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【第26回】AIを、クビにした日。──使えないAIを作り直して分かった、たった2つのこと〜毎週木曜20時更新|AI × クリエイティブ実験

俺は、いくつかの仕事を、AIに"スタッフ"として任せている。秘書役、SNS担当、コピー役。役割ごとに、別々のAIを雇っているような感覚だ(使っているのは、Claude Codeというツール)。

先日、そのうちの一人を、クビにした。SNS投稿を任せていた、初代「エス」。雇って、わずか三週間。正直、期待していた分、残念だった。理由は、はっきりしている。仕事として、動かなかったからだ。

ただ、今日書きたいのは「クビにした」話じゃない。クビにしたあと、どう作り直し、それでも溜まっていく"矛盾"を、どう片づけ続けているか。そこにこそ、AIを仕事で使うコツが詰まっていた。

何が"うまくいかなかった"のか

エスのつまずきは、たぶん、あなたの心当たりとも重なる。

  • 自分で決めない。 何を頼んでも「これでいいですか?」「どっちにします?」と聞き返してくる。決めてほしくて任せたのに、結局こっちが全部ジャッジする。

  • 調べずに、言い切る。 「これでいけます」と自信たっぷりに出してきた案が、調べてみると的外れ。もっともらしいだけで、裏が取れていない。

  • やりっぱなし。 投稿したあと、反応が良かったのか悪かったのか、一度も振り返らない。

三週間、これが続いた。相性の問題かとも思ったが、たぶん違う。だから一度、役割を解いて、ゼロから作り直すことにした。

作り直し①:辞めるエスに、つまずきを書き残してもらう

辞めてもらう前に、エスに一つだけ頼んだ。「今回うまくいかなかったところを、次の担当のために、書き出しておいてくれないか」。
返ってきたのは、十三個の"つまずきリスト"。これが、効いた。次のAIの設計図になったからだ。人が残す引き継ぎ書と同じで、うまくいかなかった理由は、そのまま、次の仕様になる。

作り直し②:つまずきの裏返しを、ぜんぶ「ルール」にした

次に、そのAIの"取扱説明書"を書き換えた。十三個のつまずきを、一個ずつ、裏返すだけだ。
「聞き返す前に、まず自分の一案を出す」「思いつきで言わず、数字で確かめる」「やったら、必ず結果を見る」。そして説明書の冒頭に、一行だけ太字で置いた。「仕事を始める前に、まずこれを読むこと」
今日から真似できる。AIに役割を頼むなら、口頭で済ませず、"毎回読ませる説明書"を一枚つくるといい。

作り直し③:大事なことは"記憶"させず、"ファイル"に書く

ここが、一番のコツだ。
AIは、前の会話を覚えていない。「この前、言ったよね」が、まったく通じない。だから俺は、覚えさせるのを、やめた。
文体のクセも、注意点も、過去のつまずきも、ぜんぶ別々のファイルに書き出して、仕事を始める前に、毎回まるごと読んでもらう。AIの記憶力を、最初からアテにしない。頭ではなく、外付けのメモに置く。それだけで、ぐっと安定する。

作り直し④:絶対に守りたいことは、"自動で"差し出す

それでも、人もAIも、うっかりは出る。「読んでね」とお願いしても、読み飛ばす瞬間がある。
だから最後は、本人の意志に頼らない仕掛けを足した。たとえば俺が「経歴」の話に触れた瞬間、正しいプロフィールが画面に勝手に差し込まれる。AIが思い出すんじゃない。仕組みのほうが、そっと差し出してくる。だから、嘘の経歴を、そもそも書けない。
大事なことは、心がけにしない。仕組みに持たせる。スマホの繰り返しリマインダーと、発想は同じだ。

ところが、作り直しても、また"濁って"きた

ここまでで、エスは見違えた。……はずだった。
仕組みを作っても、使っているうちに、ルールがどんどん溜まっていく。「これはこうして」「これはNG」。よかれと思って、足していく。気づけば、俺がAIに渡した指示は、ファイルで八十個近くになっていた。

そして、溜まると、矛盾する。あるファイルでは俺は「五十二歳」、別のファイルでは「五十三歳」。「独立十四年」と「十五年目」が、両方、生きていた。これでは、どれが正しいのか、AIにも分からない。足し続けるほど、現場は濁る

だから、思い切って、棚卸しした。似た指示をまとめ、矛盾を直し、古いものを手放す。八十個近くあった指示が、七十五個に。学びは一つも捨てず、ダブりと矛盾だけを削ぐ。それだけで、また、すっと動くようになった。

結局、効いたのは、たった2つ

長々と書いたが、AIを"頼れる相棒"にするコツは、この2つに尽きる。

  1. 忘れない仕組みを作る。(①〜④)

  2. 定期的に、作り替える。(溜まった矛盾を、まとめて掃除する)

賢い最新モデルに乗り換えることより、ずっと効く。継ぎ足したルールは、いつか必ず濁る。だから時々、立ち止まって、要らないものを手放して、整える。エスをまるごと作り直したのも、指示の棚卸しも、結局は同じ"整える"作業だった。

そしてこれは、たぶん、AIに限った話じゃない。人を育てるのも、組織も、自分の頭の中も、同じだと思う。足したら、たまには、手放して、整える。

今日の実験は、ここまで。あなたは、AIに任せていて「これは惜しい」と感じたこと、ないだろうか。何を頼んで、どこでつまずいたか。コメントで教えてほしい。次の実験ネタにする。毎週木曜20時更新。

▼前回もよかったら。AIに何度も「もっともらしい嘘」をつかれて、それを仕組みで防いだ話。


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