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マイホームとの出会い 【#この住まいに決めた理由】 グランプリ受賞作品🏆


・夫婦それぞれの職場に通える場所であること
・子供が保育園や小学校に入ってからのことも考えて、妻の実家に近いこと

家を買おうと決めたとき、それらを条件にした。


東京都西部の市に住んでいた僕と妻は、息子が一歳になったのを機に家を買うことにした。最初、僕はあまり乗り気ではなかったけれど、いつまでも賃貸に家賃を払い続けるのは嫌だという妻の気持ちに押された。子供が大きくなることを考えると、確かに今のマンションだと手狭だった。

家を買うといっても、何から始めればよいのか、いくらお金がかかるのか、分からないことだらけだった。ネットや書籍で調べて情報を集めた。買うなら戸建ての注文住宅かな、くらいの気持ちで、不動産会社へ相談に行った。

良さそうな土地はすぐに見つかった。東京都郊外の閑静な場所。妻の実家から歩いて行ける距離で、電車の最寄り駅からも歩いて十五分ほどだ(当事はまだ車を持っていなかった)。徒歩圏内にスーパーがあるし、コンビニもある。保育園や小中学校からも近く、子育て世代も多く暮らしている様子で住み心地や治安も悪くなさそうだ。不動産会社の担当者も「ぜひおすすめです!」と言った。


条件はいいし、特に問題なさそうだ。よしここに決めようと思いかけたところで……いや待てよと考え直した。

この土地に注文住宅を建てるとすると、おそらく予算を少しオーバーしてしまう。折しも「ウッドショック」という言葉が聞かれ始めた頃だった。木材の高騰で家の値段が上がるらしい。木材の供給が滞って工期が延びる可能性もあると聞いた。

もともと家にこだわりはなく、不自由なく住めればよいと思っていた。ローンの返済が家計を圧迫するのは避けたいと考えていたし、子供の保育園入学前には住み始めたいという事情もあった。

注文住宅を建てるとなると、これらの希望が叶わないことになりそうだ。僕たちは方針を変え、新築の建売住宅を探すことにした


改めて、ネットの不動産情報サイト(LIFULL HOME'Sを利用した)をもとに情報を仕入れた。アドバイザーと面談し、不動産仲介業者を紹介してもらい、建売住宅を探してもらうことになった。

仲介業者の担当者が運転する車で、目ぼしい物件を見学して回った。良さそうな家もあったけれど、立地が悪かったり、間取りがいまいちだったりで、ぴったりくるものはなかなか見つからなかった。他は問題ないけれど洗濯機を置くスペースが異様に小さい、という惜しい物件もあった。家にこだわりはないと言っても、一生に一度の買い物だ。後悔はしたくない

週末のたびに見学へ行くことが続いた。新築住宅のチラシを見比べ、ローンの返済シミュレーションを何度も繰り返した。一歳の子供を連れての見学は骨が折れた。ぐずり出して満足に見学できないこともしばしば。何軒も見て回ったけれど、どこも一長一短という感じで、ぜひここという物件には出会えなかった。

▲息子を抱いての見学。暑い時期で、日除けにハンカチを被せていた



希望するエリアの物件はあらかた見てしまい、もう残りはこれくらいだと紹介された物件があった。七軒の新築戸建てが並ぶ分譲住宅で、そのうち三軒がまだ空いているとのことだった。

そこは、最初の不動産会社でも紹介してもらった物件だった。「家の造りはいいけれど、将来そばの空き地に高い建物が建ったら日当たりがなくなるからおすすめしない」と言われ、見学することなく候補から外したのだ。でも、今度の担当者は「いい場所ですよ」と言うので、見に行くことにした。

物件は、先に注文住宅を建てる予定にした土地からほど近い場所にあった。大きな通りから脇道へ入り住宅地や畑を抜けると、同じデザインの家がコの字に並んでいた。静かで落ち着いた場所だが、道路を挟んで裏手はもう山だ。周囲には木々が多く、やや暗い印象がある。スーパーやコンビニはすぐそばにはないが、目と鼻の先にファミレスのチェーン店が一つあった。

空いている家を順に見せてもらうと、どの家も広くて綺麗だった。間取りは建物によってやや異なるけれど、どこもキッチンやクローゼットが広く、パントリーがあった(妻はパントリーを気に入っていた)。大きな欠点はなく、これまで見た物件の中では一番良いように思われた

聞いていた通り、分譲地に隣接して草の生えた空き地があった。「あの空き地ってどうなんでしょう……」。先の不動産会社で言われたことを担当者に聞くと、「土地の高さ制限で日を遮るような建物は建ちませんよ」と教えられた。安心した。おそらく、不動産会社は建売より注文住宅を売りたいがためにそのような嘘(?)を言ったんだろうと、後になって夫婦で話した。

最期の家を見終わり外へ出ると、息子と同じくらいの年の男の子を抱いた若い夫婦が別の家の玄関の前にいた。担当者が挨拶をしたので僕たちも挨拶をすると、向こうも頭を下げた。既に家を購入した夫婦で、もう住み始める準備を進めているらしい。年齢も僕たちくらいで、感じの良さそうな夫婦だった。ふと、その男の子と息子が一緒に遊ぶ姿を想像した


見学を終えた僕たちは考えを巡らせた。予算からいくと、空いている三軒のうちの一軒に絞られる。間取りは申し分ない。ただ、周囲が少し陰気なのと、買い物ができる場所がすぐそばに無いことと、裏手に小さな川があるところが気になった。

もう少しだけ他も探してみようか、などと話していた数日後のある朝、仲介業者の担当者から電話が来た。あの分譲住宅は一軒を残して全て売れてしまって、残る一軒も契約へと進みそうだ。もし今日中に決めてもらえたら、先に見学に来たうちと契約を結ぶと言う。奇しくも、残っているのは僕たちが一軒に絞ったその家だった。

僕は急遽仕事を休み(妻は育休中だった)、最後にもう一度現場を見たいと伝えて物件へと向かった。天気は強めの雨。最寄り駅からレインカバーを被せたベビーカーを押して歩いた。現場に着くと、担当者は先に車で来ていた。

再び家の中を見せてもらい、いくつか気になる点を相談した。裏手の川については事前に調べてもらっており、記録に残っている限り大雨で水が溢れたりしたことはないとのことだった。川へ通じる家の横の通路は子供が通ると危ないのではと懸念していたが、扉と柵を後付けしようということで話がまとまった。買い物についても、いずれは車を持つ予定だから多少の距離でも問題ないだろうと話した。

見学が終わると、近くのファミレスで作戦会議を開いた。懸念点はほぼ解決済みだ。最後に一軒だけ売れ残ったのも、きっと何かの縁だろう。夫婦の意見は一致した。

「ここを買います」と、担当者に電話をかけた


▲購入した家





――家を買って、もう五年目になる。今では長女も生まれ、家族四人暮らしだ。結論を言えば、この家を選んでよかったと思っている

妻の実家が近いのは大きい。保育園で発熱した息子の急なお迎えをお願いしたり、仕事で忙しいときに一次的に預かってもらったりと、さまざまな場面でお世話になっている。義母は孫たちをとても可愛がってくれ、子供たちもばあばの家で遊ぶのが大好きだ。夫婦二人だけだったら、ここまでの子育てを乗り越えて来られなかったかもしれない

近所はみな三・四十代の夫婦に子供が一人か二人と似た家族構成で、住み始めた時期も同じだから仲がいい。家の前でよく子供たちが遊んでいて、それを見ながら母親たちは世間話に興じている。近所で集まって、夏は花火をやったり、秋にはハロウィンパーティーをしたりもする。

とくに、息子と同い年の子がいる三家族は仲がよくて、子供どうし三人で保育園終わりによく遊ぶ。そのうちのひと家族は、家の見学に来たときに会ったあの家族だ。最初に持った印象の通り、とても気さくでいい家族である。

息子には発達の遅れがあり、療育に通っている。こだわりが強く、コミュニケーションを取るのが苦手だ。だからいっそう、仲良くしてくれる友達や、特性を受け入れてくれる人の存在が、今後息子が生活していくうえでは大切になると考えている。

来年度は年長になり、再来年には揃って小学校に上がる息子たち。三人で遊ぶ姿を見ていると、息子と仲良くしてくれる子供たちに感謝するとともに、この友情がいつまでも続いてほしいと願ったりする

▲家の前で遊ぶ息子(中央)と同い年の二人の子


妻はよく、「家を探していたあの時期は楽しかった」と言う。確かに、ローンについて学んだり、家を見学しに知らない土地へ行ったりと、見るもの聞くものどれもが新鮮で、それまでに経験したことがないことをたくさんした。自らの力でライフステージを上がろうとしている、そんな感覚があった。

家を眺めていると、引っ越して以来家族に起こったさまざまな出来事を思い出す。そして、これから家族に訪れるであろう未来を想像する。家族みんなの喜びや悲しみ、全てを包み込んでくれる、このマイホームに出会えたことを心から嬉しく思う





この記事は、LIFULL HOME'S×noteの投稿コンテスト「#この住まいに決めた理由」への投稿作品で、グランプリを受賞いたしました。(受賞に当たり、記事中の写真を一部差し替えました)


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