わが子に撤退戦略を教えていますか?
前進だけが能ではない
人生において前進するばかりが重要ではありません。
時には立ち止まり、退くという選択肢を持つ生き方・考え方をわが子に教える重要性について考えていきましょう。
果たして、わが子に前進する生き方だけを教えていて良いのでしょうか?
子どもが学校でいじめを受けているにもかかわらず、親が無理に通わせ続けるケースがあります。
その結果、子どもが精神的に追い詰められ、最悪の事態に繋がるケースがあります。
こんな時、私たちは子どもに「逃げる」という選択肢、つまり撤退戦略を教える必要があるものと考えます。

三国志の英雄たちに学ぶ撤退
歴史上の人物からも、撤退の大切さを学べます。
私が好きな三国志には、曹操や劉備玄徳といった英雄が登場しますが、彼らも決して順風満帆に天下統一への道を歩んだわけではありません。
幾度となく敗北を経験し、そのたびに逃げるという選択をして、その都度体勢を立て直し、再起を図ったのです。
例えば、197年の宛城の戦いにおいて、曹操は部下の奇襲を受け、大損害を被り、命からがら逃げ延びました。
その後、状態を立て直し、見事に復讐を果たしています。
また、有名な赤壁の戦いでも、圧倒的な兵力を誇った曹操軍は、劉備・孫権連合軍の巧みな策略によって大敗を喫し、曹操自身も逃げるしかありませんでした。
しかし、その敗北を糧に、後に魏王へと上り詰めるのです。
劉備玄徳も同様でした。
曹操の侵攻から逃れる際、多くの民衆が彼を慕い、共に避難したため、曹操軍の精鋭に追いつかれ苦難を強いられました。
しかし、かろうじて逃げ延び、勢力を再構築。
後に蜀漢の皇帝となるのです。
これらの歴史的事例から、人生においては常に勝利するとは限らず、敗北や困難に直面した際に、いかに賢く退き、再起を図るかが重要であるのかが理解できます。

子育てにおける撤退戦略教育
撤退戦略は子育てにおいて伝えるべき重要項目の一つです。
挑戦の大切さを教える一方で、状況によっては、その場から逃げるという選択肢も教えておく必要があります。
韓信の股くぐりの逸話も、一時的な屈辱に耐え、長期的な目標達成のために一旦は屈する柔軟思考の重要性を示唆しています。
韓信は、若き日に不良たちに辱められましたが、その屈辱に耐え忍び、後に劉邦を助け、天下統一に大きく貢献する名将となりました。
そして、かつての不良を部下に迎え入れ、その勇気を認めたのです。
人生は山あり谷ありです。
常に勝てるとは限りません。
そして、負ける時は上手く負けることー
一旦は負けて、再び立ち上がり、リベンジするための力を蓄える取り組みの大切さまで子どもに伝える必要があります。

ドラマや歴史が語る撤退の英知
近年話題になったドラマ「梨泰院クラス」の主人公パク・セロイ。
彼も、強大な権力を持つ飲食チェーン最大手の長家の会長にすぐには敵わない状況の中、長期的な計画を立てたのでした。
結果として周到な準備を経て復讐を成し遂げるという痛快な現代ストーリーでした。
これも、状況に応じた撤退と、その後の再起とリベンジの重要性を教えるすばらしい教材と言えるでしょう。
わが家でも、このドラマを一緒に鑑賞し、互いに感想を述べあいました。
歴史を振り返れば、ジョージ・ワシントンのニューヨーク撤退も有名な事例です。
アメリカ独立戦争において、大陸軍はロングアイランドの戦いでイギリス軍に敗北し、壊滅の危機に瀕しました。
しかし、ワシントンは夜陰に乗じて全軍を密かに撤退させ、戦力を温存。
その後の勝利に繋げたのでした。
一時的な撤退が、長期的な勝利のために不可欠であった好事例と言えます。

企業戦略としての撤退
企業戦略においても「撤退戦略」は非常に重要な戦略形態です。
ともすると、前進だけがあるべき戦略と捉えられがちですが、状況によっては、賢く撤退する戦略が企業経営において重要な選択となる場合があります。
例えば、ユニクロはかつて食品業界への進出を試みました。
けれども結果的に撤退し、本業である衣料品事業に集中する選択を経て、更なる成長を遂げました。
大企業でさえ、鳴り物入りで新規事業に参入しても、早期に見切りをつけて撤退するというケースは意外と少なくありません。
いつの時代でも撤退戦略は、前進的戦略と同等に重要な考え方なのです。
歴史が示す撤退からの再起
中国共産党の長征は、国民党軍の包囲から逃れるための約1万2000キロメートルにも及ぶ大移動でした。
一時は壊滅寸前の状況に追い込まれました。
しかしながら困難を乗り越え、勢力を立て直し、後の国内戦での勝利。
引いては建国へと繋げていきました。
第二次世界大戦のダンケルクの戦いでは、ドイツ軍に追い詰められた約34万人の連合軍兵士が、多数の民間船を含む艦船によって奇跡的に救出されました。
この撤退によって多くの人命が救われ、後の反撃に繋がったケースもあります。
これらの歴史的事例は、撤退が単なる敗北ではなく、その後の再起とリベンジのための重要な布石となり得る事実を教えています。

親として、子どもには勇敢に前に進む生き方を教えたい気持ちはよく分かります。
しかし、状況によっては、一旦逃げる処世術も重要な選択肢として教える必要があります。
例えば、子どもがいじめられている場合、立ち止まって考える必要があります。
学校へ行く目的は、勉強し、知識や教養を身につけることです。
現代では、インターネットの普及などにより、自宅でも質の高い学習が可能な時代です。
無理に学校に馴染ませようとするより、自宅で学習するほうが効率的だったりします。
いわゆるホームスクーリングという形をとる方が、子どもの精神的な安定を取り戻し、学業に集中できる場合もあります。
大切なのは、状況に応じて、子どもと一緒に最善の選択肢を考える生き方です。
時には、撤退も有効な戦略であるのを理解させ、その後の立て直しやリベンジに向けて、しっかりとサポートしていきたいものです。
困難な状況を乗り越えるための柔軟な知恵を育む教育が、現代の親の重要な役割の一つと言えるでしょう。
