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【視力2.0 原稿】#16 脳機能と運動の効果 その1

 本原稿は出版にあたり、「脳機能を鍛えることで、目もよくなる!」という説明のために書いた原稿です。私は視力2.0の研究者なのですが、研究者時代には仕事で成果を出したり、学習効率を向上するために、日々ランニングに励んでいたのです。
 視力と脳はどうして関係あるの?なんで運動すれば脳が成長するの?と思われる方もおられるでしょう。

 人間の目は脳の出先器官なので、よく見えるかどうかは、脳がきちんと機能していることが重要でなのです。
 眼球の前の方にある角膜から入った光の信号が、網膜で像を結び、視神経を介して脳の視覚野という部分に情報を伝え、前頭葉に情報がおくられ、始めて見える、ということになるのです。
 つまり、脳がその信号を処理できなかったら、見えないのです。そして、脳機能を向上させれば視覚情報の処理機能もあがり、視力も良くなるわけです。
 がんばって一日中パソコン作業した日、夕方になると頭がもうろうとしてくる、なんてことを経験している人は、イメージしやすいかもしれませんね。眼球の形は変わっていませんが、見えにくいわけです。

 さて、脳機能を鍛えるにはどうしたらいいのか?実は、運動がベストなのです。

 原稿は以下です。
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運動で脳機能を取り戻すことができた
 ~中略~

 しかし、心身が正常でなかった私は、何をどう勉強していいのかわからず、勉強が必要な科目はどんどん増えます。あれもこれもと手をだしてはやめ、一向に結果はでませんでした。
 そもそも勉強のための集中力が持たないようなことも多くありました。次第に気分も陰鬱となり、朝起きるのが難しくなり、勉強どころか遊びも楽しめず、誰とも話さずただ大学の講義にでるだけ、みたいな日が続いたのです。

 大学1年生の後期だったと記憶しています。単位も随分落としました。私はストレスで過食するタイプですが、この時はあまりに強いストレスで、激やせしました。私の体重が58kgから53kgまで落ち、肌荒れや抜け毛、虫歯、足のしびれや不眠もあらわれました。おそらく病院に行けば、うつ病と診断されたのではないでしょうか。

 しかし、これは何か変だ、と思いました。周りの同じような年齢の学生達はそんなにがんばって勉強しているようには見えませんし、勉強やスポーツで活躍し、楽しそうに遊び、青春を謳歌しています。なぜか自分だけうまくいっておらず、親や周りからも心配されているのです。

 そこで、周りの大学生や中学生、高校生でかかわってきた同級生その他について思いを巡らせました。思い出したのは、「勉強がデキる人は運動もデキる」、ということです。優秀な成績で、望みの進学をかなえた友人たちは、みんな部活動やスポーツもよくでき、楽しそうに生活しているということに気づきました。そして、「私には運動も遊びも足りないのではないか」と思うようになったのです。

 勉強をがんばっていたら、物理的に運動の時間を確保するのは難しくなるはずで、その逆も然りです。1日が24時間であることはみな平等ですから、文武両道は簡単ではありません。注意して観察していなかった頃は、「あいつは努力家だから勉強もスポーツもがんばっているんだな」と、個人の性格によるものだと思いこんでいたのです。

その他の事例を調査
 
それなら、高名な科学者や芸術家、成功した方々の過ごし方はどうなんだろうか、と思い至り、調査してみることにしました。そして分かったのは、世界的に活躍するような科学者や芸術家は、勉強や創作活動ばかりしているわけではなく、運動に取り組んでいる、名声を上げてからも運動を続けている方々が多いのです。

 たとえば科学者としてはiPS細胞の開発者である山中伸弥先生(2012年ノーベル医学・生理学賞)がマラソンランナーとして有名です。またものすごく速いのです(ベストタイムは3時間22分6秒とのこと)ランニングすることで頭の中を整理する効果もあるとのこと、後の資料で拝見しました。

 また、高校の大先輩である大村智先生(2015年ノーベル医学・生理学賞)も、スキーで国体に出場するほどの選手であり、ゴルフ中に見つけた微生物がつくる物質から抗寄生虫薬「イベルメクチン」を開発したことでも知られています。

 文芸・芸術部門でも、たくさん該当する方々を見つけました。当時は村上春樹氏の小説をよく読んでいましたが、同氏はランニングや水泳を習慣にしていることで有名です。著作では一日の多くの時間を運動や音楽、読書に割いていることがわかりました。素晴らしい作品を創るためには、ずっと机に向かっていてはできないのだろう、と想像しました。

 私は「ランニングをすることで集中力が向上し、記憶や学習効率が向上し、創造性などが高まるのかもしれない」と考え、実際にランニングすることにしたのです。

科学的に実証されたランニングの効果
 私がランニングを始めた1999年、運動すれば勉強もできるようになるようだ、というのはあくまで経験則的なもので、科学的な根拠にアクセスするのは少々難しかったですが、現在では運動と脳の関係を論じた論文がたくさんあります。運動がもたらす健康への効果としていくつかあげますと、以下のようなものがあります。

ストレス耐性が強化され、冷静になれる
 ランニングなどの運動は、一時的にストレス物質であるコルチゾールの分泌量が増え、運動が終わると元に戻るようです。運動習慣が続くと、コルチゾールの分泌量は次第に減るようになるのですが、なんと運動以外のことが原因でストレスを抱えている時も、わずかしか分泌されないようになるようです。これによりストレス耐性が強化され、常に冷静にふるまうことができるようになる、という研究結果があります。

 また、運動により高次認知機能をつかさどる前頭葉が強化され、偏桃体から発されるストレスシグナルを前頭葉が適切に処理できるようになるようです。これによりパニックや激昂などを起こしにくくなる、ということが科学的に証明されました。

 なお、ストレスシグナルを出す偏桃体は17歳ぐらいまでには完成するようですが、前頭葉や前頭前皮質などのストレスを抑える脳の部位は、25歳くらいになってやっと完成するようです。子供から若者までのメンタルが不安定なのは、これが原因の一つでしょう。私も思い当たる節がたくさんあります。うつの症状が出た18歳から19歳くらいまでは、運動を一切しなかったため、非常にメンタル面が悪い状態でした。
 
うつの抑制効果
 運動にはうつの抑制効果があることがわかりました。有酸素運動によりBDNF(脳由来神経栄養因子)の生成を促すことにより、うつ病を抑制できるメカニズムが提唱されています。BDNFには脳細胞がほかの物質によって傷ついたり死んだりするのを防ぐ性質や、新生細胞の成長を助け、脳細胞間のつながりを強化する機能があるようです。うつ病を患うと脳の萎縮スピードが加速することがわかっていますが、BDNFがこれを防ぐというわけです。

食欲のコントロールができる
 ストレス物質であるコルチゾールには、「身体の脂肪の燃焼を妨げる作用」があります。ストレスでコルチゾールの血中濃度が増すと、お腹の周りに脂肪が蓄積しやすくなり、さらに食欲が増すことがわかってきました。ストレスが原因で肥満になるのはしばしば見受けられます。私もストレスを感じると何か甘いものを食べたくなる傾向があります。
 しかし、運動によってコルチゾールがコントロールでき、血中濃度を下げることができれば、食欲が収まって脂肪の蓄積は減り、カロリーも燃焼されるため、結果として体脂肪は減ります。「運動すればカロリーを消費するからお腹が減るんじゃないの?」と考える方が多いですが、むしろ運動すれば食欲は減るのです。現代社会では十分なカロリーがいつでも摂取できますので、お腹がすいたら筋トレでごまかすというのは良い方法です。

運動をすることで、運動の習慣ができる
 運動をすることが体への良い影響があることは誰もが認めるところですが、それを習慣化することが難しいとされています。実は、運動が習慣になっている人にとっては、とても簡単なのです。むしろ運動できない日は体も頭も調子悪くなります。
 運動が終わった後に、気分がスッキリするという実感がある方も多いでしょう。これはドーパミンやエンドルフィンなどの脳内に放出されて、快感を覚えてる作用があるためです。運動を始めたばかりのころはストレスに曝されますが、何度も繰り返すことで、脳が「運動は良い気分をもたらしてくれるものだ」と認識することができ、次第に運動が楽しみになります。
 快感物質のメカニズムをよく理解し、1回の運動を20分程度、週3回程度続けると、その後も継続できる割合が高くなるようです。

集中力、記憶力を高める
 運動によってドーパミンの分泌量が増えると、脳の前頭葉と報酬系がうまく機能し、脳の中の雑音が消えて集中力が増すようです。これは人類がまだサバンナで暮らしていたころに必要だった機能で、体に負荷がかかっているときの行動(狩りなど)は生死を分けるほど重要なことである、と認識し、目の前のことに集中するためのシステムが残っているのではないか、とされています。
 人間の記憶中枢である海馬は25歳ごろから年1%程度小さくなることが知られています。しかし持久系のトレーニングを行ったところ、1年で2%成長した、という研究報告があります。BDNFが海馬の成長をうながしたのではないか、とされています。また運動中や運動後に単語の暗記をした場合、ただ暗記した場合と比較して暗記できた量が20%増加したという報告もあるようです。
 
創造力への影響
 かつて私が運動と創造力の関係を調べたように、世界中で多くの研究者が同じことを考えていたようです。例えばアインシュタインは自転車をこいでいるときに相対性理論を思いつき、ベートーベンは長い散歩を日課とし、ダーウィンは屋敷の周りの散歩道を何時間もかけて歩いたころに、「種の起源」を着想した、とされています。
 現代でも運動を習慣とする科学者、芸術家は数えきれないほどいるでしょう。ビジネスにおいても同様です。また世界的な大手IT企業などで、歩きながらの会議や、立ったまま仕事するスタンディングデスクなどが導入され、運動と脳の活性は非常に注目されています。
 運動と創造性のメカニズムは評価・計測が難しく、完全に明らかになっているわけではありませんが、情報を整理する視床のフィルター機能に作用する、ドーパミンの分泌と運動が関係しているのではないか、とされています。

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いかがでしょうか?
 参考になる書籍について、リンクを貼っておきました。

 私は研究者時代に、ランニングをすることで発明アイデアを考え、実際に特許をたくさん出願してきました。その方法を投稿しようと思います。どうぞお楽しみに!

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