温泉まんじゅうの、個包装のやつの、小さくて真っ白い一羽だった
その折り鶴を母親が勝手に捨てて、私が泣いて、母親がどうしちゃったのとぼやいた日の夜に私は思った
私のために私が生きてみるなら、まずは専門家のために
