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「村から追放された少年は女神様の夢を見る」第十九話(終話)

王女様は純粋にぼくに会いに来てくれただけのようだった。ちゃんと相手してあげられなくて悪いけど。

「グリーン様、わたくしもここに置いて頂けませんか?」

「「はいいい?」」

突然何を言い出すんだ。王女様は。

「レーベン王からの手紙を預かっています」

ぼくはロイドから、手紙を受け取った。早速封を開ける。内容は、王女がどうしてもぼくの近くに居たいので、少しの間住まわせてやって欲しいとの事だった。迷惑をかけてすまないとも書いてあった。

「ここは城と比べて狭いですし、汚いですよ?こんな所に住まわせられないと思うのですが・・」

「覚悟の上です!将来、夫になる人の生活を知っておくのは良い事ですわ」

あれあれあれ?王女様?大丈夫かな・・。かなり、いやだいぶ思い込みが激しい方らしい。

「「だめーーーーっつ!」」

アリスがぼくにしがみついてきた。

「グリーンは私の旦那様になる人なの!王女様だからって勝手に決めないで!」

王女は目をばちくりさせていた。

「・・・そういうことでしたの?是非グリーン様の意見を聞かせて頂きたいですわ」

はぁ~とぼくは息を吐いた。

「申し訳ないけど、ぼくはアリスが大好きだからアリスと結婚するつもりです。ごめんなさい」

頭を深く下げる。

「そう・・でしたのね。急に来て悪かったですわね・・ロイドもう帰りますわよ」

王女は席を立った。

「は、はい!」

慌てて後を追いかけるロイド。王女とロイドは店を出て行った。

**

「何だったんだ・・嵐みたいだったな」

どっと疲れた。今日はもう休もう。

「さっきの話、本当?」

「え?」

そういえば、さっき凄い事言っちゃった気がする。

「結婚するつもりだって・・・」

「・・うん。まだ若いし早いかなって思っていて、もう少ししたら言おうと思っていたのだけど」

「嬉しかった。大好きよ。グリーン」

ぼくたちはのんびり家で過ごすことにした。まだ15歳だし、生活基盤が安定したらプロポーズするつもりだったんだけど。まいっか。


「ぐすぐす・・・」

馬車の中でパトリシアは泣いていた。何となく結末は分かってはいたが、泣いているのを見るのは辛い。

「・・なんで、貴方か辛そうな顔をしているのよ・・」

「え・・いや・・その・・」

咄嗟《とっさ》に言い訳が思いつかない。だって、好きな人が悲しんでいたら辛いじゃないか。でもそんな事言えやしないし。

「断られてしまって、お辛そうなので・・俺もそう思ったのですよ」

「ロイドが感情を見せるなんて珍しい・・雪でも降るんじゃないかしら」

「・・・・・」

「嫌な思いさせてごめんなさい。しばらく泣かせてもらえるかしら・・」

「沢山泣いて良いですよ。ここには俺しかいませんからね」

俺はパトリシアの隣に座り彼女の頭を撫でた。しばらく馬車の旅が続くのだ。沢山泣いておくと良い。辛い気持ちは貯めこまないで、涙で洗い流してしまった方がスッキリするからな。


今日はレーベン王から直の呼び出しがあった。急に一体どうしたというのだろう。わたしは玉座の前で跪《ひざまず》いていた。

「グリーンを襲わせたというのは本当か?」

わたしは肩が震えた。背中から冷や汗が流れてくる。

「本当のようだな・・理由を述べてみよ」

「襲っただなんて、とんでもございません。わたしの部下がグリーン様を好きになったらしく、魔法を使用したとの事でございます。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。よく言って聞かせますので」

「・・・今回は聞かなかったことにしておいてやるが、次は無いからそう思え。下がってよい」

「承知いたしました」

驚いた。グリーンは王にだいぶ信頼されているらしい。流石に、王を敵に回すわけにはいかない。大神官を下ろされてしまうかもしれない。それだけならいいが、断罪の可能性もあるのだ。わたしは大人しく引き下がる事にした。


5年後―――。
ぼくとアリスは結婚した。ぼくは20歳になり、アリスは22歳。随分待たせてしまったな。

治療院は毎日忙しくて、あっという間に数年がたってしまった。週に一回は冒険者ギルドでの治療も続けている。

今日は近所の教会で結婚式。アリスと最初に会った、懐かしい教会で結婚式をする。
ぼくは両親が亡くなっており、アリスは身寄りが無いので少人数の集まりだ。
シルビアさんと、マリリアさん、パトリシア王女とロイド。冒険者ギルド長のラオ。他冒険者ギルドの職員の方々だ。

パトリシア王女は、ロイドさんと付き合っているらしい。
ぼくはアリスに誓いのキスをした。

「「おめでとう」」

周りの人達から祝福される。もうずっと一緒に暮らしているので、結婚式をしたからと言って何が変わるわけでもないのだけど。

「これからもよろしく」
「私もよろしくね。何だか照れ臭いわね」

真っ白なウエディングドレスを身にまとったアリスは、金色の髪が輝いて揺れて、ダークグリーンの瞳はぼくの目ををしっかりと見つめている。

「アリスってこんなに綺麗だったっけ」

ぼくは呟いていた。アリスが白い肌を赤らめていた。

「恥ずかしいなぁ・・」

いつもと場所が違うだけで、新鮮に見える。不思議な空間だ。照れたアリスも可愛い。きっとどこかで女神さまが見守ってくれているに違いない。もう何年も女神さまの夢は見ていない。きっと平和に過ごしているからだろう。

「ファンティ様有難うございます。グリーンと幸せになります」

アリスが女神像に向かって宣言した。ああ、アリスは元々シスターだったっけ。
ぼくは心の中でつぶやいた。

『ファンティ様スキルを下さって有難うございます。これからも見守っていてくださいね』


#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

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