3つのエラーより気になったこと。関東一高はなぜ「関東一高」をやらなかったのか。
関東一高が負けました。
結果的には3つのエラーが失点に結びついた。
「あそこでゲッツー取れていればね」
っていう反省になるだろうし、チーム内でも当然そこは振り返ると思う。
だから僕は逆に、そこはあまり触れない。
エラー単体を切り取って「守備が悪かった」で終わらせるより、試合全体を見た時に何が起きていたのか。
そっちを考えてみたい。
まず、普通に3安打はやばい。
都大会ではチーム打率4割を超えて、“強力打線”と言われていた。
でも僕はちょっと違う見方をしていた。
甲子園でどう打つのかな?
本当に打てるのかな?
という感じ。
都大会は組み合わせにも恵まれた。
申し訳ないけど、
「その相手なら、そのくらいの打率になるよね」
という投手との対戦が多かった。
唯一、決勝ではちゃんとした投手陣と対戦して、それでも10得点している。
だから打てないと言いたいわけじゃない。
ただ、都大会の「打率4割」という数字をそのまま甲子園に持ってきて、強力打線と評価するのはちょっと違うよね、という話。
そもそも僕が関東一高を“高校野球のお手本”と言っているのは、打ちまくるからじゃない。
四球、盗塁、バント。
ここなんだよね。
トーナメント、特に高校野球という競技において、無類の強さを発揮する攻撃スタイルだと思っている。
その本質は、
アウトを取られずに塁を進めること。
四球ならアウトにならずに一塁。
盗塁ならアウトを増やさず二塁。
セーフティバントなら、成功すればアウトを増やさず一塁。
送りながらも内野安打、相手のエラーも誘える。
ヒットを何本も続けなくても得点圏まで行ける。
低リスクで得点を作っていく、ものすごくコスパの良い攻撃。
セーフティバントは
高校野球レベルなら50m6秒1、6秒2くらいで走れる選手が、三塁線のライン際1mくらいに転がせばかなり高い確率でセーフになる。
そして関東一高には、そんな脚力の選手が揃っている。
だから守る側からするとめちゃくちゃ嫌。
でも、この試合ではその3つがほとんど出なかった。
封じられたのか。
それとも自ら手放したのか。
内部の人間じゃないから分からないけど、僕は試合を見ながらずっとそこが気になっていた。
まず四球。
四球を取りにいくなら、耐久作戦とセットで2ストライクからもっと粘るシーンがあっても良かった。
ただこの日の英明冨岡投手は9回104球、無四球。
県大会での四死球率が4.39だったことを考えると、かなり出来すぎな数字でもある。
もちろん冨岡くんのボール自体が素晴らしかったのは大前提。
でも、そうなると逆に聞きたくなる。
関東一高の攻撃の狙いは何だったんだろう?
初回にはバント処理から暴投も出た。
その後のバント処理を見ていても、
「もっとセーフティ仕掛けないのかな?」
と思いながら見ていた。
さらに牽制。
これも序盤を見ていればパターンと癖はある程度見えていた。
なのに盗塁を一つも決められない。
もちろん、そもそもランナーが出ていないから仕方ない部分もある。
でも、だからこそなんだよね。
3安打しか打てない日なら、どうやって勝つのか。
そこに関東一高の強さがあると思っていた。
打てないなら四球を取る。
出たら走る。
守備に不安が見えたらセーフティを仕掛ける。
普通に投げて、普通に守って、普通にアウトを3つ取ることを難しくしていく。
それが僕の思っている関東一高。
だから今回の敗戦を、
「3つのエラーが失点につながった」
だけで片付けるのは、少しもったいない気がする。
むしろ僕が気になるのは、
なぜ関東一高は、関東一高が一番勝ちやすいゲームに持っていけなかったのか。
こっち。
エラーは高校野球だから起きる。
3安打の日だってある。
相手投手がめちゃくちゃ良い日もある。
そんな日でも勝つために、四球、盗塁、セーフティという武器を持っているのが関東一高だと思っていた。
それが今回はほとんど見えなかった。
封じられたのか。
狙いが別にあったのか。
それとも、使わなかったのか。
答えは外から見ている僕には分からないが聞いてみたい部分だ。
そしてディフェンス
3つのエラー以上に僕が気になったのが、先発・石井投手の腕の緩みだった。
初回はストレートを三塁側にしっかり投げ切れていて、なんとなく乗り切った。
ただ中盤以降、腕を下げて振り上げるカーブ、撫でるようなチェンジアップを多投する中で、少しずつ腕の振りがぬるくなっていったように見えた。
それが決勝点のタイムリーにつながった抜けスラの直接的な原因なのか。
100%そうだとは言えない。
でも見ていた側としては、
「ほらね」
って感じだった。
僕が疑問だったのは、
なぜもっとストレートを生かす配球をしなかったんだろう?
ということ。
「相手をデカくしすぎるな」
「お前のストレートは通用するよ」
僕と長く一緒に仕事をした投手コーチが、よく言っていた言葉だ。
英明の中軸は身体もあって、しっかり振っていた。
下位打線も、打力だけなら関東一高より上に見えた。
その打線に対して、バッテリーは緩い変化球を使って前に出そうとしたのかもしれない。
でも、それならもう一つ疑問が出てくる。
なぜ外野があんなに浅いんだ?
振ってくる打者に対して、緩いボールで前に出すのであれば、外野は少し深めでもいい。
配球と守備位置。
その辺の矛盾が、この試合ではいくつか見えた。
そして終盤にはストレートのラインも出なくなった。
腕がぬるくなって、ちゃんとした位置でボールを切れない。
ぬるい腕の振りから変化球を投げると、いくらボール自体が曲がっていても打者は合わせやすくなる。
その悪循環。
前に出されながらも左打者に引っこ抜かれる打球が出始めた中盤、そこにストレートブッ刺せばゴキゴキ詰まるのに、、、
変化球に終始した。
打者のスイング軌道、前の打席からの変化、タイミングの合い方、、
この辺を投手本人が見極められる感受性を持ってほしい。
そして、あのタイムリー。
驚かれるかもしれないけど、
僕はこの試合、関東一高が4点取られるところまでは想定内だった。
もちろん1点くらいに抑える世界線も普通に想像できた。
その振れ幅の中で、4失点くらいまではあるだろうなと。
それよりも、
1点しか取れなかったこと。
僕はこっちにクエスチョンが残った。
テレビで見る以上に冨岡投手のボールが強かったのか。
何か特殊な特徴があったのか。
確かに右打者、左打者ともに低めへ落とす縦のスライダーは良かった。
「ああ、これは振っちゃうかもな」
というボールだった。
でも、それ以外の部分には攻略できそうなポイントも見えていた。
だから、
なぜ?
がずっと残ったゲームだった。
ただ、この試合は東京大会で関東一高に苦しめられてきたチームにとって、かなり参考になると思う。
左の強いストレートがあって、最後に決め球を持っている投手を当てる。
関東一高がこれだけ嫌がっているというか、攻撃をうまく組み立てられない試合は久しぶりに見た。
だから最後は、そこを認めないといけない。
関東一高が関東一高らしくなかった。
でもそれは、
関東一高が勝手に崩れたのではなく、
英明が関東一高を「関東一高じゃなくした」のかもしれない。
変化球で出されても当てにいかず(高校野球では逆方向にちょこんとやりがちだが)、振り続けた結果。
お見事。
気持ちが良かった。
これがバッティングである。
3つのエラーより、僕はそっちが面白かった。
英明が素晴らしかった。
認めざるを得ないね。
次も頑張ってください。
Coach Aki
