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「村から追放された少年は女神様の夢を見る」第六話

ここはミルドス町の治療院。
わしは院長のリグルスだ。希少な回復魔法を使える。
最近、隣町ガラの教会で安く治療しているという噂を聞いた。まさかそんなことあるはずが無いと最初は放っておいたのだが、気のせいか暇になってきた気がする。

回復魔法の使い手は、大聖堂か王城にしかいないはずだ。まれに冒険者などにいるようだが。部下に調べさせたところ、ヒールだが傷が残らないくらいにキレイに治るという。同じヒールでも使い手によって傷の治り方が変わるのだ。

聞くところによると、まだ若い少年がやっているらしい。なので、有名になる前に潰しておいた方が良いと思った。放っておいたら、わしの店が儲からなくなってしまうどころか客をごっそり取られかねない。

最初は噂を流してみた。しばらくすれば潰れると思ったが、意外にしぶとかった。次に部下に不審に思われないように殺すよう命令した。

「なに?まだ生きていると?」

雇っている冒険者に、上手く始末しろと言ったはずだが。失敗したらしい。

「どう致しますか」
「・・・・。」

また直ぐに動けば不審に思われる。今は動かないほうが良いだろう。悪事がバレたらこの店もお終いだからな。


「レーベン王城の使い?」

休養中に、手紙を持った使いの人が教会に現れた。
手紙を受け取り、蝋封《ろうふう》を開けてみるとなんとレーベン王城からの招待状だった。

「それで何だったの?」

「王女様から・・お城に来てくださいって書いてある」

「はぁ~またグリーンばっかりね。まあいいけど」

「でも着ていく服が無いよ」

「あ~確かにね。ねえ!私も行っても良い?」

「え・・どうだろう。招待されてるのぼくだけだし」

「でも私がいなかったら、今のグリーンはいないよね?」

まあ、確かに。そうかもしれない。

「じゃあ、聞いてみるよ。返事の手紙を書けばいいのかな?」


レーベン王城にて――。
わたくしはふかふかの椅子で寛《くつろ》いでいた。

「興味深いわね。招待されたら喜んで直ぐに来ると思っていたけれど・・。彼女?も一緒に行って良いかと書いてくるなんて・・よほど、自信があるのかしら、それともバカなんじゃないかしら」

わたくしは、手紙をつまんでぶらぶらさせていた。

「姫様。そのような下品な言葉を使っていけませんよ。もうすぐ15歳になられるのですから・・」

「もう、分かりましたわ。気を付けます」

わたくしはレーベン国の王女、パトリシア・フォン・レーベンハイツ。銀色の髪に縦ロールの髪がくるくる巻いていて、瞳は澄んだ空の色をしている。

最近町で珍しい少年がいると聞いて、興味を持った。貴重な回復魔法を使えるらしい。是非あって話を聞いてみたい!先ほど、専属護衛のロイドに苦言を言われてしまったけど他の人の前ではこんな言葉遣いしないのだから、少しくらい良いと思う。

「相変わらず、厳しいわね。ロイドは」

歳が若い割に固いのよね。もっと柔らかくなっても良いと思うのだけど。


ぼくとアリスは、ガラ町に二人で買い物に来ていた。王城に行くのに着ていく服を買うためだ。アリスはぼくの隣を歩いていて、いつもより少し距離が近いような気がする。

アリスは見慣れた修道服ではなく、水色のワンピースを着ていた。スカートの裾が風で揺れて、フリルが見え隠れしている。金色の髪は布で後ろに結われていた。ダークグリーンの瞳はぼくをじっと見つめている。

普段と違うアリスの姿に、ぼくはドキドキしていた。思わず目を逸らしてしまう。

「どうしたの?服装おかしいかな」

「いや…」

ぼくは頭を掻《か》いた。
今日のアリスはめちゃくちゃ可愛い。

「似合ってるよ…か、可愛いと思う…」

「そ、そっか。ならいいけど…」

顔が熱くなるのを感じた。いつもは修道服を着て出かけるのに、今日はどうしたんだろう。ぼくはアリスを意識してしまっているようだった。



ドンドン!

「おい。誰かいるか!」

乱暴に扉を叩き、聞き覚えのある中年男性の声が教会内に響いた。薄汚い顔を見て、ぼくはげんなりする。今更何をしに来たんだろう。

「叔父さん、何か用?」

「ちょっと助けてもらいたくてな・・最近かなり儲けているらしいじゃないか」

この顔はあれだ。お金をせびりに来たに違いない。祖父の財産があるだろうに、いったいどうしたんだろう。相変わらず汚い恰好をしているし。

「ぼくは村から追い出されたので必要ないんですよね?」

「あの時は悪かった。俺がどうかしてた。謝るから許してくれないか」

手を合わせて謝っているように見える。多分、本心じゃないだろうな。

「誰か来たの?」

新緑色のワンピースを着たアリスが顔を覗《のぞ》かせる。

「アリス、この人追い返すからちょっと待ってて」

「ちょ、追い返すってそれはあんまりじゃ・・血のつながった親族に向かって・・」

「ぼくは追い出されましたけど?それにこれから出掛けるので、お引き取り下さい」

ガタガタ・・。

王城からの迎えの馬車が、教会の前に到着した。馬車のいたるところに金の装飾が施されていて立派なつくりをしている。

「すみません。すぐ支度します。待っていてください」

ぼくは御者に声をかけた。

「高そうな馬車だ、あの紋章は王族の・・迎えって、いったいどうなってるんだ?」

ぼくは叔父を無視し、教会の奥の部屋に入った。直ぐに着替えないといけないからだ。

「出かけるときにお客様なんて、一体誰だったの?」

馬車はレーベン王城に向かっていた。ガラ町を出て、窓の外の景色は畑が続いている。馬車の中は、ぼくとアリスの二人きりだ。服装を新調しぼくは背広を、アリスはドレスを着こんでいた。王城までは馬車で5日かかるが、宿代も王城持ちらしい。気前が良いな。

「最初の頃に言っていた・・家を追い出した人だよ」

ぼくは顔を思い出し、嫌な気分になった。

「え~っ。なに今更来てるのかしら?」

「さあ?聞かないで来ちゃったからな。聞く必要ないんじゃないか」


教会の扉には、張り紙が張られていた。『しばらく休業いたします』
オレは呆然《ぼうぜん》と馬車を見送っていた。王城からの馬車?グリーンはいったいどうしたっていうんだ?お城に呼ばれたのか?

グリーンを家から追い出して、村に住み始めたが上手くいかなかった。肝心の金がどこにあるのかわからなかったのだ。兄のリーデルはやり手で病気で死んだが、村人からの信頼は厚かったらしい。村長の息子を追い出したことがわかると、村人たちの態度はますます冷たくなった。

グリーンを村に戻せば、村民の態度も和らぐであろう。金のありかも知っているに違いなかった。あの時は頭に血が上って、追い出してしまったが・・。

「しかし・・王城とは・・そうだ!」

オレはある事を思いついた。今度は、きっとうまくいくに違いない。口元が自然に緩んでいた。早速準備するべく村に戻ることにした。


#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

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