アイプチこわい
子供の頃は一重まぶたでそれがコンプレックスだった。友人のMちゃんも一重まぶたでお互いに地味な顔を嘆いていた。
中学に入り、新しい友達T子に「アイプチ」なるものを教えてもらった。若干の不自然さはあるもののT子の顔には華があった。Mちゃんと私は狂ったように西友に走り、アイプチをゲットした。
はじめてのアイプチはなかなかに難しかったが、器用なMちゃんはすぐにマスターし、アイテープまで使いこなすようになった。片や不器用でズボラな私は脱落した。アイプチのための3分の早起きができなかったのだ。
アイプチ女子は他にもいたが、体育、特に水泳は天敵であった。アイプチは濡れると白浮きして正体がバレてしまう。当時流行っていたソックタッチは持ち込み自由だったのに、アイプチは化粧品と見なされて学校へは持っていけない。思い詰めてソックタッチとアメリカピンで暫定二重を作る子もいたが、あとで見事にかぶれていた。
私はアイプチをする気力もなく、ダラダラ過ごしていたので太った。受験勉強のふりをして深夜ラジオとコンソメパンチに耽っていたからだ。それが高校に入って彼氏ができるとあれよあれよと痩せて行った。恋愛ホルモンでなんかいい感じになったのかもしれない。バイトにバンドにバイクと「バ」がつくものにハマって活動的になったのも良かったのだろう。
顔パンパンなぐらい太ったあとに、急にシュッとしたからか、自然に二重っぽくなった。むくみも消えた。地味顔は地味顔だが、アイメイクに力を入れて更なる立体感を演出した。が、時折り一重まぶただけに似合う個性的なメイクをうらやましく思ったりもした。
思えば一重には一重の魅力がある。二重になって改めてなんであんなに一重がイヤだったのだろう?と思ったが、我ながら理由がわからなかった。今のメイクや整形では涙袋が人気で、これもまったく解せない。私にしてみれば涙袋といえば岸部一徳。みんな一徳をめざしているのか。
あれから数十年。ひさびさにMちゃんに会った。会ったのだが何となくあらぬ方向を見ているようで、目線が合わない。というか避けている感じ。
気になって仕方ないので写メを撮る。なぜか手で目を隠すのだが、連写してやっと顔全体の写真が撮れた。家に帰ってよくよくその写真を拡大すると…Mちゃん…まぶたたるんでるやん…。
その場で気付けば色々聞けたのだが、あくまでも本人が隠したいようだったので追求はしなかった。なのでここからは憶測になるが、あれはアイプチのやり過ぎが原因ではなかろうか。今の製品は改良されているかもしれないが、昔のアイプチは果てしなくボンドの匂いがした。それを皮膚の薄いまぶたに塗るのは抵抗を感じた。はがす時も結構強力なので、まぶたが引き攣れる。それを何十年も続けていたとしたら…。
本当のところはわからない。加齢が原因で上瞼が徐々に下がってくる病気もあるし、私も他人事ではない。Mちゃんから話してくれたらいいのだが、残念ながら彼女は多忙で滅多に会えない。何年振りかであった友人に「まぶた垂れてるよ!」というのも憚られたし、幼馴染と言えど、顔や体型のことなど言われたくはあるまい。Mちゃんも私の肥大化について一言も触れなかった。本当にありがたいと思った。
最近の私の目は、加齢によるシワのせいで無駄にパッチリしている。涙袋という名のたるみもでてきて「何かに似ているなー」と思ったらクジラの目だった。若い頃は何故か「コアラに似ている」とよく言われたが、今はヲタメに「芝犬っぽい」と言われる。ヲタメは知らないが実は私は赤ん坊の頃「芝犬」と呼ばれていた。小さいのに手足がしっかり太かったからだ。たまには人間に似ていると言われたい。
